富山英明・男子監督、鈴木光・女子監督の話



 12日から始まる世界選手権(男子フリースタイル、女子)にあたり、両チームの監督にここまでの練習を振り返ってもらい、大会にかける意気込みを語ってもらった。(渡米前に収録=取材・構成/樋口郁夫)


 男子・富山英明監督(日大教)の話「練習は順調にこなすことができた。ベテランの横山(84kg級)が入ってくれ、いろんな意味でプラスになっている。うまさは相変わらず。オリンピック(96年アトランタ大会)を経験している選手が加わってくれたことは貴重だ。特に、すぐ下の階級の小幡と練習することが多く、小幡の刺激になり、学んでくれていることが多い。

 一番期待できるのは55kg級の田南部。2月のデーブ・シュルツ国際大会で世界チャンピオンのキューバ選手を破ったのは大きい。アメリカ、アゼルバイジャンと強敵がいるが、いまの田南部の力なら十分に勝てる。技術と体力は申し分ない。勝負どころでポイントが取れるかどうかが勝敗のカギをにぎる。

 60kg級の太田も安心できるようになった。スタミナは十分で、ローリングのデフェンスが課題。1ピリオドを2点以内に押さえれば、誰が相手でも勝つ力はある。1点もやらない、という意識をどう持つかだ。66kg級の池松も、2月のデーブシュルツ国際大会とアジア選手権を通じて勝つ力をつけてきた。スピードあるタックルはよくなった。ただペース配分ができない面が残っていて、勝負どころで勝負できていない。技に入っての最後の極めも甘い。勝敗を分けるのはわずかの差。このあたりをぜひクリアしてほしい。

 74kg級の小幡は、組み合わせの関係で過去2度の世界大会では上位入賞できていないが、世界トップレベルの力にはいっていると思うが、スロースターターなこととポカがあることが気になる。追い上げタイプでは、今のレスリングは勝ち抜けない。最近は笑顔も多く出て、余裕が出てきているのが分かる。ことしは本当の勝負の大会だ。

 96kg級の中尾は、最後の1分間の力は十分にある。それだけに前半の大量失点は命取り。体力はあっても、しつこさが足りない。気持ちの問題だと思うので、勝つ執念を前半から出してくれることを願う。130kg級の諏訪間は、びびらずに思い切ってやってくれることを願いたい。まだ世界でのキャリアが浅いので、1戦ずつ力を出し切り、何かをつかんでほしい。

 リーハイ大学で直前合宿し、万全の状態にして大会に臨む。1階級でも多く、五輪資格を取る」


 女子・鈴木光監督の話「全階級金メダル目指してやる。練習は順調にこなしてきた。やるべきことやった。あとは結果を出すこと。不安はない、と言えばウソになるが…、やっぱり、ないですね(笑)。あっても払拭するようにやってきた。

 48kg級の坂本真喜子は、縦の動きは強いが横の動きに難があった。それがなくなり、欧州勢の横からのがぶり返しとかに耐えられるようになった。ウクライナ、ロシア、米国らが強敵。米国には2月に勝っている。油断しなければ勝てる。

 51kg級の伊調千春は、他の階級がダメという意味ではないが、去年のライバルが上の階級へ上がり、一番金メダルが取りやすい状況にいるかもしれない。やるぞ、と気負いすぎるところがあったが、この面でも成長している。優勝は間違いないと見ている。

 55kg級の吉田沙保里、59kg級の山本聖子は、油断はできないが、自分のレスリングができれば優勝は間違いない。山本は、59kg級でも問題ない。

 63kg級の伊調馨は、強豪が集まり厳しい階級。しかし山本が59kg級に出ることになり、一緒に練習する機会も増えたのがよかった。のんびりしたところがなくなり、積極的に練習するようになった。

 67kg級の斉藤紀江は、一番金メダルに遠い位置にいるような感覚をもたれているが、冬のロシアと欧州の遠征を通じてかなり伸びている。柔道の基礎体力はあった。だいぶレスリングらしくなった。気持ちの盛り上がりも感じられる。優勝してもおかしくない。

 72kg級の浜口は注目浴びているので、コーチ陣も力が入っていた。ロシア、ポーランド、ドイツ、アメリカ、カナダとライバルがいる。アメリカとカナダはやや情報が不足気味だが、2人もタックルを入ってくる選手。高い姿勢になってしまうとまずいが、力を出し切ることができれば勝てる。

 マジソン・スクエア・ガーデンという大舞台で、あがってしまう選手も出てくると思う。いかに選手の力を出させるかが、私たちコーチの課題です」




《前ページへ戻る》