【特集】アテネで燃えた浜口京子、因縁の2人を破って優勝



 約7ヶ月後に激戦の舞台となるアテネのアノリオシア・ホールで行われたプレ五輪大会で、72kg級の浜口京子(ジャパンビバレッジ)が燃えた。まだ五輪の日本代表に決まってはいないものの、五輪会場での試運転で優勝したことでアテネへの道に一歩近づき、本番へ向けての最高の縁起をつくった。

 浜口は、初戦が世界V6のクリスチン・ノードハゲン(カナダ)で、準決勝でワールドカップ覇者のトッカラ・モンゴメリ(米国)が待ち受けるという組み合わせ。昨秋に苦杯を喫した2人を突破しなければ決勝へ上がれないという厳しい道が待っていた。

 しかし、五輪での優勝を目指す以上、どんな組み合わせであっても勝ち上がらなければならない。「目の前の敵を倒すだけです」。浜口のファイティングスピリットは初戦から全開。計量会場でノードハゲンが他国の選手にリラックスムードで話しかけ、"決戦"という顔つきでなかったことも、浜口のファイトが燃え上がった要因だった。

 そのノードハゲンにフォール勝ち。続くモンゴメリ戦は、開始早々、モンゴメリのタックルでしりもちをつきながらも投げ返し、3点(京子)−2点(モンゴメリ)が入ったが、審判協議で2−2へ。第2ピリオド、タックルからバックを取られて1点をリードされたものの、すぐに取り返し3−3へ。6分31秒、ゾーン際で浜口のタックルが決まり、貴重な1点を挙げて振り切った。

 「いいところと悪いところがすべてで出た試合でしたが、最初から最後まで集中でき、セコンドの声もよく聞こえていました。相手の攻撃パターンはすべて分かっていました」と京子。ワールドカップ後の米国遠征(11月)で何度かスパーリングし、「絶対に勝てる相手」との感触はあり、延長へもつれる展開は予想していなかったようだが、「どんな形であれ、最後に自分の手が上がっていればいい。リベンジすることができ、これでようやくアテネが見えてきました」と言う。

 練習と試合では違う。練習での100勝より試合での1勝こそが、選手の自信になるもの。昨秋苦杯を喫した2人に雪辱しての優勝は、浜口に大きな自信をもたらしたことだろう。

 決勝のウンダ(スペイン)戦は、第1ピリオドを1−0のあと、場外逃避を取られて1−1とされたものの、そのあと地力を発揮。ポイントを重ね5−1で快勝して金メダルを手にした。大会前は、出場するかどうま迷ったという。終わってみれば、強豪2人を破っての優勝という最高の出来。「出場してよかった。すべてが私に味方してくれたので、大好きな会場です。8月、ここで金メダルを取れるように頑張ります」と結んだ。

 もちろん課題は多く見つかった。モンゴメリやノードハゲンはこれまで以上に研究してくるだろうし、ノーマークだったスペインがロシアを破って決勝へ出てきたように、五輪では意外な国の選手が出てきて足元をすくわれることも想定される。前進しなかったら追い越される。「この成績に満足せず、もっと強くなるように努力します。ビデオを見て研究し、課題をひとつひとつ克服していきます」ときっぱり。あと7ヶ月の努力に金メダル獲得をかける浜口の姿がアテネにあった。(取材・宮崎俊哉)



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