【特集】躍進・中国女子の秘密は?





 3大会連続世界一を守った日本女子だが、選手、コーチ、役員が口をそろえて警戒するのが中国。2階級を制し、国別対抗戦で日本に続いての2位。日中の直接対戦は、51、55、63、72kg級で日本が勝ち、48kg級で中国が勝った4勝1敗だったが、「いずれ伸びてくる」という予感を感じさせる筋のいいレスリングを見せていた。(写真右=48kg級でアテネ五輪金メダリストのイリナ・メルニクを破り、コーチと喜ぶ任雪層)

 中国柔道・レスリング協会の宋兆年副会長は、「中国では、女子レスリングは新しいスポーツではなく、1980年代に入ってからやっていた」と説明する。1991年の東京・世界選手権で初めて国際舞台に立ち、4階級に出場して「金3・銀1」を取った時の関係者の感想が「キャリア2、3年なんてことはありえない」だったが、その言葉が裏付けられた。日本が女子に取り組んだのが1985年。中国は、国際舞台に出場しなかっただけで、その歴史は日本より長いのかもしれない。

 2000年北京五輪が流れたことで、闘志がにぶったのか、90年代後半になってからそれまでの強さは影をひそめたが、現在は「08年北京五輪の最有望種目として、強化を続けます」(宋副会長)とのことで、その言葉を裏付ける金メダル2個獲得だった。

 現在の中国の競技人口は、あまりにも広大な国ということもあり、よく分からないそうだが、全中国大会には約30のクラブから出場してくるという。90年代の強さを示していた時は、現在コーチをやっている鐘秀娥(47kg級などで5度世界一)らが属していた北京体育大学が主流だった。宋副会長は「今は北京体育大学くらいのチームが5つか6つありますよ」と説明する。

 話を聞いた限り、基盤は日本よりもしっかりしている。それだけに脅威を感じざるをえない中国の躍進だ。

(取材・文=樋口郁夫)




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