【特集】栄和人コーチとの“タッグ”でV2…女子55kg級・吉田沙保里




 吉田沙保里(中京女大)はティナ・ジョージ(米国)を破って2連覇を決めると、昨年と同じくマットをバンとたたき、そこに顔をうずめた。「決勝は去年と同じ相手でしたが、先に1ポイントを取られ、去年より強くなったと感じました。よく研究してきていて、得意の正面タックルに入れませんでした」。

 準決勝の欧州チャンピオン、ナタリア・ゴルツ(ロシア)戦も、タックルをことごとくかわされていた。各国の日本選手対策はかなり進んでいるようだ。しかし、足首にタックルにいくローシングルを実戦で使えるようにしておき、これが当たった。これは栄和人コーチ(中京女大監督)の指示でマスターしたもので、さすがに外国選手も、この技に対する研究はできていなかった。

 いまの吉田にとって、毎日の練習を指導してくれる栄コーチの存在は力強い限り。準決勝では当初、栄コーチが同時に試合のあった伊調千春のセコンドについており、不安だったそうだが、伊調の試合が終わって自分のマットサイドに来てくれた途端に「ホッとし、力が出ました」と言う。強い信頼関係のもとでのV2達成だった。

 国際大会の連続優勝は「14」に伸び、50連勝を超える。しかし、いまの吉田に国際大会に限る強さにこだわる余裕はない。国内に、2kgオーバー計量時での戦いとはいえ2連敗中の最大のライバル、山本聖子がいるからだ。このあとアテネ五輪へ向けて、全日本選手権、「クイーンズカップ」、その後の参考試合と、雌雄を決せねばならない。「1点差でもいいから勝ちたい。そして日本代表になって、アテネ五輪で金メダルを取りたい」。山本と同様、もう次の闘いがスタートした。



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