【特集】2005年の日本レスリング界を振り返る





 2005年は、前年以上に女子の活躍が目立った年だった。世界選手権では「金4・銀1・銅1」のメダル6個を獲得。これは2003年世界選手権の「金5」には、金メダルの数で及ばなかったものの、メダル総数で上回った。

 ワールドカップでも圧倒的な強さで団体優勝を飾り、個人でも6選手が金メダルを獲得。アジア選手権は3階級を制し、地元の中国を振り切って団体優勝を遂げた。24年ぶりにレスリングが実施されたユニバーシアードでも4階級で優勝。55kg級の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障
=写真右)と63kg級の伊調馨(中京女大)は以上の4大会を制覇し、世界最強の地位を確固とした。

 51kg級の坂本日登美(自衛隊)、59kg級の正田絢子(ジャパンビバレッジ)という元世界チャンピオンが世界一を奪還。手術の後遺症に悩まされていた世界V4の山本聖子(ジャパンビバレッジ)も、1年の最後に59kg級で全日本チャンピオンに返り咲いた。いずれも五輪実施階級ではなく、いずれ55kg級か63kg級で北京五輪を目指すと思われるが、力強い戦力の復活によってますます激戦が予想され、層が厚くなりそう。

 72kg級の浜口京子(ジャパンビバレッジ)は世界一奪還を逃したものの、ワールドカップで優勝するなど世界トップレベルの実力を維持。全日本選手権では史上2人目の10年連続10度目の優勝を評価されて天皇杯を受賞。06年へ向けていい形がつくれた。

 ジュニア世代も新しい芽が出てきた。アジア・ジュニア選手権は8階級中7階級で優勝。世界ジュニア選手権でも59kg級の山名慧(中京女大)、63kg級の西牧未央(愛知・至学館高)、67kg級の新海真美(中京女大)の3選手が優勝した。

 西牧は3月のクリッパン国際大会で03年世界3位のサリー・ロバーツ(米国)を破るなど世界トップ級の実力が証明されており、全日本選手権でも正田絢子にラスト数秒まで勝っていた善戦だった
(写真左)。世界一を射程距離にいれているといっても過言ではない。06年の活躍が期待される。

 アジア・カデット選手権では6選手が優勝した。ことし1年間、女子のすべての国際大会で取った金メダルは「41個」。世界で確固たる地位を築いたことは間違いないが、中国の成長は目を見張るものがあり、油断してはならないだろう。

 男子は世界選手権でメダルがなく、03年世界選手権、04年アテネ五輪と2年続けたメダル獲得を途切らせてしまった。しかし、フリースタイル55kg級の松永共広(ALSOK綜合警備保障)が冬の欧州2大会で金メダルを取り、8月のジオルコウスキ国際大会では五輪V2のナミク・アブデュラエフ(アゼルバイジャン)や今年の欧州王者を破って優勝するなど、世界トップ級の実力を見せつけた。

 グレコローマンでも、60kg級の笹本睦(ALSOK綜合警備保障)が8月のピトライスニスキ国際大会で宿敵アルメン・ナザリアン(ブルガリア)を撃破する殊勲を挙げた。84kg級の松本慎吾(一宮運輸)も世界選手権で8位に入り、メダルが見える実力を示した。3選手を中心とした踏ん張りで全体が底上げされれば、06年の世界選手権でのメダル獲得へつながるだろう。

 学生では、男子グレコローマン74kg級の鶴巻宰(国士大)がユニバーシアードで銅メダルを獲得。世界ジュニア選手権で、男子フリースタイル55kg級の稲葉泰弘(専大)が銀メダル、同60kg級の高塚慎吾(日大)と同66kg級の藤本浩平(拓大)がともに銅メダルを取ったほか、アジア・ジュニア選手権60kg級で大沢茂樹(山梨学院大)が優勝。世界への飛躍の基礎をつくった。大沢は全日本大学選手権では1年生王者に輝いた。

 学生の大会では、早大が1〜3年生主体のメンバーで東日本学生リーグ戦2位へ躍進。古豪復活へあと一歩と迫った。全日本学生王座決定戦と全日本大学選手権は日大が、全日本大学グレコローマン選手権では拓大がそれぞれ勝ち、かつて常勝を続けた日体大は無冠。個人でも、全日本学生選手権で3階級(フリー1、グレコ2)、全日本大学グレコ選手権で」3階級、全日本大学選手権で1階級勝つにとどまった。新主将の60kg級・湯元健一が全日本王者を奪取して意地を見せたが、06年はどうなるか。

 高校では、茨城・霞ヶ浦高が3年連続14度目の春夏制覇を達成。2000〜01年ころのスランプを脱し、最強軍団を復活させた。インターハイは18度目の優勝で、「20」の大台が目前。他校の奮起が期待される。

 中学レスリングは、全国中学生連盟の会長を長年務めた沼尻直氏が04年12月に死去され、沼尻久新会長による新体制で臨んだ年。地元の茨城県から3選手(男子1選手、女子2選手)が優勝して故人への供養を捧げた。



《前ページへ戻る》