全日本女子チームがオイルレスリングを観戦




 4月26日から新潟県十日町市の櫻花レスリング道場(日大レスリング部合宿所)で第2次強化宿を行っている五輪代表4選手を含む全日本女子チームが30日、同県柏崎市トルコ文化村を訪れ、オイルレスリングを観戦した。

 オイルレスリングは、650年ほど前、オスマントルコ帝国の兵士たちの間で始まった格闘技であり、トルコ語で「ヤール(オイル)・ギュレシュ(レスリング)」。その名の通り、体にオリーブオイルを浴びるように塗って戦われれる。「クスベット」と呼ばれる水牛の革で作ったヒザ下までの分厚いパンツを履き、上半身は裸。クスベットは軽いもので5kg、重いものでは13kgにもなるといわれる。体重ではなく、身長によってクラス分されているのが特徴。試合時間は40分。相手の背中を地面に押しつけるか、体を宙に高く持ち上げれば一本勝ち。

 トルコの国技であり、最高位であるバシュペフリヴァンを決定する大会は、大統領も観戦に訪れ、世界中から訪れる観客とともに100名以上の海外のプレスが集結。バシュペフリヴァンを獲得した選手には、日本円にして260万円相当の黄金ベルトと優勝賞金が贈られる。

 今回、「日本におけるトルコ年」を記念して来日した4人のレスラーのなかで最も注目されるのは、ケナン・シムシェク。バルセロナ五輪フリースタイル90kg級銀メダリストであり、2003年度のバシュ・ペフリヴァンを獲得したチャンピオンだ。

 オイルレスリングは、体はもとより、クスベット、さらにはその中までオリーブオイルを塗りたくっているため、クラッチの優劣が勝敗を決定することが多い。

 五輪本番のアテネは40度を超す猛暑となり、会場は冷房が十分効かない可能性も心配される。また、海外の選手のなかには相手につかまれないように体にオイルやクリームを塗ってくる者もいる。実際に、55kg級五輪代表の吉田沙保里(中京女大)は昨年の世界選手権でロシア選手が足にオイルを塗ってきたため、タックルに行っても手が滑ってなかなか足がつかめなかった経験がある。

 女子レスリングチームのオイルレスリング観戦はそうした状況への対策が目的であり、五輪代表選手たちは「あの状況でもどうすれば腕がとれるのか、クラッチできるのか勉強になった」と語っていた。キャプテンの浜口京子は「レスリングというスポーツは世界各地で行われてきた歴史があり、改めてその伝統と神聖さを感じることができました」と感慨深げに話していたが、最後に「どんな状況でも強い人は強い」と自らに言い聞かせるように力強く締めくくった。(取材・文=宮崎俊哉)


観戦する選手たち オイルレスリングの試合 オイルを体にかける

 72kg級:浜口京子選手の話「レスリングが神聖なものだいうことが、あらためて分かりました。歴史があり、世界各地で行われてきた伝統があるんですね。そんなスポーツを今、自分がやっていると思うと胸が高鳴ります。あれだけオイルを塗っていたら相手をつかむことができなくて、さぞかし大変だと思いますが、それでも強い人は強い。今日はチャンピオンの動きをよく見て勉強しました。それにしても、オフはいいですね」

 
55kg級:吉田沙保里選手の話「いい勉強になりました。組み手とか、腕の取り方・刺し方。力技も見ました。以前、ロシアの選手が足にオイルのようなものを塗ってきて、タックルに入ったときに滑ったことを思い出しました。オリンピックでは何があるかわからないですから、今日見させていただいたことを生かして戦いたいと思います。休みのときに、本当にいい経験ができてよかったです」

 
48kg級:伊調千春選手の話「今、こうしてインタビューを受けているのも、オリンピック代表になれたからなので、少しずつ自分が代表なんだと実感していいます。オリンピック本番では、たとえ40度あろうと、相手が汗だらけで滑ろうと、やるときはやらなきゃならない。恥ずかしくないような試合ができるよう残りの日々、精いっぱいがんばります」

 
63kg級:伊調馨選手の話「勉強になりました。オイルレスリングってどんな戦い方をするんだろう、どうやってバックをとったり、背中をマットにつけるんだろうと、ずっと思っていました。外国人選手は本当にオイルを塗ってきたりするので、今日見たことを参考にしてそうした場合の対策を考えます」




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