【特集】「あこがれの選手の記録を破れて光栄です」…女子55kg級・吉田沙保里



 ▼決勝
吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)○[2−0(5-0,4-0)]●松川知華子(日大)

 《試合経過》

 [1P]さぐり合いのあと、吉田は片足をすくって背中からマットに落とし、開始40秒で3点を先制。松川の片足タックルに対して、タックル返しをきれいに決めて5−0とした。

 [2P]開始30秒、吉田が正面タックルを決めて1点を先行。松川のタックルをかわした吉田は、横から攻めてニアフォールでポイントを加え、5−0として勝負を決めた。

 女子55kg級の五輪&世界チャンピオンの吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)は、決勝で学生チャンピオンの松川知華子(日大)を下して4年連続4度目の優勝。01年のこの大会から続いている国内外での連勝記録を「86」に伸ばし、女子格闘技選手としては柔道の谷亮子の84連勝を上回った。

 大記録を打ち立てた吉田は「谷選手の試合を見てオリンピックに出たいと思った。あこがれの選手の記録を破れて光栄です」と笑顔を見せた。

 今年も吉田は強かった。社会人になって授業がなくなり、練習時間が増えたことがプラスになったという。豊富なトレーニングでバージョンアップした今年は、3月のジャパンクイーンズカップを皮切りに、5月のワールドカップ、アジア選手権、8月のユニバーシアード、9月の世界選手権とビッグタイトルを総ナメ。締めくくりとなる全日本選手権も初戦、準決勝をフォール勝ちし、決勝も大きくポイント差を広げ、危なげなく優勝まで上り詰めた。

 世界でも無敗街道をひた走る吉田に対し、アテネ五輪で激しい代表争いを演じた山本聖子(ジャパンビバレッジ)、51kg級の世界チャンピオン、坂本日登美(自衛隊体育学校)が挑戦を表明している。

 吉田包囲網≠ェ形成されつつあり、北京に向けた激しい代表争いが予想されるが、女王にとってライバルとの切磋琢磨は望むところなのだろう。「51kg級も59kg級も五輪階級じゃないから、55kg級に来るのは覚悟しています。ライバルが出てくればそれが目標になるから自分にとってもいいことだと思う」と、山本や坂本の挑戦を快く受けて立つ構えを見せた。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)




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