「ジャパンクイーンズカップ2003」決勝戦詳報


 【48kg級】

 ▼決勝
坂本真喜子(中京女大付高)○[3-2=7:00]●山本美憂(PUREBRED)

 
《経過》山本が坂本の左足への片足タックルで1点を先制。さらにパッシブを取ってパーテールポジションで攻めたがポイントにはつなげられない。

 第2ピリオドは坂本がタックルで攻めたが、山本の粘りの前にノーポイント。逆に山本のタックルが決まり2−0とリード。終了間際に坂本が1点を取り、3点ノルマのルールによって延長へ。クリンチでスタートし、山本の巻き投げが決まらず坂本に1点。息詰まる攻防は、山本のタックルをかわした坂本が貴重な1点を取り、激戦にピリオドを打った。
(写真:坂本=青=のタッルを受け止める山本)

 坂本真喜子選手の話「全日本チャンピオンになったことで、負けられないというプレッシャーはありました。美憂さんは(昨年12月の)全日本選手権の時とは全然違っていましたね。予選リーグから絶好調なのが分かっていたので、とても不安でした。力もスピードもあって。自分が勝てたのはスタミナで負けなかったからだと思います。それだけは自信がありました。

 延長でクリンチ・スタートになったとき、苦手なのでヤバいと思いましたが、返されたら終わりなので死にもの狂いで粘りました。勝てて、自分が一番びっくりしています。克服していかなければいけない課題がいっぱりあるので、もっとがんばります」
 山本美憂選手の話「自分の持ち味であるタックルが決まっていたのでイケルと思っていましたが、最後の最後で負けてしまって…。体力も技術も戻ってきているので、自分のレスリングができつつあると思います。

 クリンチになるような試合展開には持っていかないつもりだったので、ほとんど練習しませんでしたが、これからはそれもきちんと練習します。長い目で見て応援してください」

《準決勝》   

《決 勝》
     


 【51kg級】

 ▼決勝
坂本日登美(中京女大)○[5−1]●伊調千春(中京女大)

 《経過》坂本がしつこく攻めて1点を先制。その後もタックルを2度決めて3−0へ。坂本の攻撃レスリングは第2ピリオドに入っても衰えず、タックルで1点を加えた。

 ここでやや気を抜いたのか、1点を返されたが、すぐに反撃。ロータックルで1点を取り返し、伊調の終盤の攻撃を押さえて逃げ切った。
(写真:世界2位の伊調=赤=と戦う前世界チャンピオンの坂本)

 坂本日登美選手の話「ケガの心配はもうほとんどありません。優勝できて、少しずつですが自信が取り戻せそうです。今はオリンピックのことは考えず、一つ一つ目の前にある大会のことを意識して、全力でがんばります」

  


 【55kg級】

 ▼決勝
吉田沙保里(中京女大)○[8−3]●山本聖子(ジャパンビバレッジ)

 《経過》吉田が序盤、正面タックルで山本を持ち上げて3点先制。グラウンドではネルソンで2点を加え、約1分で5−0とリード。山本はバックを奪って1点を返す。

 第2ピリオド、山本は片足タックルで攻めて吉田を持ち上げるが惜しくもノーポイント。吉田の片足タックルがもつれ、両者2点となったが、吉田は続く山本のタックルをかわし、バックを取って1点を追加。新旧世界チャンピオンの激しい闘いを制した。
(激戦を展開した現世界チャンピオンの吉田=赤=と前世界チャンピオンの山本)

 吉田沙保里選手の話「決勝戦はかなり緊張していましたが、それでも自分のレスリングができました。初めから攻めていけたのがよかったと思います。先取点を取れたのが大きかったですね。最初の3点タックルは狙っていたわけではありませんが、うまくパッと入れたときに場外の線が見えたので力を上に持っていったらうまく担げました。

 筋トレの成果が出て、パワーがついてきたと自分でも感じます。引きつけたり、相手の力をかわすことができるようになりました。聖子さんに組まれても焦らず、冷静に戦えました。課題はグラウンドでの抑え。うまくきていると思いますので、もっと上を目指して練習します」
 山本聖子選手の話「決勝戦は自分から攻められませんでした。吉田選手には負け続けているので、何も言えません」

   

 【59kg級】

 ▼決勝
岩間怜那(リプレ)○[4−1]●清水真理子(群馬県協会)

 《経過》清水が先にパッシブを取り、パーテールポジションで攻めるがポイントにつながらない。続いてタックルで攻めたが、岩間がうまく押しつぶし2点を先制。

 岩間は第2ピリオド序盤にタックルで1点を加えたが、清水も反撃しタックルからバックを取って1点を返した。それでもラスト30秒、岩間が正面タックルを決めて突き放し、4−1で勝った。
(写真:清水=青=相手に終始攻勢をとった岩間)

 岩間怜那選手の話「最近、何が納得いく攻めなのか、守りなのか、どういうのが自分のレスリングなのが分からなくなっていました。決勝戦は緊張しましたが、それでも普段と同じようにできたと思います。

 監督からはもっと自信を持ってやれと言われます。結果はどうなるかわかりませんが、オリンピックに向けて全力で一生懸命挑戦します。今年は世界選手権で負けたら、もう後がない、自分の時代が終わってしまう、という覚悟でがんばります」

  


 【63kg級】

 ▼決勝
伊調馨(中京女大)○[8−4]●正田絢子(東洋大)

 《経過》一進一退のあと、正田がパッシブを取ってパーテールポジションで攻撃。ガッツレンチが見事に決まり2点を先行。さらにタックル。伊調の粘り強い防御にあったものの、飛行機投げ気味に投げて4−0。苦しい展開となった伊調は正面タックルから押さえ込み、フォール寸前まで攻めたが惜しくも時間。それでも4−4とした。

 第2ピリオドは伊調が回り込んで1点を勝ち越し、疲れの見えた正田を攻め続け、最後は8−4として現役世界チャンピオンの強さを見せた。
(写真:4点のビハインドをしいられたが、必死の攻撃を見せる伊調)

 伊調馨選手の話「決勝戦で先取点を取られたのは気のゆるみ。メチャクチャ焦りました。試合の入り方が全然ダメでしたね。点を取られてから目が覚めて、気合が入るようじゃダメですね。最初からどんどんタックルに入って、攻めまくるようなレスリングをしないと。

 国内で戦う方がプレッシャーがかかりますが、もう絶対に負けたくない。オリンピックまで1試合も負けないで、一気に行きたいと思います。明日が(中京女大への)入学式なので、優勝できてよかったです」

  


 【67kg級】

 ▼四者リーグ戦3回戦
斉藤紀江(ジャパンビバレッジ)○[4−3]●坂本襟(リプレ)

 《経過》先にパッシブを取った斉藤は、パーテールポジションから横崩しを狙うが体勢を崩して押さえ込まれ3点を失った。

 そのままのスコアで第2ピリオドへ入り、斉藤がバックを取って1点を返す。横崩しで2点+1点(5秒ルール)を加えて同点。ラスト40秒に斉藤がバックを奪って貴重な1ポイントを取り、終了間際ににも1点を取って振り切った。
(写真:横崩しをしかける斉藤=赤。坂本は必死でこらえ、体を預けてポイントへつなげる)

 斉藤紀江選手の話「優勝できましたが、あんなレスリングじゃダメですね。海外遠征で学んできたことを生かしていかなければいけないのに。

 決勝戦では3点リードされて、意地でも攻めてやろうと思いました。負ける気はしませんでしたね。逆転して満足せず最後にもう1点とれたことが、次の試合につながると信じてがんばります」

  


 【72kg級】

 ▼四者リーグ戦回戦
浜口京子(ジャパンビバレッジ)○[フォール、1:15=6-0]●村島文子(中京女大)

 《経過》村島をのタックル受け止めてバックを取った浜口はアンクルホールドで2点を加える。ブレークのあと、さらにタックルで1点。外無双でけさ固めを決め、そのままフォールした。3試合で1分43秒という圧勝続きの優勝だった。
(写真:3試合に圧勝して世界チャンピオンの貫禄を見せた浜口は、優勝後、気合一閃!)

 浜口京子選手の話「全試合自分らしいレスリングができたと満足しています。常に冷静で、落ちついて戦えました。自分を見つめ直して練習し、試合ができるようになったと思います。

 最初に対戦した石原選美和子選手のことはどんな経歴かも知らず、特に意識しないで無我夢中で戦いました。どんな試合展開だったのかよく覚えていません。鈴木監督や金浜コーチ、父の話をよく聞いて、もっともっと強くなれるようにがんばります。最近マットに上がると別人になってしまい、絶叫ばかりしていますね。ちょっと恥ずかしいかな」
 父・アニマル浜口氏の話「全試合、『よかった』の一言に尽きます。力まかせのレスリングではなく、技術的にも短期間にかなり進歩してきました。大胆さとち密さ。力を入れているけど抜いている、抜いているけど入れている。バランスのよさを感じましたね。試合ではまず勝つこと。そして内容。技の組み立てもよく、申し分ない動きです。

 今回、総合格闘技でえ活躍されている石原美和子選手が出場してくれたことで、改めてレスリングはスポーツであると同時に格闘技であると感じました。身が引き締まりましたよ。キーワードは『まばたき一つで勝負は決まる』。息を抜くな、気を抜くなということです。日本のレスリングは一致団結して強くなっていきます。常に進化していきます。そのために、内と外、私とジャパンビバレッジの鈴木監督や金浜コーチ、全日本の栄コーチがお互い信頼して、補い合って和を保っていこうと思います」

   


《取材》樋口郁夫、宮崎俊哉、《撮影》山口昭雄


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