【特集】世界選手権に挑む(5)…フリー84kg級・横山秀和



 フリースタイル82kg級でアトランタ五輪出場を果たした横山秀和(秋田・秋田商高教)が、グレコローマンでシドニー五輪を逃したあと、再びフリースタイルで五輪に挑む。

 1992年に大学3年生で史上初の学生四冠王を達成し、翌1993年に世界へ飛び出した横山も、もうチーム最年長の32歳。「スタミナは自信ありません。これから向上するものでもないでしょう」と、弱気の言葉が口をついたりするが、これは当然謙そんだろう。「若いときから体力で攻めるレスリングではなかった」とも話し、年齢からくる体力の衰えは関係ないと言わんばかりの自信も見え隠れ。

 練習を見る限り、前さばき、足さばきで相手をかく乱し、相手のパワーを利用してテークダウンを狙うレスリングは、いまだに健在だ。

 アトランタ五輪には出場できたが、シドニー五輪を逃したことが悔いが残る。「やり残したことがある」という気持ちが、32歳であり、かつ地方在住の教員というハンディを乗り越えてアテネ五輪へ挑むエネルギーとなった。「久しぶりの全日本チームですし、毎日が新鮮な気持ちです」と練習の充実感はある。教員の選手がすべてそうであるように、「教え子の励みになるような結果を残したい」という気持ちが、辛い練習に立ち向かわせている。

 あとはフリースタイルの実戦勘を取り戻すことか。7月にロシア・カリニングラードであった「ベログラゾフ国際大会」は、久しぶりのフリーの国際大会だったにもかかわらず2位入賞。決勝では昨年世界3位のマジッド・コダエイ(イラン)と1−2で延長にもつれる激戦を演じ、ひとまずの(「ひとまず以上」の?)結果は出した。痛恨となったクリンチからの攻防も、「その時はダメだったけど、自信あります」と話し、グレコローマンで鍛えた上半身の攻防をフリーでも生かし、世界選手権での上位入賞を狙う。

 アトランタ五輪のときは、アジアに旧ソ連などの強豪が集中。アジア選手権4位以内という予選突破はかなり厳しいと予想されたが、世界2位のエルマディ・ヤブライロフ(カザフスタン)の乗った飛行機が遅れて計量に間に合わなかったなどの運も味方となって五輪への道を切り開いた。「自分の持っている運を信じる」。もちろん、その運を引き出すのは、これまでに積み重ねた実力であることは言うまでもない。(取材・文・写真/樋口郁夫)


 【横山秀和の最近の主な国際大会成績】(フリーのみ)

 《2003年》

 【ベログラゾフ国際大会】
予選1回戦   BYE
予選2回戦  ○[7−1] Dacent Aka Akis(フランス)
予選3回戦  ○[フォール、2:59] Lambert Maxmydov(ロシア)
決勝T1回戦 ○[3−2] Georgi Tibilov(ロシア)
準 決 勝   ○[7−3] Coran Gatchiev(ベラルーシ)
決    勝   ●[1−3] Magid Kodaee(イラン)




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