【特集】アテネ五輪にかける(4)…フリースタイル74kg級・小幡邦彦


 「早く来てほしいですよ」と五輪初出場のフリースタイル74kg級の小幡邦彦(綜合警備保障)。高校五冠王者、世界ジュニア選手権銅メダル獲得、19歳で全日本王者など数多くの勝利・快挙を達成したきた選手だけに、「プレッシャーはありません」ときっぱり。綜合警備保障の壮行会は、人気の的は柔道の井上康生だったかもしれないが約700人のゲストからの期待を受け、いっそう力が入っているという。

 もっとも、オリンピックは独特の大会であることは認識している。「全試合が決勝戦のような大会」と評したように、"安全パイ"がほとんどないのがオリンピック。「一戦一戦が勝負です」と気を引き締める。

 世界選手権でのメダル獲得こそないものの、2002年アジア大会では1か月前の世界選手権4位の選手を破るなど時に大物食いをしてきた。アトランタ五輪を含めて6度世界一に輝いているブバイサ・アシキエフ(ロシア)をかなり追い込んだりもしている
(写真右)。上位入賞の期待は十分にできる。「サイキエフとはやはり決勝で当たる組み合わせがいいけど、初戦で当たったら当たったで、この前(2001年世界選手権)とは違うところを見せてやります」と、強気の言葉が続く。

 唯一プレッシャーがかかる(?)のが、母校・霞ヶ浦高校の大沢監督がアテネまで応援に来ること。大沢監督の飛行機嫌いは有名で、海外遠征はほとんど辞退してきたが、今回は飛行機を乗り継いでアテネへ入る。「違った意味でプレッシャーを感じますね」と苦笑い。しかし、わざわざ来てくれることには感謝の気持ちの方が大きく、「力は入ります。応援席の目につくところにいてほしい。期待にこたえられるように頑張りたい」と言う。

 大沢監督とともに、「自分を二段階も三段階もアップしてくれた」という大学時代の恩師の高田裕司専務理事(山梨学院大教)はテレビの解説席で試合を見守る予定。思い返せばシドニー五輪の最終予選だった1999年全日本選手権で初優勝を飾ったとき、テレビ中継の解説をやっていたのが高田専務理事(当時強化委員長)だった。「あの時と同じようにしたい(優勝!)ですね」と、頑張りにつながる要素は多い。

 19歳で全日本を取ってシドニー五輪を嘱望されながら無念にも世界予選を勝ち抜けなかった小幡。4年越しにその雪辱をする舞台がやってくる。4年前の悔しさをぶつける場での活躍が期待できる。

(取材・文=樋口郁夫、
上記写真は7月21日・菅平と2001年世界選手権


◎フリースタイル74kg級の強豪と小幡邦彦の対戦成績


 世界選手権5度(1995・97・98・01・03年)とアトランタ五輪優勝のブバイサ・サイキエフ(ロシア)が最右翼。シドニー五輪は予選リーグでブランドン・スレイ(米国)に敗れて9位に終わっており、金メダルを逃せない気持ちは強いだろう。昨年の世界選手権決勝でサイキエフと9分間の激闘を演じて惜敗したムラド・ガイダロフ(ベラルーシ)、01・02年に2年連続欧州王者のアルパド・リッター(ハンガリー)、昨年のパンアメリカン王者のジョー・ウイリアムス(米国)あたりが追っている状況。

 99年の69kg級世界王者で、シドニー五輪同級でも勝ったダニエル・イガリ(カナダ)は、今回の五輪は第2次予選第1ステージ4位で出場資格を獲得。五輪連続優勝なるか。

 小幡は02年世界4位で昨年も3位に入っているゲンナディ・ラリエフ(カザフスタン)に02年アジア大会で3−1で勝っている。昨年2位のガイダロフには、その大会の決勝トーナメント1回戦で延長1分50秒、1−3で惜敗している。世界のメダリスト級の選手に近い実力は示している。

 ※小幡の最近の国際大会成績 ⇒ クリック


◎フリースタイル74kg級出場国と出場が予想される選手

03年世界選手権1位 
ロシア(Bouvaisa Saitiev)
03年世界選手権2位 
ベラルーシ(Murad Gaidarov)
03年世界選手権3位 
カザフスタン(Gennadiy Laliyev)
03年世界選手権4位 
イラン(Mehdi Hajizadeh)
03年世界選手権5位 
マケドニア(Sihamir Osmanov)
03年世界選手権6位 
豪州(Talgat Ilyasov)
03年世界選手権7位 
ハンガリー(Arpad Ritter)
03年世界選手権8位 
インド(Sujeet Mann)
03年世界選手権9位 
ウズベキスタン(Elnur Aslanov)
03年世界選手権10位
日本(Kunihiko Obata)
二次予選(1)1位    
米国(Joe Williams)
二次予選(1)2位    
キューバ(Ivan Fundora)
二次予選(1)3位    
アルメニア(Arayik Gevorgian)
二次予選(1)4位    
カナダ(Daniel Igali)
二次予選(1)5位    
ポーランド(Krystian Brzozowski)
二次予選(2)1位   
ブルガリア(Nikolai Paslar)
二次予選(2)2位   
グルジア(Gela Sagirashvili)
二次予選(2)3位   
イタリア(Salvatore Rinella)
二次予選(2)4位   
タジギスタン(Yusup Abdulsalamov)
開  催  国      
ギリシャ(Emzari Betinidis)
ワイルドカード      
英国(Nate Ackerman)
ワイルドカード      
セネガル(Matar Sene)


◎2000年シドニー五輪〜2003年世界選手権成績

 ※各種成績は、ここをクリック(pdfファイル)

 
【2000年シドニー五輪】=69kg級

 ▼決勝トーナメント1回戦
Daniel Igali(カナダ)○[3-1=6:15]●Yosmany Sanchez Larrudet(キューバ)
Lincoln McIlravy(米国)○[3−1]●Ivan Diaconu(モルドバ)

 ▼準決勝
Daniel Igali(カナダ)○[6-3=8:14]●Lincoln McIlravy(米国)
Arsen Gitinov(ロシア)○[3−2]●Sergej Demtchenko(ベラルーシ)

 ▼5・6位決定戦
Yosmany Sanchez Larrudet(キューバ)○[6−3]●Ivan Diaconu(モルドバ)

 ▼3位決定戦
Lincoln McIlravy(米国)○[3−1]●Sergej Demtchenko(ベラルーシ)

 ▼決勝
Daniel Igali(カナダ)○[7−4]●Arsen Gitinov(ロシア)

 【2000年シドニー五輪】=76kg級

 ▼決勝トーナメント1回戦
Brandon Slay(米国)○[2-2=9:00]●Gennadi Laliev(カザフスタン)
Adem Bereket(トルコ)○[5−2]●Ruslan Kinchagov(ウズベキスタン)

 ▼準決勝
Brandon Slay(米国)○[3−1]●Adem Bereket(トルコ)
Alexander Leipold(ドイツ)○[3-1=8:50]●Eui-Jae Moon(韓国)

 ▼5・6位決定戦
Gennadi Laliev(カザフスタン)○[不戦勝]●Ruslan Kinchagov(ウズベキスタン)

 ▼3位決定戦
Eui-Jae Moon(韓国)○[フォール、2:42=3-0]●Adem Bereket(トルコ)

 ▼決勝
Alexander Leipold(ドイツ)○[4−0]●Brandon Slay(米国)

 ※Alexander Leipold(ドイツ)はドーピング違反で順位はく奪

 【2001年世界選手権】=69kg級

 ▼準々決勝
Amir Tavakolian(イラン)○[3−2]●Yosmany Sanchez Larrudet(キューバ)
Jae-Sung Jang(韓国)○[4−2]●Ahmet Guelhan(トルコ)
Laszlo Szabolcs(ルーマニア)○[3−1]●Stefan Fernyak(スロバキア)
Nicolai Paslar(ブルガリア)○[3−2]●Emzari Betinidis(グルジア)

 ▼準決勝
Amir Tavakolian(イラン)○[フォール、5:30=5-2]●Jae-Sung Jang(韓国)
Nicolai Paslar(ブルガリア)○[Tフォール、5:30=5-2]●Laszlo Szabolcs(ルーマニア)

 ▼3位決定戦
Jae-Sung Jang(韓国)○[6−2]●Laszlo Szabolcs(ルーマニア)

 ▼決勝
Nicolai Paslar(ブルガリア)○[6−1]●Amir Tavakolian(イラン)

 【2001年世界選手権】=76kg級

 ▼準々決勝
Joe E. Williams(米国)○[7−3]●Mehdi Hajizadeh Jouibari(イラン)
Bouvaisa Saitiev(ロシア)○[3−2]●Revaz Mindorashvili(グルジア)
Eui-Jae Moon(韓国)○[8−7]●Arpad Ritter(ハンガリー)
Radion Kertanti(スロバキア)○[Tフォール、2:22=10-0]●Jari Erkki Olmala(フィンランド)

 ▼準決勝
Bouvaisa Saitiev(ロシア)○[5−4]●Joe E. Williams(米国)
Eui-Jae Moon(韓国)○[6−0]●Radion Kertanti(スロバキア)

 ▼3位決定戦
Joe E. Williams(米国)○[Tフォール、4:06=10-0]●Radion Kertanti(スロバキア)

 ▼決勝
Bouvaisa Saitiev(ロシア)○[3−2]●Eui-Jae Moon(韓国)

 【2002年世界選手権】

 ▼準々決勝
Mehdi Hajizadeh Jouibari(イラン)○[5−4]●Gennadi Laliev(カザフスタン)
Ahmet Guelhan(トルコ)○[4-0=6:08]●Xuanchong Xu(中国)
Volodymyr Syrotyn(ウクライナ)○[4−3]●Daniel Igali(カナダ)
Magomed Isagaschiev(ロシア)○[3−0]●Gurami Michedlidze(グルジア)

 ▼準決勝
Mehdi Hajizadeh Jouibari(イラン)○[8−1]●Ahmet Guelhan(トルコ)
Magomed Isagaschiev(ロシア)○[8−0]●Volodymyr Syrotyn(ウクライナ)

 ▼3位決定戦
Ahmet Guelhan(トルコ)○[5-1=6:11]●Volodymyr Syrotyn(ウクライナ)

 ※Ahmet Guelhan(トルコ)はドーピング違反で順位はく奪

 ▼決勝
Mehdi Hajizadeh Jouibari(イラン)○[4−0]●Magomed Isagaschiev(ロシア)

 【2003年世界選手権】

 ▼準々決勝
Bouvaisa Saitiev(ロシア)○[9−1]●Talget Ilyasov(豪州)
Hadi Habibi(イラン)○[フォール、3-0=3:41]Maan, Sujeet (IND)
Gennadi Laliev(カザフスタン)○[2-1=9:00]●Arpad Ritter(ハンガリー)
Mourad Gaidarov(ベラルーシ)○[3−2]●Sihamir Osmanov(マケドニア)

 ▼準決勝
Mourad Gaidarov(ベラルーシ)○[4-2=6:23]Gennadi Laliev(カザフスタン)
Bouvaisa Saitiev(ロシア)○[6−3]●Hadi Habibi(イラン)

 ▼3位決定戦
Gennadi Laliev(カザフスタン)○[5−1]●Hadi Habibi(イラン)

 ▼決勝
Bouvaisa Saitiev(ロシア)○[2-2=9:00]●Mourad Gaidarov(ベラルーシ)




《前ページへ戻る》