【特集】全日本男子チームの100日合宿がスタート



 全日本男子チームの「100日合宿」が6月15日、東京・国立スポーツ科学センター(JISS)でスタートした。ことのしの世界選手権終了まで、JISSまたは近くのホテルにナショナルチームの選手約10選手が泊まり、常泊する日本協会の和田貴広専任コーチと自衛隊の伊藤広道コーチとともに実力養成をはかる。

 1日の練習メニューは、まず午前7時からの朝練習を全員で行う。その後、自衛隊や大学の練習に参加したり、選手を呼んだりして1日3回の練習が予定されている。合宿中は、JISSによって栄養十分の食事が保障され、トレーニングルームなど施設を使うことができる。

 初日は自衛隊や日大の選手が参加。日本協会の福田富昭会長、高田裕司専務理事からのあいさつのあと、富山英明強化委員長の指導のもと、3面マットで練習をした。

 日本協会の長期合宿といえば、1964年東京五輪前や1988年ソウル五輪前に実施している。ソウル五輪前に東京・青少年総合センターで行われた「500日合宿」に参加したグレコローマンの宮原厚次監督(自衛隊)は、「長期合宿に入ったことで、意識が高まった」と、そのプラスを説明。練習が厳しく自由が少ないので逃げ出したくなった時もあったが、「代わりはいくらでもいるんだ」と言われ、「コンチクショー! そんなヤツら(コーチ?)に負けてたまるか、と思って頑張れた」と振り返った。グレコローマンに限っては、間違いなく選手の実力は上がっているそうで、「五輪代表が決まってからでは遅い。いま、一気に実力をアップさせたい」と、希望を話した。

 富山強化委員長は「世界のトップとの差は紙一重。何かで自信をつけさせてやらなければならない。家庭のある選手もいるが、何かで犠牲を払ってもらわなければ、世界で勝てる力は身に付かない」と、長いように思えるが、人生のわずかの期間、がんばってほしいと要求した。

  


 フリースタイル55kg級・田南部力選手の話「ベテランの域に入ったので、がむしゃらだけじゃダメ。1回の練習ごとに課題をもって取り組みたい。家族は嫌な顔もせずに送り出してくれたが、これまで子供と遊んだりしてリラックスすることで気分転換をはかってきたので、それができなくなる部分は心配です。休みの日には近くに呼んで、公園で遊ぶとか、わずかの時間でも子供ととは遊んでやりたい。世界選手権では、優勝しか考えていません。どんな大きな大会でも、2、3位でいい、なんてことは考えていない」

 
フリースタイル66kg級・池松和彦選手の話「アジア選手権は2位に終わって悔しかった。初のメダルといっても、喜べない。この合宿では体力づくりに力を入れたい。今までの筋力トレーニングは我流のところがあったけど、ここではトレーニングセンターの指導員からしっかりしたものを受けたい」

 
グレコローマン69kg級・永田克彦選手の話「アジア選手権は、インドが環境があまりよくない地域ということえ、最終的に体調維持のため棄権した。出ていればよかったかな、という気持ちもあるが、帰ってきた選手がほとんど体調を壊しているので、これでよかったかな、とも思う。常に自分自身に負荷をかけるたけにも、長期合宿は願ってもないこと。どこまで自分を追い込めるかです」

(取材・文/樋口郁夫)



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