【特集】世界選手権に挑む(19)…グレコ74kg級・永田克彦




 階級区分が変わり、一番選択が困ったのは69kg級の選手だろう。66kg級へ落とすか、74kg級へ上げるか。前者は肉体改造によるスリム化、後者は筋力アップという壁が立ちふさがり、技術や戦術の向上以前にそれらの課題に取り組まねばならなかった。

 永田は後者を選んだ。1階級アップは楽ではなく、最初の大会となった02年冬の欧州(ギリシア、ハンガリー)遠征は4戦4敗。同年夏のピトライスニスキ国際大会(ポーランド)も2戦2敗。69kg級のシドニー五輪銀メダリスト、東アジア大会王者とえいども、1階級アップすると、世界ではこうも通じないものなのか、とその厳しさを痛感させた。

 しかし9月の世界選手権(ロシア)で1勝をマークし、やっと気持ちが吹っ切れた。その後、平坦ではなかったが、何とか国際大会で五分近くの成績を残すまでになり、負けても内容では大きく劣らない試合ができるようになった。「瞬発力は外国選手に劣るのは仕方ないが、総合的な体力は追いついた。スタミナは自信がある。ただ押しまくるだけのスタミナではなく、レスリングのスタミナで」という実感。74kg級として2度目の大会で、その成果を存分に発揮したいところ。

 大量ポイントを取るタイプではないので、「1点の攻防を大事にしたい」と言う。0−0で第1ピリオドを終わり、第2ピリオド開始でのクリンチでポイントを取って勝利へつなげたのは、シドニー五輪でメダル獲得の分かれ目となったロシア選手との試合内容でもあるが、これも勝ちパターンのひとつと考えている。とにかく失点を押さえること。これが勝利への道となりそうだ。

 フリースタイル66kg級の池松和彦の銅メダル獲得は、日体大の先輩として、さらにオリンピックのメダリストとして刺激になった。現在、レスリング界の関心と期待は池松に集中しているが、五輪へ向けて、前回の五輪のメダリストへの期待と関心が薄まることはない。「負けられないですよ」。シドニー五輪でレスリグ界の“顔”になった男は、最高のライバルを得て、大きく飛躍しようとしている。
 


 ◎永田克彦の最近の国際大会の成績

 《2001年》

 【2001年グランマ国際大会(キューバ)】=3位
予選1回戦   BYE
予選2回戦 ○[7−2] Mike Etlsworth(米国)
予選3回戦 ●[0−6] Alieski Gracias(キューバ)
3位決定戦 ○[Tフォール、10−0] Mario Valdivia(キューバ)

 【東アジア大会(大阪)】=優勝
予選1回戦 ○[5−0] Udeshov, Abai(カザフスタン)
予選2回戦 ○[Tフォール、2:12=10-0] Ganbat, Dorjgotov(モンゴル)
予選3回戦  BYE
決    勝 ○[2-0=9:00] Choi, Duk-Hoon(韓国)

 【ピトライスニスキ国際大会(ポーランド)】
予選1回戦  ○[3−1] P・マルシン(ポーランド)
予選2回戦   BYE
予選3回戦  ○[5−2] M・ハミド(ベラルーシ)
決勝T1回戦 ●[0−3] A・ルスタム(ウクライナ)

 【世界選手権(ギリシア)】=13位
1回戦  BYE
2回戦 ●[2−9] Moises Sanchez (スペイン)
3回戦 ○[4−1] Endrix Arteaga (ベネズエラ)

※以上69kg級。以後は74kg級。

 《2002年》

 【デモクリティア2003(ギリシア)】
予選1回戦   BYE
予選2回戦 ●[1-3=6:33] Sergey Sologkiy(ウクライナ)
予選3回戦 ●[0−9] Rustam Agzhi(ウクライナ)

 【ハンガリーグランプリ】
予選1回戦  BYE
予選2回戦 ●[0-2=9:00] Michal Jaworski(ポーランド)
予選3回戦 ●[2−5] Danil Khalilov(ロシア)

 【ピトライスニスキ国際大会(ポーランド)】
予選1回戦 ●[1−4] (ベラルーシ)
予選2回戦 ●[Tフォール] (ウクライナ)
予選3回戦  BYE

 【世界選手権(ロシア)】
予選1回戦  BYE
予選2回戦 ○[4−0] Daniel Schnider(スイス)
予選3回戦 ●[1−5] Volodymir Shatskikh(ウクライナ)

 【アジア大会(韓国)】=5位
予選1回戦 ●[0-2=9:00] Danil Khalimov(カザフスタン)
予選2回戦 ○[Tフォール、2:38=10-0] Baikzada, Abdulahabik(アフガニスタン)
予選3回戦 ○[Tフォール、2:04=11-0] Baletin, Michael(フィリピン)

 【カート・アングル・クラシック(米国)】=ワンマッチ
    ●[3-6=7:17] T.C. Dantzler(米国)

 《2003年》

 【コンコードカップ(米国)】
1回戦 ●[Tフォール、0:56=0-10] Keith Sieracki(米国)
2回戦 ●[フォール、1:27]T.C. Dantzler(米国)
3回戦 ●[0−7] Darryl Christian(米国)
4回戦 ●[フォール、1:17] Keith Sieracki(米国)
5回戦 ○[4−1] Ruslan Biktyakov(ウズベキスタン)

 【デーブ・シュルツ国際大会(米国)】=3位
予選1回戦    BYE
予選2回戦  ○[Tフォール、5:11=10-0] Dan Catarello(米国)
予選3回戦  ○[3-0=6:16] Andrei Stashonak(米国)
決勝T1回戦 ○[4-1=6:11] Marcel Cooper(米国)
準 決 勝   ●[1−8] Filiberto Azcuy(キューバ)
3位決定戦  ○[不戦勝] Darryl Christian(米国)

 【ピトライスニスキ国際大会(ポーランド)】
予選1回戦 ●[2−3] Vugar Aslanov(アゼルバイジャン)
予選2回戦  BYE
予選3回戦 ○[5−1] Daniel Shnyder(スイス)




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