【特集】「スタイル削除か、階級削減か、それはFILAが決めること」…IOCフェリ五輪統括部長


 7月上旬、チェコの首都プラハで国際オリンピック委員会(IOC)の理事会が行われ、沈静化したとみられた五輪における種目削除の問題が再浮上した。プラハ在住で昨年まで日本協会広報委員だったビル・メイ氏(元国士大コーチ)が、IOCのフェリ五輪統括部長に、スタイルの削除や階級削減などの問題を抱えるレスリングの今後やIOC内での位置づけなどを聞いてくれた。


Q:五輪レスリングのスタイルまたは階級の削減の話が出ている。

フェリ:2008年北京五輪のレスリングのメダル数は、来年のアテネ五輪と同じ18個の予定で、国際レスリング連盟(FILA)に通達した。しかし2012年五輪では、メダルの数を削減してもらわなければならない。

Q:どのくらい減らす予定か。

フェリ:具体的な数は決まっていない。一方的に決めることはしない。FILAに提案し、交渉して決めることになる。

Q:昨年8月にIOCプログラム委員会が、男子のひとつのスタイルを削除する勧告を出したが、2月の理事会では、階級削減を条件に両スタイルを存続させる方向になったようだが。

フェリ:IOCが一方的にひとつのスタイルの削除を決めてしまうと、FILAの中で争いが起きてしまうので、とりあえず延期した.いずれメダル数を削減してもらわねばならない。メダル(階級)を減らすか、どちらかのスタイルを削除するかは、FILAに決めてもらう。

Q:女子は現在の4階級から増やすことを要望している。

フェリ:それには男子の階級を減らすことが必要になってくる。アテネ五輪では、自転車がモトクロスを新種目として入れるが、その分、トラックの2種目を減らした。女子の階級を増やすのなら、男子のひとつのスタイルか階級を削らねばなりません。

Q:「フリー6階級、グレコ6階級、女子6階級」でちょうどいいのではないか。

フェリ:メダルの総数が今(フリー7、グレコ7、女子4)と同じなので、不可能だ。メダル18個から、いくつかを削減してもらわねばならない。

Q:なぜ18個から削減しなければならないのか。

フェリ:簡単に言うと、メダルが多すぎるからだ。

Q:アテネ五輪では、陸上が46種目、競泳が32種目も実施される。レスリングの18種目は、体操、自転車と同じ。ほかに射撃(17種目)、カヌー(16種目)、重量挙げ(15種目)、柔道・ボート(14種目)と大差ない。

フェリ:オリンピックは28競技300種目が実施されているが、レスリングはそれほど重要な位置にはない。

Q:重要かどうかは、何が基準なのか。

フェリ:何を基準にするかは議論中だが、世界の競技人口、あるいは世界中のメディアがいかに関心を示すかなどが基準になると思う。

Q:レスリングはどの基準が劣っているのか。

フェリ:どの基準でも劣っていると思う。現在の若者は、格闘技といえば空手、テコンドー、柔道をやりたがる。旧ソ連の国を除いて、レスリングをやりたがる若者は少ないのが現状だ。レスリングの入場券の売れ行きは、決してよくない。レスリングは一時期、オリンピックの中のトップスポーツのひとつだった。しかし、時代の流れに対応できず、その地位を守ることができなかった。

Q:FILAが積極的なPR活動をやり、メディアが取り上げて多くの人が関心を持ってくれるなら、メダル(階級)の削減を阻止できるのか?

フェリ:もちろんです。より多くのメディアの関心があれば、メダルを増やすこともありうる。しかし、それを実現するには、かなり困難な壁に挑まねばならないでしょう。



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