【特集】世界選手権に挑む(4)…フリー76kg級・小幡邦彦



 1999年世界ジュニア選手権で3位となり、国際舞台での活躍も期待された小幡邦彦(綜合警備保障)。シドニー五輪は逃したが、01年ヤリギン国際大会でシドニー五輪5位でアジアを3度制していたルスラン・キンチャゴフ(ウズベキスタン)を破るなど非凡な才能を見せた。昨年までは学生の大会をこなさねばならず、ともするとハードスケジュールに追われてしまった。ことしから世界での闘いに専念できる。言い訳のできない正念場の年になる。

 世界選手権は01年が29位で、昨年が24位。しかし、両大会とも同じリーグに過去の実績があってその大会の優勝選手がいたための成績であり、世界のトップ選手との激闘を展開した経験をことしは生かしたい。2度の世界選手権を経験したあとの昨年10月の釜山アジア大会では、その年の世界4位のゲンナディ・ラリエフ(カザフスタン=当初は5位だったがドーピング失格選手が出て4位へ)を3−1で下している。強豪との対戦はダテではなかったはずだ。

 国際経験の浅い時期からテクニカルフォール負けはなく、大差判定負けは01年世界選手権でアトランタ五輪王者で世界選手権も3度(当時)制していたブバイサ・サイキエフ(ロシア)の0−7くらい。どんな相手にでも粘ってフルタイム戦う実力をもう一段上げれば、10位以内には残れるはず。アジア大会で世界4位の選手を破ったことを考えれば、もっと上を目指してもいいはずだ。

 小幡は「体調はよく、思ったとおりの練習ができている。気持ち的にも上向いており、五輪出場資格を取りたい」と話す。くじ運が悪かった過去2度の世界選手権だが、「強豪が相手でも全力でやる、世界チャンピオン、オリンピックチャンピンが相手でも、自分が1位になるつもりだから、勝つ」と、組み合わせの不運を言い訳にはしない気構えが十分。「自分から攻撃しなければ勝てない。今から新しい技は身に付かないので、これまでの技に磨きをかけていきたい」と、攻撃レスリングを口にする。

 小幡に限らないが、昨年の“レスリング王国”イランでの超満員のもとでの世界選手権を経験している選手は、マジソン・スクエア・ガーデンの大舞台でやることに不安は持っていない。「敵の応援も自分の応援と思ってやる」。すべてにおいて前向きだ。(取材・文・写真/樋口郁夫)


 【小幡邦彦の最近の国際大会の成績】

 《2001年》

 【セーラ・ペラド国際大会】
予選1回戦 ●[0−4]Daniel Gonzalez(キューバ)
予選2回戦 ●[0−3]Robinson Torriente(キューバ)
予選3回戦  BYE

 【東アジア大会】=3位
予選1回戦 ○[8−3]Batohhuluun Batuya(モンゴル)
予選2回戦 ●[1−4]Moon Eui-Jae(韓国)
予選3回戦 ●[1−3]Laliyev Gennadiy(カザフスタン)

 【アジア選手権】=3位
予選1回戦 ○[6−4]Sergelen(中国)
予選2回戦 ○[8−1]Yong Yang Min(韓国)
予選3回戦 ○[Tフォール]Macilano Basas(フィリピン)
準 決 勝  ●[5−7]Batbayar Buyandelger(モンゴル)
3位決定戦 ○[9−3]Sergelen(中国)

 【ヤリギン国際大会】=5位
予選1回戦   BYE
予選2回戦  ○[3−2] Rusan Khinchagov(ロシア=ウズベキスタン)
予選3回戦  ○[9−0] Vadim Flyaga(ベラルーシ)
決勝T1回戦 ●[2−7] Buvaisa Saitiev(ロシア)

 【ブダエフ国際大会】=優勝
(内容不明)

 【世界選手権】
1回戦 ●[1−4] Ruslan Kinchagov(ウズベキスタン)
2回戦  BYE
3回戦 ●[0−7] Buvaisa Saitiev(ロシア)

 《2002年》

 【キエフ国際大会】=3位
予選1回戦  BYE
予選2回戦 ○[Tフォール] Khajimurat Salgereev(ロシア)
予選3回戦 ○[不戦勝] Arsen Gitinov(ロシア)
準々決勝  ○[Tフォール] Konstantin Pakhomov(ロシア)
準 決 勝  ●[0−4] Joe Williams(米国)
3位決定戦 ○[5−0] Elshat Alakhomov(アゼルバイジャン)

 【ヤシャドク国際大会】
予選1回戦 ●[3−7] Khajimurat Salgereev(ロシア)
予選2回戦  BYE
予選3回戦 ○[不戦勝] Kurt Akif(トルコ)

 【ヤリギン国際大会】=5位
予選1回戦  ○[Tフォール、11-1] Georgi Sherosia(ロシア)
予選2回戦   BYE 
予選3回戦  ○[4−3] Radoslav Horbik(ポーランド)
決勝T1回戦 ●[3−5] Irbeck Farniev(ロシア)

 【ベログラゾフ国際大会】
予選1回戦  BYE
予選2回戦 ●[4−5] Sergei Kirillev(ロシア)
予選3回戦 ○[不戦勝] Mukhata Isaev(ロシア)

 【世界選手権】
予選1回戦 ●[2−5] Mehdi Hajizadeh Jouibari(イラン)
予選2回戦 ●[1−4] Eusebiu Diaconu (ルーマニア)
予選3回戦  BYE

 【アジア大会】=7位
予選リーグ1回戦 ●[2−5] Abdulsalimov, Yusup (タジギスタン)
予選リーグ1回戦 ○[3−1] Laliev, Gennadi (カザフスタン)
予選リーグ3回戦 ○[途中棄権、5-0] Basas, Macilano (フィリピン)

 《2003年》

 【デーブ・シュルツ記念国際大会】
予選1回戦  ○[6−2] Yoshady Sanchez(キューバ)
予選2回戦    BYE
予選3回戦  ●[1-3=6:06] Josh Koscheck(米国)
決勝T1回戦 ●[3−6] Donny Pritzlaff(米国)

 【ベログラゾフ国際大会】
予選1回戦 ●[3−4] Ivon Diaconu(モルドバ)
予選2回戦 ○[6−4] Abel Diamadydin(ロシア)
予選3回戦   BYE




《前ページへ戻る》