【特集】世界選手権に挑む(10)…女子55kg級・吉田沙保里



 「外国人選手相手に無敗で、国際大会を13大会連続で優勝中」。国際レスリング連盟制定の2002年女子MVPに輝いた吉田沙保里の強さ、そして金メダル当確を表現するのに、これ以上の最適の言葉はない。

 昨年、世界一に輝いたことで、世界中のレスラーから研究されていることは間違いない。国内では2kgオーバー計量の参考試合ながら山本聖子に連敗し、それが世界での戦いに影響するかもしれない。また、けがのため浜口京子や山本聖子らが参加した冬の遠征は不参加となり、国際大会は昨年の世界大会以来ということも、マイナス要因のひとつではあろう。

 だが、それらを差し引いても優勝候補の最右翼の座をはすれることはない。負けたのは “世界のナンバー2”だった山本にであり、吉田と山本の2人が他を大きく引き離している現状を考えれば、黒星を喫したことが世界での戦いに影響するとは思えない。国際大会の間隔があいたことも、他を大きく引き離していたlことを考えれば影響があるとは思えない。依然として外国人相手の戦いに不安を感じさせるものはないというのが現実だ。

 「去年よりは研究されているかな、と思うが、それでも負けない自信はある」ときっぱり断言する自信は、現状を正確に言い表わしているはずだ。

 試合会場のマジソン・スクエア・ガーデンは、超満員となれば2万2000人が集まると聞いて、驚きの表情を浮かべたものの、不安を感じた様子はない。しいて不安要素を挙げてもらうと、「外国では体重が減ってしまうこと」だという。渡米してから試合まで9日あるが、これがプラスとなるかマイナスとなるか。ただ、たとえ多少の体重減があっても、いまの吉田の実力をもってすれば、本命の地位が動くことはないだろう。

 「アメリカと中国をちょとマークするくらいかな」。昨年と違って地元の三重県からも大勢の応援が来る今大会。その目には金メダル以外は見えていない。(取材・文/樋口郁夫)

 ※「歴代世界チャンピオン」の項目参照 ⇒ クリック


 【吉田沙保里の最近の主な国際大会成績】

 《2001年》

 【世界ジュニア選手権】=優勝
1回戦   BYE
2回戦  ○[フォール、0:30=6-0] Schmocker, Martina (オランダ)
3回戦  ○[フォール、0:19=5-0] Reynoso, Jaqueline(メキシコ)
準決勝 ○[9−0] Karlsson, Ida-Theres (スウェーデン)
決  勝 ○[6−1]Volossova, Lubov Michailovna(ロシア)

 《2002年》

 【世界学生選手権】=優勝
予選1回戦 ○[フォール] Erica Vargas(メキシコ)
予選2回戦 ○[フォール] Curatella, Filomena(イタリア)
予選3回戦 ○[Tフォール、12-0] Richardson, Emily(カナダ)
決     勝 ○[8−2] Su, Huihua(中国)

 【カナダカップ】=優勝
(内容不明)

 【アジア大会】=優勝
リーグ1回戦 ○[Tフォール、2:58=0-10] Sun, Dongmei(中国)
リーグ2回戦 ○[フォール、0:38=7-0] Otgonjarjal, Naidan(モンゴル)
リーグ3回戦  BYE
リーグ4回戦 ○[Tフォール、2:34=10-0] Alka, Tomar(インド)
リーグ5回戦 ○[Tフォール、1:39=11-1] Lee, Na-Lae(韓国) 

 【世界女子選手権】=優勝
予選1回戦  ○[フォール、0:55=3-0] Lazareva, Tatiana(ウクライナ)
予選2回戦  ○[10−1] Montero, Minerva(スペイン)
予選3回戦   BYE
決勝T1回戦  ○[Tフォール、2:13=11-0] Ryz, Jennifer(カナダ)
準  決  勝  ○[Tフォール、3:00=10-0] Karlsson, Ida-Theres(スウェーデン)
決      勝  ○[10−4] George-Wilson, Tina(米国)




《前ページへ戻る》