【特集】「どうすることもできなかった」と脱帽…男子グレコ96kg級・加藤賢三






 欧州8位という強すぎることのないメトディエフ(ブルガリア)相手に初戦白星を狙った男子グレコローマン96kg級の加藤賢三(自衛隊)。第1ピリオドを0−0で終え、何とか突破口を見い出せるかと思われたが、グラウンドの防御になるとmメトディエフの豪快な俵返しがさく裂。100kg級近い加藤の体が軽々と宙に浮いた。

 このショックが尾を引いたのか、第2ピリオドは1分間のスタンド戦で0−3とリードされ、グラウンドの防御になると、再びその体が宙を舞った。

 「どうすることもできなかった。パワーでもっていかれた」。日本では経験することのないリフト技の洗礼にショックも大きく、報道陣の質問にも上の空。スタートの1分間は0−0で終わったものの、「組み手も、一度も自分の組み手がとれなかった。すべてにおいて力が違った」と、あらゆる面で完敗を認めるしかなかった。

 日本の重量級選手は、欧米選手に比べてパワーが劣ることは今に始まったことではないし、2、3年のウエートトレーニングで追いつけるものではない。しかし、それなら、どこの勝機を求めればいいのか。試合後の加藤に問うのはちょっと酷。120kg級の沢田直樹の2連敗とともに、日本の重量級には抜本的な対策が必要。このままでは、何年たっても世界に追いつくことは不可能だろう。

(取材・文=樋口郁夫)




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