【特集】11位に終わり、闘争心に火がつくか?…男子フリー66kg級・池松和彦





 「キューバ戦は差があったので仕方ない。ただ…、得意のタックルが出せなかったことが心残りです。世界を見ていると、レベル違いの選手が3、4人いる。自分はその下にいるんだなと思った」。男子フリースタイル66kg級で11位と低迷してしまったアテネ五輪5位の池松和彦(K-POWERS)は、闘いを終え、冷静に振り返った。

 1回戦の中国選手には2−0(3−0、1−0)、2回戦のスロバキアにも2−0(2−0、2−0)と順当に白星を重ねたが、3回戦のジアンドリー・ガルゾン(キューバ)戦では、長い手足を利用したレスリングに苦杯を喫した
(写真右)

 世界選手権は、今年最大の目標だった。大会直前合宿では、「もちろん狙ってはいます」とメダルをほのめかすコメントもしたが、その一方では、ぽつりとこんな言葉もこぼしている。「試合をしていても、一瞬ふと気が緩むことがあるんです。瞬間的に、あれ? という感じで。集中力が途切れるときがある」

 03年の世界選手権、アテネ五輪と世界を相手に戦ってきた。アテネから1年、再び闘志を呼び起こすのは簡単なことではない。この世界選手権を終えたあと、小休止することも考えていたという。

 が、ベスト16(最終的に11位)という結果に終わったいま、彼のなかには、確かにに別の感情が芽生え始めている。「休むことを考えていたけれど、今思えばそれってなんだかすごく小さいことだったなって。自分よりももっと歳が上でやっている選手もたくさんいるわけじゃないですか。そう思うと、自分が考えていたことはちっぽけだったなと思う」

 世界選手権は好きな大会なのだ、と彼は言う。「強い選手、みんな出てくるじゃないですか。そういうところがすごく好きで」。すぐさまでも、と続けた。

 「最後はこうやって上から見ているわけですからね。それは、淋しい」。観客席の一番後ろからマットを見つめながら、池松は言った。先のことはまだ考えてはいない。空虚が闘志に替わるまで、もう少しの時間が必要かもしれない。

(取材・文=三好えみ子)


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