【特集】「48kg級に専念して北京五輪を目指す」…女子48kg級・伊調千春




 ▼決勝
伊調千春(中京女大)○[2−0(3-0=2:10,5-0=2:06)]●坂本真喜子

 《試合経過》

 [1P]1点をめぐっての試合は、0−0で2分間を終了。コイントスで伊調が勝ち、タックルで坂本を持ち上げてマットに落とした。

 [2P]第1ピリオドと同じく0−0で2分間を終了。コイントスで再び勝った伊調が、同じように大きく持ち上げて5点タックルを決め、このピリオドを制して試合に勝った。

 今年、51kg級で世界選手権出場を逃した伊調千春(中京女大)が、世界選手権48`級銅メダルの坂本真喜子(和光クラブ)に勝って女子48kg級の日本一に返り咲いた。これで全日本選手権は51kg級と合わせて3度目の優勝となった。

 「とにかく相手の体のどこかに手をあてがって、少しずつ前に出ながら、という作戦だった」との言葉通り、勝因は持ち前のディフェンス力だった。執拗に前に出てタックルのチャンスをうかがう坂本の猛攻をしのぎ、2度のクリンチ・チャンスを生かして優勝。マットを降りると、セコンドについてくれた妹の馨と抱き合って涙を流した。

 昨年のアテネ五輪銀メダリストが、今年は51kg級で闘い、6月のプレーオフで真喜子の姉でもある坂本日登美(自衛隊)に敗れ、世界選手権代表の座を奪われた。プレーオフ以降、「まったくレスリングをやる気が起きなかった」という伊調は丸2カ月間、福岡にある友人の寺で過ごすなどしてレスリングから遠ざかった。

 それでも大学の後輩が懸命に努力する姿に心を打たれ、妹に励まされ、教育実習でマットを離れている間にモチベーションを取り戻した。試合3日前に風邪を引いて点滴を打つというハプニングにも見舞われたが、本番では勝負強さを発揮した。

 今後は48kg級に専念して北京五輪を目指す。この1年で代表をはずれる悔しさを味わった伊調は「6月のプレーオフは勝てると思って負けた。どんな試合でも油断せず、全力でかつ慎重に戦わなければいけないことを学んだ」と気持ちを引き締めていた。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)




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