【特集】世界女子選手権、日本チームの声



 野口美香(48kg級・中京女大)「組み合わせ抽選の後のミーティングでドイツ、中国と同じブロックと聞いて、『エライとこ引いたなぁ』と思いました。でも、コーチから『1回戦を乗り越えたら行ける』と言われて、これがヤマだと思って初戦のドイツ戦に集中しました。ドイツは本当に強かった。うまく自分の力が全て出せて勝てましたが、試合後気が抜けて、マットから倒れるように下りて、裏で横になっていました。マッサージしてもらっても右腕のしびれは治らず、こんなの全く初めての経験。次の試合ができるかどうか、ずっと不安でした。いざ試合になってもボーッとしたママで、マットに上がってもフラフラ。ハーフタイムのときにはもう立っていられず、コーチに支えてもらいました。持久走など体力には自信がありましたが、厳しい試合を続けていく体力は別だと分かりました。世界大会では、試合を終えてすぐに体力が戻らないと勝ち抜いてはいけない。課題はそうした体力ですね。負けた中国の選手がどうのこうのではなく、全ては自分の問題。いろいろ考えさせられました。大学の監督でもある栄コーチかは、『やめるか続けるか考えろ! 今がオマエの瀬戸際だ』と言われ、『もうやめちゃいたいなぁ』と思いましたが、自分が勝ったドイツの選手が中国の選手に勝って決勝トーナメントに上がり、優勝したのを見て、『やってやろう! もう一度、1からやり直せる』という気持ちになりました。もう1年、やり直します」


 伊調千春(51kg級・中京女大)「ゴメンナサイ! 勝てなくて申し訳ありませんでした」

 ※代わって栄和人コーチが「千春の闘争本能には参る。これでも、これでもかと攻め続ける姿勢は本当に凄い。恐れ入る。今の日本のレスリングに欠けているものでしょう。最後まで前へ出て、あと1ポイント、あと1ポイントと狙っていく。絶対に妥協しない。攻め続けて常に闘っていくからこそ、伊調千春には次があるんです」とコメント。


 吉田沙保里(55kg級・中京女大)「勝ててよかった。これで本物の世界一ですね。日本代表として来ているので、勝たなければならないと思っていました。決勝戦の相手はタックルには入れましたが、それを返されてびっくりしました。こんなに力の強い選手がいるのかってちょっとビビってしまって。緊張したというか。これが世界なんですね。本当に世界にはいろいろな選手がいるもんだと痛感しました。点差が離れてもテクニカルフォールを狙うより、自分のレスリングをしようと考えたのがよかったと思います。初日の午前の試合で肋骨を傷めて、午後は試合がなかったのでずっと休んでいました。冷やしてもらっていたので、今日はローリングされても大丈夫。マットに上がれば、痛みなんて感じてられませんから。母や父、日本で応援してくれている人たちに早く金メダルの報告をしたいと思います。すぐ全日本選手権なので、帰ったら翌日から練習します。オリンピックで金メダルを獲るまで負けないで、勝ち続けていきたいです。外国人選手やコーチから、日本の55kg級なら『ニュー聖子だ』と言われました。山本聖子さんは世界選手権で三連覇をしているので、それに上回って、もっと世界で有名になれるようがんばります」


 岩間怜那(59kg級・リプレ)「また、自分の悪い癖が出てしまいました。相手の問題ではなく、自分が攻めきれなかっただけ。また、がんばってきます」


 伊調馨(63kg級・中京女大付高)「決勝戦のことはよく覚えていません。前半硬かったのは、アジア大会の決勝戦を思い出したからです。アジア大会では、負けて言うのも変ですけど、自信がつきました。反省する点や課題もいっぱいありましたし。今回は体重も増やして61、62kgありましたし、筋トレもしてきました。短期間でも筋力がついたと思います。そうしないと、外国人選手には勝てないと思い知らされたので。姉(千春、51kg級)が決勝戦で負けたのを見て、やるしかないと思いました。自分が負けて二人とも2位だったら、お互い泣くしかないですからね。アジア大会、ワールドカップ、世界選手権と3大会続きましたが、最後が金メダルだったので疲れはありません。これでちょっと自由になれるかな。日本に帰ったら、焼き肉でしょ、肉まんでしょ、それにアイス、うどんが食べたいです。10年ぐらいはこの座を誰にも渡したくないですね」


 斉藤紀江(67kg級・ジャパンビバレッジ)「世界合宿とワールドカップで外国人選手とたくさん戦ってきたので、初出場の昨年のように緊張はしませんでした。いい感じで初戦を迎えられ、力を出せましたが、2試合目の相手には通じませんでした。力の差は感じませんでしたが、自分にはまだこれだという技がない。どんな相手からでも必ずポイントが取れる決め技を身につけることが自分の課題だと思います。3度目の正直となる来年は絶対に結果を残したい。今年の全日本は今まで通り67kg級で出場しますが、その後、72kg級に変えてオリンピックに挑戦します。」


 浜口京子(72kg級・浜口ジム)「緊張はありませんでした。世界合宿で昨年敗れたポーランドのチャンピオンをはじめ、全員を総ナメにできたので、絶対に優勝できる、しなければならないと思っていました。今はホッとしています。練習のときはリズムよく動けているので、それだけ気をつけて戦いました。自分の動きができたと思います。決勝の前に金浜コーチが『スパーリングのつもりで行ってこい』と言ってくれ、(0−0のあとの)後半も『クリンチでダメならポイントやってもタックルで勝てる』と送り出してくれました。コーチの言葉通りやれば勝てると思っていました。力が出してきれたと思います。アジア大会からワールドカップ、世界選手と続き、正直本当に疲れました。一度ゆっくり休みます」


 杉山三郎副団長(中京女大レスリング部部長)「参加国も一気に増え、レベルも上がり、オリンピックの正式種目になったことをあらためて感じさせられた大会でした。今回の日本代表の選手たちは本当に強かった。他の国が技術的に追いつくには、まだ1〜2年はかかるでしょう。でも、我々はそれに満足することなく、次の用意、次の時代の選手たちを育てなければなりません。そのために、あらゆる条件を整えていくことが我々の努めだと考えています」


 鈴木光監督(ジャパンビバレッジ)「選手たちががんばってくれたおかげで、目標としていた金メダル3個をクリアすることができました。優勝した選手、惜しくも準優勝だった選手、メダルに手が届かなかった選手、それぞれ結果が出ましたが、今回の日本代表選手の全員がレベル的には世界のトップに来ていると思います。結果を分けたのは、簡単にポイントをやらないことと精神力。負けているときに何かやってやろうと勝負をかける強じんさ、勝負強さ、どれだけ勝ちたいと思っているかでした。今回金メダルを獲得した選手には、ぜひ謙虚なチャンピオンであってほしい。負けた選手には、いつもの練習あるいは普段の会話の中で勝負魂を植付け、同時にそれがカラ回りしないように指導していきたいと思います」


 栄和人コーチ(中京女子大レスリング部監督)「自分が現役時代に出場したオリンピック、世界選手権、そして女子チームのコーチになってからの世界選手権、全ての大会を通じて、全階級これだけの選手がそろったことはないと思います。今回のチームが日本レスリング史上最強だと胸を張って言うことができます。コイツらは本当にすごい。自分はコーチの一員としてこのチームに加われたことを誇りに思います」


 金浜良コーチ(ジャパンビバレッジ)「勝つ者もいる、負ける者もいる。女子レスリング全体、世界各国のレベルが私たちの予想以上に上がってきましたが、日本はその上を行ってさらに強くなった。それが、昨年を上回る金メダル3個という結果につながったと思います。アテネ五輪のことを考えれば、まだまだやらなかればならいことがあります」


 アニマル浜口氏「親子いつも一緒というのはいいものです。感動的な親子でいられてうれしい限りです。振り返ると、皆さん、福田(富昭)理事長をはじめ協会の方々、鈴木監督や杉山先生、栄コーチ、金浜コーチ、応援してくれた方々、マスコミの方々、全員のおかげで今日という日を迎えられれたと、今あらためてつくづく思います。2年、いや3年、京子はよくがんばりました。2年続けて負けたときは、『浜口京子はもうダメ』とまで言われましたが、親である自分が娘を信じなくてどうする。自分は娘を信じ続けました。皆さんの前で泣いてしまいましたが、京子は本当によくやった。褒めてあげたいと思います」



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