【特集】アテネ五輪にかける(8)…グレコローマン74kg級・永田克彦



 五輪銀メダルは69kg級での栄光。74kg級ではこれといった実績がないにもかかわらず、この4年間、常に「五輪銀メダリスト」という肩書きをつけられたグレコローマン74kg級の永田克彦(新日本プロレス職)は、「プレッシャーを感じて結果が出なかったら、すごくもったいないと思う。自分で取った五輪出場権。プレッシャーを感じずに力を出し切ることを考えたい」と話す。

 練習で注意してきたのは、集中力を高めての練習。「スパーリング1本でも真剣勝負という気持ちでやっている」という。並行して体力トレーニングも欠かさない。階級区分変更によって74kg級にしてから2年以上が経ち、ようやくこの階級にふさわしい体力もついたと実感するが、それでも「ちょっとゆるめると不安」と話し、最後まで筋力アップの練習は欠かしたくないようだ。

 合宿では、五輪代表を最後まで争った菅太一(警視庁)が練習相手を務めてくれる。「彼は彼で4年後を目指して来ているんでしょうけど、よく来てくれました。悔しさをぶつけて必死にくるし、緊張感のある試合に近いスパーリングができます」。五輪代表が決まったあとも気を抜くことのない練習が続いているようだ。

 シドニー五輪では、準決勝で欧州王者のロシア選手を破って銀メダルへつなげた。これは徹底した研究と対策の賜物で、永田の相手の力量を見る力はかなりすぐれている。今回も研究は十分に積んでいる。しかし「あまり研究しすぎると、自分のレスリングができなくなるので」と、大切なことは自分のレスリングをすることと認識している。

 シドニー五輪で銀メダルを取ったことで警視庁では出世が保障された。しかし練習に専念できる新日本プロレスの職員へ転職し、アテネを目指してきた。新日プロもそんな永田の決断にこたえるべく支援してきた。ことし6月には千葉・習志野高校レスリング部OBの草間政一氏が社長に就任したこともあり、いっそうの支援体制がしかれた。「金メダル500万円、銀メダル300万円、銅メダル200万円」の褒賞金を用意して最後の尻をたたいている。

 新日プロのオーナーのアントニオ猪木が、多忙の合間をぬって日体大の壮行会(7月17日)に来てくれたりもした。闘魂注入されたかと思われたが、意外にも「栄養を十分に取りなさい」というアドバイスを受けたとか。「それだけに期待を感じます」と永田。今回は兄でプロレスラーの永田裕志(日体大OB)も支援コーチとしてアテネ入りする。シドニーの時はなかった力を背に受け、連続メダル獲得へ挑む。

(取材・文=樋口郁夫、
写真は7月17日の日体大壮行会と7月21日の菅平


◎グレコローマン74kg級の強豪と永田克彦の対戦成績

 最近はロシアが世界、欧州で勝っている。そのロシアの代表は2002年世界チャンピオンのバルテレス・サモウルガシェフになりそう。

 69kg級でシドニー五輪を制したフィリベルト・アスクイ(キューバ)は、そろそろこの階級に慣れたころ。優勝戦線にからんでくるか。スウェーデンは2001年の世界王者が84kg級へ階級アップ。この階級にはモハメド・バブファスが出てくる。どこまでやるか。01年と03年に世界3位に入ったキム・ジンスー(韓国)もメダルを狙ってくるだろう。

 シドニー五輪69kg級銀メダリストの永田は、この階級ではまだ大物を破ってはいなが、アスクイ同様、そろそろこの階級に慣れたころ。シドニーの再現なるか。

 ※永田克彦の最近の国際大会成績 → クリック


◎グレコローマン74kg級出場国と出場が予想される選手

03年世界選手権1位  
ロシア(Varteres Samourgashev)
03年世界選手権2位  
ドイツ(Konstantin Schneider)
03年世界選手権3位  
韓国(Kim Jin-Soo)
03年世界選手権4位  
カザフスタン(Danil Khalimov)
03年世界選手権5位  
ウクライナ(Volokymyr Shats'kykh)
03年世界選手権6位  
ベラルーシ(Aliaksandr Kikiniov)
03年世界選手権7位  
フィンランド(Marko Yli-Hannuksela)
03年世界選手権8位  
イスラエル(Yakov Menasherov)
03年世界選手権9位  
アゼルバイジャン(Vougar Aslanov)
03年世界選手権10位 
日本(永田克彦)
二次予選(1)1位    
キューバ(Filiberto Azcuy)
二次予選(1)2位    
ウズべキスタン(Alexander Dokturisjvili )
二次予選(1)3位    
スウェーデン(Mohammed Babulfath)
二次予選(1)4位    
中国(Yinjiya Sai)
二次予選(1)5位    
ポーランド(Radoslaw Truszkowski)
二次予選(2)1位    
ハンガリー(Tamas Berzicza)
二次予選(2)2位    
キルギスタン(Daniar Kobonov)
二次予選(2)3位    
スイス(Reto Bucher)
二次予選(2)4位    
スペイン(Alberto Recuero)
開  催  国     
ギリシャ(Georgias Panagiotou)


◎2000年シドニー五輪〜2003年世界選手権成績

 ※各種成績は、ここをクリック(pdfファイル)

 【2000年シドニー五輪】=69kg級

 ▼決勝トーナメント1回戦
Filiberto Ascuy Aguilera(キューバ)○[9−2]●Sang-Pil Son(韓国)
Valeri Nikitin(エストニア)○[4-1=7:07]●Islam Dugushiev(アゼルバイジャン)

 ▼準決勝
永田克彦(日本)○[3−1]●Alexei Gloushkov(ロシア)
Filiberto Ascuy Aguilera(キューバ)○[6−0]●Valeri Nikitin(エストニア)

 ▼5・6位決定戦
Sang-Pil Son(韓国)○[不戦勝]●Islam Dugushiev(アゼルバイジャン)

 ▼3位決定戦
Alexei Gloushkov(ロシア)○[5−0]●Valeri Nikitin(エストニア)

 ▼決勝
Filiberto Ascuy Aguilera(キューバ)○[Tフォール、1:44=11-0]●永田克彦(日本)

 【2000年シドニー五輪】=76kg級

 ▼決勝トーナメント1回戦
Marko Yli-Hannuksela(フィンランド)○[3−0]●Jin Soo Kim(韓国)
Mourat Kardanov(ロシア)○[3-1=7:19]●Ara Abrahamian(スウェーデン)

 ▼準決勝
Mourat Kardanov(ロシア)○[4-0=7:23]●Marko Yli-Hannuksela(フィンランド)
Matt James Lindland(米国)○[7−4]●David Manukyan(ウクライナ)

 ▼5・6位決定戦
Jin Soo Kim(韓国)○[5−0]●Ara Abrahamian(スウェーデン)

 ▼3位決定戦
Marko Yli-Hannuksela(フィンランド)○[4−2]●David Manukyan(ウクライナ)

 ▼決勝
Mourat Kardanov(ロシア)○[3−0]●Matt James Lindland(米国)

 【2001年世界選手権】=69kg級

 ▼準々決勝
Jimmy Samuelsson(スウェーデン)○[途中棄権、3:07=3-4]●Parviz Zaidvand(イラン)
Filiberto Ascuy Aguilera(キューバ)○[5-0=6:40]●Sang-Pil Son(韓国)
Alexei Gloushkov(ロシア)○[4−0]●Max Schwindt(ドイツ)
Roustam Adzhi(ウクライナ)○[Tフォール、4:45=11-1]●Moises Sanchez(スペイン)

 ▼準決勝
Filiberto Ascuy Aguilera(キューバ)○[8−4]●Jimmy Samuelsson(スウェーデン)
Alexei Gloushkov(ロシア)○[8−1]●Roustam Adzhi(ウクライナ)

 ▼3位決定戦
Roustam Adzhi(ウクライナ)○[フォール、1:28=6-0]●Jimmy Samuelsson(スウェーデン)

 ▼決勝
Filiberto Ascuy Aguilera(キューバ)○[4−0]●Alexei Gloushkov(ロシア)

 【2001年世界選手権】=69kg級

 ▼準々決勝
Jin Soo Kim(韓国)○[3-0=6:14]●Marko Yli-Hannuksela(フィンランド)
Alexej Michin(ロシア)○[4−1]●Tamas Berzicza(ハンガリー)
Sergeij Solodkij(ウクライナ)○[5−0]●Bakhtiar Baiseitov(カザフスタン)
Ara Abrahamian(スウェーデン)○[6−0]●Odelis Herrero(キューバ)

 ▼準決勝
Alexej Michin(ロシア)○[3-2=6:32]●Jin Soo Kim(韓国)
Ara Abrahamian(スウェーデン)○[4−0]●Sergeij Solodkij(ウクライナ)

 ▼3位決定戦
Jin Soo Kim(韓国)○[6−0]●Sergeij Solodkij(ウクライナ)

 ▼決勝
Ara Abrahamian(スウェーデン)○[フォール、5:04=5-0]●Alexej Michin(ロシア)

 【2002年世界選手権】

 ▼準々決勝
Badri Khasaia(グルジア)○[7−0]●Michal Jaworski(ポーランド)
Vladimir Shatskikh(ウクライナ)○[フォール、2:14=7-0]●Konstantin Schneider(ドイツ)
Varteres Samourgashev(ロシア)○[3−0]●Alexander Kikinov(ベラルーシ)
Filiberto Ascuy Aguilera(キューバ)○[3−2]●Tamas Berzicza(ハンガリー)

 ▼準決勝
Badri Khasaia(グルジア)○[3-0=6:15]●Vladimir Shatskikh(ウクライナ)
Varteres Samourgashev(ロシア)○[8−2]●Filiberto Ascuy Aguilera(キューバ)

 ▼3位決定戦
Filiberto Ascuy Aguilera(キューバ)○[5−1]●Vladimir Shatskikh(ウクライナ)

 ▼決勝
Varteres Samourgashev(ロシア)○[3-0=6:24]●Badri Khasaia(グルジア)

 【2003年世界選手権】

 ▼準々決勝
Daniel Khalimov(カザフスタン)○[3−1]●Alexander Kikinov(ベラルーシ)
Alexei Gloushkov(ロシア)○[8−1]●Vladimir Shatskikh(ウクライナ)
Jin Soo Kim(韓国)○[4-1=6:32]●Marko Yli-Hannuksela(フィンランド)
Konstantin Schneider(ドイツ)○[9−0]●Yakov Manasherov(イスラエル)

 ▼準決勝 
Alexei Gloushkov(ロシア)○[3−0]●Daniel Khalimov(カザフスタン)
Konstantin Schneider(ドイツ)○[7-2=7:29]●Jin Soo Kim(韓国)

 ▼3位決定戦 
Jin Soo Kim(韓国)○[3-0=6:08]●Daniel Khalimov(カザフスタン)

 ▼決勝
Alexei Gloushkov(ロシア)○[3−0]●Konstantin Schneider(ドイツ)




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