【特集】全日本チームを支える2人のトレーナー




 栄光を取った選手やチームの影には、監督やコーチのほか、選手の体をケアするトレーナーがいるのが普通だ。日本レスリング協会では、1988年ソウル五輪の時にグローバルスポーツの金山浩康氏が選手のケアを一手に引き受け、選手の相談相手にもなってくれて好評を博して以来、一貫してグローバルスポーツ(http://www.global-sports.co.jp/)がその任を請け負っている。

 今回、選手を支えているのが、男子が佐々木康之さん
(写真右)、女子が川崎淳さん(写真左)の2人。フル回転でマッサージを行い、選手の疲労を取り除いていいコンディションで練習できるように尽力している。年齢的に監督・コーチと選手の中間に位置しているので、選手の不満の聞き役でもあり、チームになくてはならない存在となっている。

 佐々木さんは2001年秋から男子チームについて回っている。「もう2年になりますね。自分のやってきた結果が出たようで、本当にうれしいです」と、昨秋の世界選手権(ニューヨーク)で男子が8年ぶりにメダルを取るなど復調ムードができたことがうれしそう。女子チームにトレーナーがついたのは、そのあとのワールドカップ(東京)からで、ニューヨークでは女子チームのケアも担当しており、14選手ものマッサージを1人でやるという離れ業もやってのけたが、女子の金5個獲得でその苦労も吹っ飛び、自分のことのようにうれしかったという。

 「みんな積極的にマッサージを受けに来ますよ。一流選手ともなれば、体を大事にしていますよ」とは全日本チームに帯同して感じること。その気持ちに応えなければならないという思いは強い。「やむをえないケガは仕方ない。でも、疲労が残っていたがためのケガはなくしたい」と、アテネ五輪まで選手を支えることに情熱を燃やす。

 10月の女子ワールドカップ前から女子チームを担当している川崎さんは、これまでに野球など多くの競技のトレーナーを務め、プロへ進んだ柔道の吉田秀彦選手(バルセロナ五輪金メダリスト)のサブトレーナーもしていた。女子チームとしては、99年ユニバーシアードの柔道チームに帯同した経験があり、今回が初めてではない。

 レスリングに接してみて、選手と監督がフレンドリーという感想を持った。「時に冗談を言い合うなど、友達のように接する時がある。コミュニケーションをしっかりとれて、いいことだと思います」と言う。

 ユニバーシアードの女子柔道では、メダル6個を取り、チームとしては目標の全階級メダル獲得がならずに無念だったようだが、自分としては「やってきたことが出た」として、とてもうれしかったという。「今度(アテネ五輪)は金4個の可能性がありますよね。取ってほしい、という気持ちをもってケアしていきます」と、正月返上の合宿をおくっている。(取材・文=樋口郁夫)



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