「食事もトレーニングのひとつです」…全日本合宿



 世界選手権まであと1か月ほどとなった。全日本男子チームは22日から国立スポーツ科学センターで合宿に入った。今年の世界選手権は、9月下旬にニューヨークで予定されていた開催が、米中枢同時多発テロのため不可能になった。そのため、ブルガリアで11月22日からフリースタイルと女子、ギリシャで12月5日からグレコローマンと、分散してあらためて開催されることになった。

 9月中旬には、世界選手権のために調整し追い込み時期にかかっていた。今回、また最終調整。突然の日程変更で、調整が難しいのではないかと選手に問いかけると「(世界選手権の開催場所が)ニューヨークではなくなって、気持ちはまったく変わらないといったら、うそになります。でも、どこの国の選手も同じ条件ですから」。毎日繰り返されるニュースで不安をあおられながらも、代表選手は試合に集中する努力を続けているようだ。

 スタッフも、彼らの努力を結果へと結びつけようと、最大限のバックアップを続けている。26日に全日本男子チームに栄養学の講習会が実施された。減量があり、食事と競技生活が直結しているのだから食生活には気を遣うはずのレスリングだが、その重要度に対する認識は個人差が大きい。この日も、前もって要請されていた3日分の食事記録の分析結果が選手個人個人に渡されたが、2人は一食しかデータを入れなかったため、分析結果を抽出できなかった。

 分析結果をのぞかせてもらったところ、グレコ、フリーの代表選手の中で、栄養をまんべんなく摂取していると結果が出たのは、グレコ69kg級代表でシドニー五輪銀メダリストの永田克彦だけだった。講師を務めた国立スポーツ科学センターの研究員で管理栄養士の田口素子さんは、講義の間じゅう、何度も繰り返した。「外国のことわざには、You are what you eat. という言葉があります。人間
は食べたものでできている、つまり、何を食べているかでその人の体が決まります。まず第一歩として、自分が何でできているか、何を食べているかを把握してください。そしてそれから、食べているものを勝つための食事にしていきましょう。 食事もトレーニングのひとつです。そのことを忘れずにいて下さい」

 トレーニングの一環として食事をとらえる視点は、どうしても毎日のフィジカル・トレーニングに追われるアスリートの頭から欠落しがちな点だ。それを補う講習会の開催は必ず、勝つことへ結びつくはずだ。レスリングの大会では、計量ののち、減量のダメージが強すぎてぐったりしている選手が少なくない。その一方で、減量幅が8キロある永田克彦は計量後もダメージがほとんどない。勝つために減量するとの意識が強いため、食事や栄養管理に対する造詣が深いことは五輪前から関係者の間ではよく知られている。「減量は勝つためにするんです」とも繰り返し永田の口から出ている言葉だ。

 講習会が重ねられたのちのアテネ五輪では、日本チームから「減量がきつくて力が出せなかった」という言葉は、オフレコであっても聞かれなくなることを願いたい。


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