【特集】世界選手権へ向け全日本女子チームが最後の合宿




 全日本女子チームは、来年のアテネ五輪の予選を兼ねる世界選手権(9月12〜14日、米国ニューヨーク)へ向け、8月18日から23日まで新潟県十日町市の日大レスリング部合宿所で最後の国内合宿を実施した。

 ことしは4月中旬(東京・国立スポーツ科学センター=JISS)、5月上旬(十日町)、6月中旬(十日町)、7月中旬(JISS)、8月上旬(十日町)、そして今回と計6度の合宿を行った。五輪で金メダルが期待される種目ということで、これまで以上の注目が集まり、7月中旬の日本代表決定参考試合(JISS)の際には40社100人以上、今回も東京を離れた地での合宿にもかかわらずテレビ局5社を含めた15社が集まり、関心の高さをうかがわせた。

 チームは9月3日に渡米し、ニューヨーク近郊のフィラデルフィアで最後の合宿をしてニューヨーク入りする。国内最後の合宿に参加した代表選手と鈴木光・全日本女子連盟強化委員長の声を聞いた。(聞き手・構成・写真/宮崎俊哉)


 48kg級・坂本真喜子 (愛知・中京女大付高)「十日町での合宿はとてもきついですが、世界選手権での優勝を目指しているので頑張れます。自分を追い込んで、集中した練習ができました。今回、初出場は私だけですから、とても緊張していますが、初めての世界選手権がマジソン・スクエア・ガーデンだなんて、ラッキーだと思います。

 代表合宿では、走りではいつもトップで、スタミナには誰にも負けない自信があります。外国人選手慣れしていない点は正直不安ですが、攻め続けたいと思います。せっかく48kg級の激戦を勝ち抜いて代表になれなたので、必ず優勝します。今回は姉 (日登美=51kg級、中京女大大学院) と一緒に行けないですけど、来年のオリンピックには2人で代表になって一緒にアテネに行きたいです」


 51kg級・伊調千春 (中京女大)「昨年の世界選手権決勝で敗れた悔しさをバネに、この1 年間がんばってきました。やり残したことはありません。あの敗戦で、世界で勝つことは甘くないことを嫌というほど学ばされ、今はもう準備万端です。気持ちも盛り上がってきました。妹 (馨=63kg級、中京女大) と2人そろって、史上初の姉妹優勝を飾りたいと思います。代表メンバーのなかに妹がいるので、とても心強いです。攻め続け、相手のミスを必ずポイントにつなげる自分のレスリングを貫いて優勝します」


 55kg級・吉田沙保里 (中京女大)「合宿では坂道でのランニングが特にきついですけど、この坂を登り切ったら世界のトップに立てるんだと自分に言い聞かせてがんばっています。外国人選手はここまで厳しい練習をしていないでしょうから、絶対に負けるハズがないと思います。

 昨年に比べ体重も増えたし、筋トレもしっかりやってきたので、パワーがつきました。これからはケガだけには十分注意して、調整していきます。オリンピック階級ということで、上の階級からも下の階級からも強豪選手が集まって去年以上に厳しい戦いの連続だと思いますが、2連覇はもちろん全試合圧勝して、『吉田は強い!』と世界中の選手に言わせたいです」


 59kg級・山本聖子 (ジャパンビバレッジ)「最初は戸惑いもありましたが、今もはもう何もありません。59kg級で戦うモードに入りました。3階級制覇なんて望んでいませんでしたが、全力で戦って絶対優勝します。今回の59kg級での出場は、来年のオリンピックに向けてのいい経験にしたいと思います。

 今は58kgぐらいです。世界選手権が終わったら、すぐに55kg級に戻すので無理して体重は増やさず、ウエイトトレーニングを増やして外国人選手相手でも負けないパワーをつけたいと思いますが、あくまでも自分のレスリング・スタイルで戦います。今回は姉 (美憂=48kg級、PUREBRED) と一緒に行けませんが、『オリンピックは必ず一緒に出よう』と話をしています。父 (郁栄、日体大教授) ですか? いつも盛り上がっています。

 社会人1年目ですが会社から理解してもらっているので、単位におびえていた学生時代より、練習に集中できるのでありがいです」


 63kg級・伊調馨( 中京女大) 「長く、辛い合宿もようやくここまできたという感じです。世界選手権は2度目なので、昨年のような緊張はありませんが、慣れてきて、いい面も悪い面もあるので、自分自身を引き締めて行こうと思います。

 昨年優勝して、周りからかなり研究されてきていると感じますので、去年のままでは勝てないと思います。全く新しい技というのはありませんが、去年と同じ技でも入り方やタイミングなど、意識して変形させています。目標はもちろん2連覇。最初からドンドン攻めて、今年こそ姉妹そろって優勝するのが夢です」


 67kg級・斉藤紀江 (ジャパンビバレッジ) 「最後の代表決定試合で腰を痛めてしまいましたが、本番までにうまく調整して、100%の力を出し切れるようがんばります。1月から3月にかけて2度海外遠征に行き、アジア選手権にも出場して、外国人選手と戦う自信がつきました。どんな相手でも、自分の力を思い切り出し、自分から積極的に技がしかけられるようになったと思います。3年連続出場となりますので、今年こそはという気持ちです。世界選手権で優勝して、オリンピックも狙っていきます」


 72kg級・浜口京子 (ジャパンビバレッジ) 「キャプテンという大役をおおせつかっていますが、いつもみんなに引っ張ってもらっています。今のチームは合宿でも遠征でも、とてもいい雰囲気です。9回目の世界選手権ということで、緊張とかプレッシャーを超えてしまった気がします。去年はアジア大会、ワールドカップと続いて物すごいハードスケジュールでしたが、今年は何ヵ月も前から世界選手権1 本に集中することができ、心身共に今までで一番いい状態で臨めそうです。やらなければいけないことに全力を傾けることができ、全てがいい方向に向かっています。

 ジャパンビバレッジに入れていただいて初の世界選手権となりますが、気持ちの上では全く変わりました。今までも聖子(山本)や紀江(斉藤)、鈴木(光)監督、金浜(良)コーチとは世界選手権も遠征も一緒でしたが、所属が同じになったことで、もっと一緒に頑張れるというか、安心できるというか、チームの力を感じます。対戦相手のことを気にせず、1 試合1 試合目の前の試合で自分の力を全部出し切って戦いたいと思います」


 鈴木光監督 (ジャパンビバレッジ) 「密度の高い、緊迫感のある練習が続けられ、代表選手全員ここまで順調に仕上がってきました。最後の調整に入るには、まだちょっと早いので、国内合宿の最後は厳しく締めたいと思います。7階級制覇も見えてきました。

 48kg級は坂本真喜子が日に日にたくましくなり、伸び盛りであることを感じます。もともと前後の動きには強さがありましたが、6月頃からは横の動きの脆さもなくなりました。外国人選手の横への返し技、がぶり返し、振り回しにも十分対応できるでしょう。ライバルはロシア、アメリカ、ドイツ、ウクライナ。緊張せず、きちんと自分のレスリングさえできれば優勝できると思います。

 51kg級の伊調千春は心配ありません。優勝は固いでしょう。55kg級は昨年吉田沙保里が決勝戦で当たったパワーのあるティナー・ジョージ (米国)の技量がどこまで上がっているか。吉田と比べ、技術的にはまだまだ差があると思います。そのほかライバルは、イダセレス・カールソン (スウェーデン) あたりでしょうか。でも吉田の優勝は間違いないでしょう。

 59kg級は本来55kg級の山本聖子が出場しますが、パワー不足はありません。体重の少なさは、技とスピード、精神力でカバーしてくれると信じています。63kg級は、アメリカが地元の利を生かし、大観衆の声援を受けてがんばってくると思います。レフェリング等々でも、一番日本バッシングを受けると思いますが、それだけ伊調馨が強くなった証拠。馨はスロースターターのところがありますが、常に攻めて、必ず先取点を取るイメージができてきました。

 67kg級はこれまで日本にとって最も厳しい階級でしたが、冬場の海外遠征で自信をつけた斉藤紀江が世界選手権3回目となる今年こそやってくれそうです。

 72kg級の浜口京子は精神的にもさらにたくましくなり、安定してきました。京子はまじめ過ぎるところがあり、今までは試合前、あまりに集中し過ぎていましたので、緊張しないよう笑わせたりしてほぐしていましたが、もうそれも必要ないようです。どんなに集中しても、周りが見えるようになり、余裕すら感じられます。頼りになります。全階級制覇目指し、チーム一丸となってがんばります」




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