【特集】世界選手権に挑む(16)…グレコ60kg級・笹本睦
フリースタイル66kg級・池松和彦の銅メダル獲得に最も刺激されたのは、大学(日体大)の寮で2年間、同じ部屋で過ごした笹本睦(綜合警備保障)ではないか。「追い越されたというより、うれしいですよ」とは言うものの、先にメダルを取られたことで発奮しないわけはない。
笹本にもメダルを狙える力は十分にある。00年シドニー五輪で8位、01年世界選手権で7位。ソ連崩壊後の群雄割拠の時代では、8位以内が金メダル圏内とされていることを考えれば、2年連続でその壁をクリアしたことで、金メダルを狙える実力がついたと考えていい。
02年冬には欧州3大会のうち2大会で優勝し、欧州勢に名を売った。世界選手権は準々決勝を前に敗れて11位に終わったが、そのあとの釜山アジア大会ではカザフスタンの強豪を破るなどして3位。年が明けて米国遠征での2度の大会で優勝。その中には01年世界王者を破る殊勲の勝利もあった。これだけの事実からして、笹本が金メダルを狙える位置にいることに疑問をはさむ余地はないだろう
8月のピトライスニスキ国際大会(ポーランド)では、現地での合宿中におしりの筋肉をけがし、大会を棄権してもいいと言われたが、「せっかく来たんだから」と出場。ロシアやギリシャの選手を破って3位へ。3年連続のアジア王者でシドニー五輪5位のアリ・アショカニ(イラン)に1−3で負けたが、万全でない状態であっても戦ったことはいい経験となった。「ナザリアン(ブルガリア)とザワジキ(ポーランド)の世界の1、2位が来ていた。彼らともやりたかった」と、気持ちはどこまでも前向きだった。
「オリンピックの前に、メダルを取っておきたいんですよ」。世界8位以内が金メダルの射程圏内と言われてはいるが、やはり“メダリスト”という箔(はく)をつけて臨んだ方が、相手に対する脅威にもなる。その口からは「五輪出場資格獲得」という言葉など出る気配もなく、そんなもの当然と言わんばかりの貫録も漂わせている。
今回マークする選手は、昨年、完敗したアスレディン・クドイベルディエフ(ウズベキスタン)か、アジア大会で負けたカン・キュンイル(韓国)か、五輪王者のアルメン・ナザリアン(ブルガリア)か。いずれにせよ、もう何人かに絞られる段階まで来ている。持っている力をすべて出し切れば、絶対にメダルへ、最高の状態なら金メダルへ手が届くはずだ。(取材・文・写真=樋口郁夫)
◎笹本睦の最近の国際大会成績
《2001年》
【グランマ国際大会(キューバ)】=2位
第1試合 BYE
第2試合 ○[Tフォール、10−0] David
Ochoa(ベネズエラ)
第3試合 ○[4−2] Reiner Diaz(キューバ)
決 勝 ●[0−5] Roberto Monzon(キューバ)
【東アジア大会(韓国)】=2位
1回戦 ○[6−0] Assembekov, Rakymzhan(カザフスタン)
2回戦 ○[11−2] Zhang, Yang(中国)
3回戦 ●[2−4] Kang, Kyung-Il(韓国)
4回戦 BYE
5回戦 ○[4−0] Tchoukanov, Plamen(豪州)
【ピトライスニスキ国際大会(ポーランド)】
予選1回戦 BYE
予選2回戦 ●[1−7] K・ユーリ(ベラルーシ)
予選3回戦 ○[6−2] L・ルイス(ベネズエラ)
【世界選手権(ギリシア)】=7位
予選1回戦 BYE
予選2回戦 ○[11-2] Hugo Passos(ポルトガル)
予選3回戦 ○[フォール、3:22=10−0] Ravinder
Singh (インド)
準々決勝 ●[2−8] Armen Nazarian (ブルガリア)
《2003年》
【デモクリティア2003(ギリシア)】=優勝
予選1回戦 ○[4−0] Ion Gaimer(モルダビア)
予選2回戦 ○[フォール、1:18] Alexndro Triantafilidis(ギリシア)
予選3回戦 ○[10−2] Roman Zgardan(モルダビア)
準 決 勝 ○[4−1] Futo Horbert(ユーゴ)
決 勝 ○[7−0] Jim Gruenwald(米国)
【ハンガリーグランプリ】=優勝
予選1回戦 ○[5−0] Henadzi Besarabi(ベラルシア)
予選2回戦 ○[5−1] Aleksei Ogorodnikov(ロシア)
予選3回戦 BYE
準 決 勝 ○[3−0] Kang Kyung-Il(韓国)
決 勝 ○[9−6] Peter Svehla(チェコ)
【ミラノ・トロフィー(イタリア)】=6位
予選1回戦 ●[2−3] Eduard Kratz(ドイツ)
予選2回戦 ○[Tフォール、4:59=12-0] Robert
Sollie(ノルウェー)
予選3回戦 ○[Tフォール、3:26=12-0] Joaquin
Martinez(スペイン)
【ピトライスニスキ国際大会】=3位
予選1回戦 ○[3−0](米国)
予選2回戦 BYE
予選3回戦 ○[フォール](ロシア)
準々決勝 ○[3−0](イラン)
準 決 勝 ●[1−2](ポーランド)
決 勝 ○[6−5](ブルガリア)
【世界選手権(ロシア)】=11位
予選1回戦 ○[3−2] Plamen Tchovkanov(豪州)
予選2回戦 ○[Tフォール、2:33=10-0] Berge
Sting-Andre(ノルウェー)
予選3回戦 BYE
決勝T予備戦 ●[Tフォール、2:23=0-10] Asledin
Khudoyberdiev(ウズベキスタン)
【アジア大会(韓国)】=3位
予選1回戦 ○[Tフォール、1:46=11-1] Badamseikhan,
Enkhtur(モンゴル)
予選2回戦 ○[Tフォール、1:33=10-0] Tumasis,
Melchior(フィリピン)
予選3回戦 ○[Tフォール、4:29=11-0] Singh,
Ravinder(インド)
準 決 勝 ●[1−3] Kang, Kyung-Il(韓国)
3位決定戦 ○[2-1=9:00] Kasheiganov, Nurlan(カザフスタン)
《2003年》
【コンコードカップ】=優勝
1回戦 ○[フォール、5:57]Glenn Nieradka(米国)
2回戦 ●[0−4]Joe Warren(米国)
3回戦 ○[3−1] James Gruenwald(米国)
4回戦 ○[不戦勝] −−−
5回戦 ○[4−3] Dilshod Aripov(ウズベキスタン)
【デーブ・シュルツ国際大会】=優勝
予選1回戦 ○[Tフォール、4:19=14-0] Jason
Chao(米国)
予選2回戦 ○[Tフォール、2:54=10-0] Marcos
Jeabtete(米国)
予選3回戦 BYE
準 決 勝 ○[4−2] Joe Warren(米国)
決 勝 ○[3−2] James Gruenwald(米国)
【ピトライスニスキ国際大会】=3位
予選1回戦 BYE
予選2回戦 ○[Tフォール、10-0] Mehdi Telassi(チュニジア)
予選3回戦 ○[4−0] Nikolai Antonkin(ロシア)
準々決勝 ○[4−0] Statis Theodosides(ギリシア)
準 決 勝 ●[1−3] Ali Ashkani(イラン)
決 勝 ○[5−0] Kostas Gikas(ギリシア)