【特集】この心地よい緊張感を何度でも…男子グレコ74kg級・岩崎裕樹





 世界選手権初出場の男子グレコローマン74kg級の岩崎裕樹(銀水荘)は、敗れた瞬間、状況がよく飲み込めない様子だった。

 「自分からかけたのかもしれないけど…。よくわからないです」

 1回戦のクリストフ・グーノ(フランス)戦。ピリオドスコア1−1で迎えた第3ピリオド、先にグランドの攻撃権を得た岩崎は、俵返しの組み手は崩されたものの、「これしかないと思い、思い切りいった」というローリングが2回連続で決まり(2度目は時間外と判断される)2−0へ。勝利へ向けて一歩前進した。

 しかし、相手のリフトを防御した際、脚をからめたという警告を取られ2−2へ。そのままのスコアで終了し、警告の数の差で一歩及ばなかった。「(8月の)ポーランド遠征でも見たことのある選手だった。初戦の相手としては強すぎず、いい相手だと思っていた」。思いがけない形での敗北に悔しさをにじませたが、「俵返しの状態での守りが甘かった。自分のいいポジションをしっかり取らないといけない」と反省も忘れない。

 初めての世界最高峰の舞台出場に対する必要以上の緊張感はなかった。応援席から送られた日体大の藤本英男部長や安達巧監督の声もよく聞こえるほどで、むしろ地元(静岡)国体の時の方が緊張したという。

 「藤本先生たいに申し訳ない気持ちでいっぱいです」と話す一方、「この心地よい緊張感を何度でも経験したい」と来年以降の出場をも決意し、アリーナをあとにした。

(取材・文=三好えみ子)




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