【特集】「多くの方々に支えてもらい感謝しています」…吉村祥子


 1回戦  BYE
 2回戦 ○[9−0]池田弘美(青山学院大)
 3回戦 ●[Tフォール、4:26=0-10]伊調千春(中京女大)

  


 女子レスリングの一期生ともいえる吉村祥子(エステティックTBC)が「ジャパンクイーンズカップ」で優勝を逃し、悲願だった五輪出場を逃した。女子の五輪採用が決まったあとの02年の全日本選手権で2位に入り、五輪を狙える力は十分にあると思われた。だが3月の中国遠征でのけがによる戦線離脱が響いたのか、若い力が予想以上に伸びたのか、昨年12月の全日本選手権、今大会とも決勝のマットに残ることもかなわなかった。

 今回は、プレ五輪優勝で乗っている伊調千春にテクニカルフォール負けという散々の出来。自分が世界チャンピオンだったときのビデオを見て気持ちを高めるなど万全を期したが、「レスリングをやってきて一番嫌な負け方をしてしまいました。守りと攻めのバランスが取れず、大変残念です」という結果になった。技術的、体力的に劣っていたとは思わないが、劣勢に立たされたとき、立て直す自分がいなかったと振り返った。

 レスリングを初めて17年。世界選手権で5度勝ち、「次はオリンピック」と思い、ここ数年は目先の試合よりオリンピックに出ることに照準を合わせてやってきた。故障がありながらも体はしっかり維持できたが、「気持ちの何かが足りなかったと思います」と言う。

 夢がかなわず、目標を達成できなかったことは悔しいに違いない。だが、「多くの方々に支えてきてもらったことに感謝しています。会社はとてもよく理解してくれ、自由に練習してくることができました」と周囲への感謝の言葉を忘れない。仕事とレスリングを両立してきたことにも後悔はなく、誇りにも思える。

 「これからは、自分が教えていただいたこと、学んできたことを伝えていき、レスリングに貢献できればと思います」と言う一方で、まだ引退は決意していないという。「会社が許してくれれば、もう一度、自分自身納得して最後と決められる試合をつくって終わりにしたいと思います」。それは、51kg級でのアジア選手権(5月22〜23日、東京)か、今年末の全日本選手権か。

(取材・文=宮崎俊哉、樋口郁夫)



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