【特集】新たな闘いはもうスタート…女子59kg級・山本聖子




 2年ぶりの世界選手権のマット。そこでエネルギーを燃やし尽くして勝ち抜いた山本は、2年ぶりに表彰台の一番高いところに上がると、感涙にむせんだ。「世界選手権の表彰台は気持ちがいいです」。

試合は快勝続きだった。2回戦の試合中に右足を痛め、そのまま途中棄権か、と思わせたシーンが唯一の"危ない場面"。正面タックルで相手を豪快に倒す攻撃のほか、足首を狙うローシングルがさえ、ローリングもよく決まった。決勝こそ、なかなか先取点が取れなかったが、3年前にフォール勝ちしている相手との戦いに、負けるという不安はあまりなかったようだ。

 だが、今回の表彰台は本当の意味で自分の指定席ではなかった。「どの階級でもチャンピオンになるのはうれしいですけど…」。やはり、自分の階級である55kg級でないことに悔しさが残った。ライバルの吉田沙保里が、上下の階級からも強豪が集中した55kg級を勝ち抜き2連覇を達成した。同じ優勝に変わりはないが、心底からのうれしさか、と聞かれると、そうではないようだ。「吉田さんがチャンピオンになったのを見て、強いなあ、と思いました」。

チャンピオンは、自分より強いと言われる選手の存在を認めることができない人種。吉田を倒さないでの優勝に、100%の満足感はない。「吉田さんを倒してオリンピックに出ます」ときっぱり。「今は追っている身。がむしゃらに頑張るしかありません・オリンピックまで死ぬ気で頑張って、必ず金メダルを取ります」。優勝の感激に浸れるのは、この日だけ、もう次の戦いはスタートした。




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