全日本女子連盟・福田富昭理事長インタビュー




 昨秋、2004年アテネ五輪での採用が決まった女子レスリング。これに呼応し、世界学生選手権、アジア大会と続けざまに採用が決まった。同時に世界のレベルアップが本格的に始まることでもある。

 日本レスリング協会と全日本女子レスリング連盟では、7月21〜30日に世界トップ選手を日本に呼び、世界規模の合宿を実施。日本のレベルアップをはかるとともに、世界の女子レスリングのいっそうの発展に尽力する。全日本女子連盟の福田富昭理事長(日本協会専務理事)に、今後の展望を聞いた。


 Q:7月下旬に世界のトップ選手を集めての合宿の実施が決まりましたが、昨年の東アジア大会や世界女子選手権の好成績によって日本オリンピック委員会(JOC)から強化補助金が出たということでしょうか?

 福田:厳密にはまだ(予算は)決まっていない。たぶん大丈夫だと思う。これまでの女子の世界における活躍が買われて予算がつくことになった。すごくありがたいこと。今までの苦労が報われたと思う。ただ、成績が落ちれば削られる。選手やコーチがそのことをしっかり認識しなければならない。

 Q:招待状を出した国は?

 福田:
女子レスリングをやっている中のトップ20か国くらい。宿泊など滞在費は日本が出す。

 Q:
東京(国立スポーツ科学センター)のみならず、新潟・十日町(日大合宿所)でもやる狙いは?

 福田:東京では最新の設備のもとで練習してもらう。十日町は日本古来のトレーニングを経験してもらう。日本のレベルアップにもなるはずだ。受け入れは大変だが、それでもやるのが日本と世界のレベルアップにつながる。

 Q:
日本からの参加予定選手は?

 福田:
全日本選手権やクイーンズカップの3位以内の選手の中から選抜する。

 Q:
外国選手と練習試合もあると思うが、世界女子選手権(11月2〜3日、ギリシア)の日本代表選考のひとつと考えていいのか。

 福田:当然、練習試合はやると思う。試合だけでなく、練習状況も見て選考したい。

 Q:
世界の反応は?

 福田:
これまでにも日本で練習したいという希望が多かった。去年はベネズエラ、カナダが希望し、来日した。それなら、ひとつの国だけではなく全体でやろうと思って実行に移した。どの国も歓迎してくれていると思う。
 
Q:
明るい話題として、アジア大会(10月2〜8日、韓国)の正式種目にも決定した。ただ実施は4階級で、1か国から3階級しか出られないなど、不満は残る。

 福田:政治的な理由によるものだと思う。韓国がまだ女子が強くないので、7階級いれるわけにはいかなかったようだ。4階級入れてもらうのがやっとで、当初は1か国から2階級だった。必死に交渉したが、3階級に増やすことがやっとだった。

 Q:3階級の選考が難しい。選手サイドから絶対に不満が出てくる。どうやって3階級を選ぶのか?

 福田:
現段階では、金メダルを確実に取れる階級を派遣するとしか言えない。

 Q:昨年11月の世界女子選手権を見ると、中国の再躍進がすごい。

 福田:北京オリンピック(2008年)へ向けて、さらに強化してくるはずだ。もっと強くなると思う。

 Q:
日程を見ると、1か月の間にアジア大会、ワールドカップ(10月19〜20日、エジプト)、世界選手権と3大会がある。かなり過密日程だが、代表は?

 福田:3大会にベストメンバーでいきたいが…。ワールドカップは2番手という可能性もある。けがの問題もあるので、合宿での仕上がり具合を見ながら決める。あまり早く決めてしまうと強化にならないので、大会の近くになってベストのメンバーを派遣する方がいいと思う。

 Q:
夏の間に遠征は考えていないのか?

 福田:
協会が指定した選手は、予算が認められる範囲内で海外遠征してもらうことはありうる。その他の選手で海外遠征を希望するなら自費で行ってもらうことになるだろう。

 Q:カナダカップ、フランスカップが6月にあるが…。

 福田:
チームとして行くことは考えていないが、個人で希望があれば考える。

 Q:
6月の世界学生選手権(21〜25日、カナダ)でも女子が採用された。この日本代表選考は?

 福田:
学生が対象なので、全日本学生選手権で活躍した選手の中から学生連盟に選んでもらうことになる。女子連盟は協力するが、主体は学生連盟。去年のインカレの結果をもとに選んでもらうことになるかな。

 Q:
他国のレベルアップがすごいので、他の大陸選手権の視察とかの必要も出てくるのでは?

 福田:
欧州女子選手権は、男子フリーが視察に行くので女子のビデオ撮影もしてもらおうと思う。研究しなければ勝てない時代になった。

 Q:
これもお金がかかることだが、ドーピング検査を実施して選手の薬物に対する意識も高めなければオリンピック種目として片手落ちだ。オリンピックを目指す選手は、カゼ薬ひとつでも注意が必要になる。

 福田:世界合宿の中でドーピング検査をやるかもしれない。必要なことだ。

 Q:
ことしの女子の目標は?

 福田:
アジア大会で3階級すべてで優勝すること。世界選手権では、7階級のうち3、4個のメダルを狙う。

 Q:
その中で金メダルは?

 福田:
いや、金を3、4個だ。

 Q:
去年の世界選手権を見たうえで、注意することは?

 福田:
63、67kg級は外国が強く、これからも伸びそうな選手が多い。今の段階で日本は厳しい。軽量級で金メダルを確実に取っていきたい。

 Q:国内のレベルアップのため、インターハイや国体での女子採用が望まれる。見込みは?

 福田:高体連には話をしている。今年は無理だが、近いうちに何とかなるという感触はある。国体は皇后杯の問題があり、難航しているのが実情だ。努力は続ける。もう少し競技人口が増えてほしい。今までの大会をより盛り上げ、少年少女クラブにがんばってもらいたい。



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