【特集】世界選手権へかける(14)…男子グレコ120kg級・沢田直樹





 ここ10年の間に急激に力をつけてきた拓大。その勢いそのものに、今回の世界選手権には、前回(03年)に続いて3人のOBをグレコローマン送り込む。その一人、初出場となる男子120kg級の沢田直樹(維新百年記念公園管理事務所)は「初めてですが、様子を見るとかではなく、持っているものをすべて出すつもりで頑張ります」と言い切った。

 学生時代は重量級でタイトルを独占してきた選手。初の全日本チーム入りであっても臆する様子もなく全日本合宿をこなしている。初出場とはいえ、01年には世界ジュニア選手権、昨年は世界学生選手権、この夏はユニバーシアードにそれぞれ日本代表として出場している。「世界選手権だから変わることは何もありません。これまでの大会に挑むときと同じ気持ちです。ただ、今までよりはワンランク上の大会。選ばれた以上、恥ずかしい試合はできないという気持ちでいっぱいです」と言う。

 世界の120kg級は身長190cmくらいの選手がごろごろしている。沢田は175cmであり、おそらく小さな部類に入るだろう。しかし「それが不利だとは思いません。小さかったら小さいなりの攻撃はあります」とハンディとは感じていない。大きな選手からからすれば攻撃しづらいことは十分に考えられる。

 ふだんは山口県で仕事をやっており、ウェートトレーニングなどのほか、徳山大の練習に加わって練習している。男子フリースタイル84kg級の山本悟(岡山・烏山城高教)と同じで、地方在住選手のハンディはある。しかし「恵まれた環境の中で練習している選手ばかりではない。そのことを言い訳にしようとは思いません」ときっぱり。

 全日本合宿中に行なわれた公開練習で、多くの報道陣に囲まれた。こうした経験は今回が初めてでであろうが、これほど一本筋が通って闘志がちりばめられているコメントを口にできる“新人”も珍しい。このシャープな頭脳と度胸のよさが、初の大舞台でどう役立つか。

 最終目標はもちろん北京オリンピック。「今現在の世界の選手とのパワーの差は大きい。すぐに追いつくことは無理なので、積み重ねていきたい」。今回の世界選手権は北京五輪を現実に見すえた新たなスタート。内容もさることながら、ある程度の結果も望まれる。


 ◎男子グレコローマン120kg級展望

※出場選手が判明した場合は差し替えます。

 《ロシア》03年の世界王者でアテネ五輪金メダルの
ハサン・バロエフは、その後活動をしていない。ことしは休養か。

 
《カザフスタン》アテネ五輪2位のゲオルギ・ツルツミヤ(写真左)は、5月のアジア選手権で昨年に続いて優勝。7月のポッディブニ国際大会で勝っており、世界一を目指せる実力をキープしている。

 
《トルコ》アテネ五輪代表のイェクタ・イルマスが、4月の欧州選手権2位、8月のユニバーシアード2位と力をキープ。

 
《キューバ》アテネ五輪5位のミヤイン・ロペス・ヌネスが、2月のワールドカップとグランマ国際大会、4月のパンアメリカン選手権、6月のドイツ・グランプリ、8月のユニバーシアードにそれぞれ優勝と元気いっぱい。

 
《米国》シドニー五輪王者のルーロン・ガードナーの引退した米国からは、02年世界王者のドレミエル・ベイヤーズが出てくる。ことしは1月のデーブ・シュルツ国際大会と好調。

 
《イラン》アテネ五輪4位のサジド・バルジが、2月のワールドカップこそ6位だったものの、5月のアジア選手権で3位と精力的に活動。

 
《その他(欧州)》欧州選手権優勝はセルゲイ・アーチュキン(ベラルーシ)。ここ2年は主だった活躍はなかったが、02年世界軍隊2位の選手。ベテランのミリアニ・ギオルガーゼ(グルジア)が欧州選手権で3位へ。


 ◎沢田直樹の最近の主な国際大会成績

 【2004年デーブ・シュルツ国際大会】=
6位(9選手出場)

予選1回戦 ●[フォール、5:15] Dremiel Byers(米国)
予選2回戦  BYE
予選3回戦 ○[フォール、4:12] Michael Smith(米国)
敗復1回戦  BYE
敗復2回戦 ●[0−4] Khoren Papayon(アルメニア)
敗復3回戦 ●[0−5] Ari Tabu(カナダ)

 【2004年アジア選手権】=
6位(7選手出場)

予選1回戦 ●[Tフォール] Sajad, B.(イラン)
予選2回戦 ●[Tフォール] Tsurtsumia(カザフスタン)
予選3回戦 ●[1−3] Park Woo(韓国)

 【2004年世界学生選手権】=
6位(10選手出場)

予選1回戦 ●[0−3] Andrei Chkhauskoi(ベラルーシ)
予選2回戦 ○[3−2=:26] Jan Stark(ドイツ)
予選3回戦 ○[5−1] Vladimir Maric(セルビアモンテネグロ)
敗復1回戦  BYE
敗復2回戦 ●[0−2=9:00] Jakub Pietrzak(ポーランド)
敗復3回戦 ●[3−4] Yucel Unsal(トルコ)

 【2005年ユニバーシアード】(14選手出場)

1回戦 ●[0−2(0-2,0-3)] Alexander Ekimov(ロシア)




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