【特集】「旧ソ連圏選手の技術変化がすごい」…和田貴広コーチ





 世界選手権第1日、松永共広選手の3位決定戦のあと、和田貴広コーチに松永選手および第1日を総括してもらった。


 ――松永選手の闘い、いかがでしたか?

 
和田 第1ピリオド、3点を取ったあとをしっかりしのがなければならなかった。(5点を失ったタックルは)最低でも1点で押さえるとか。腰が軽く相手の力が強かった。

 ――今大会は全体的に脚をさわれることが多かったようだが…。

 
和田 多かったですね。脚を取られてからの粘りはあるけど、基本に帰って脚を取られないということに徹しなければならない。取られてからの粘りも彼の持ち味だけれど、今のルールではテークダウンされなくても場外に出されてしまうこともある。

 ――マンスロフとの試合
(写真右)は、5月(アジア選手権)の時と比べて差は縮まっていましたか?

 
和田 5月はまだ松永の攻撃があまりなかった。今回はある程度追い込めた。粘ってポイントをやらない場面もあった。負けはしたけど自信になったと思う。しかし、勝つためにはもう一歩の攻撃力が必要だ。

 ――和田コーチの現役時代は、世界選手権初出場の時は初戦敗退。その後、順位を上げて行った。松永選手は今後につながる内容でしたでしょうか。

 
和田 今の段階で世界のベスト8、いやベスト6には間違いなく入っている。来年ぐらいには(金メダルを)狙える力は見せてくれた。

 ――モンゴルが新たな標的に加わったわけだが、ほかには?

 
和田 2位になったブルガリアが、いやらしい試合をする。松永の一発では仕留めることは難しいんじゃないかな、かみ合わないんじゃないかな、という気がした。

 ――いずれにしても、世界一への敵を数人に絞っていい段階まできているのではないですか?

 
和田 それは間違いない。本人の世界一への意識も高いし、自分で研究していると思う。今回の試合内容を研究し対策をたてたい。

 ――世界のレスリングをどう見たか?

 
和田 旧ソ連の技術変化がすごい。それに日本は対応し切れていない。シンプルすぎるとういか。ただ、このルール下ではタックルに入って持ち上げなくても、勢いで押し出すこともできる。体力的な部分が大事になってくる。松永とやったモンゴル選手の5点タックルも、パワーと勢いでのタックルだった。

 ――具体的にどういったところが変化しているのか。

 
和田 正面タックル、片足タックル、ハイクラッチ・タックルのいずれも、持ち上げた段階で有利な体勢をつくってくる。身動きできない状態をつくってしまうので、受けた選手が反撃しようとしてもできない。逆にタックルに入られても、すばやく逃げて逆に自分のポイントへつなげる。日本の場合は、パチンと入ってパチンと倒すという感じ。変化に対応できるようにしたい。



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