【特集】世界選手権へかける(8)…男子フリー120kg級・田中章仁





 大学1年生で臨んだ2001年12月の全日本選手権(当時130kg級)で、その年の世界選手権代表をフォールに下して初出場初優勝を成し遂げた男子フリースタイル120kg級の田中章仁(FEG)。翌02年には、世界学生選手権、世界選手権、アジア大会と出場し、早くも大舞台を踏んだ。

 アテネ五輪を“あと1秒”の壁が破れずに逃したものの(五輪第2次予選第2ステージ)、04年は学生の4大タイトルなど国内の7大大会を制覇。05年に入っても、2月のデーブ・シュルツ国際大会で2位、ヤシャドク国際大会で3位といい滑り出しを見せ、非凡な才能を見せた。ちょうどK−1への就職が決まり、マスコミから注目されもした。

 しかし、その後は5月のアジア選手権も8月のユニバーシアードも勝てなかった。「体力不足に尽きますね。体重差もあって、力も追いつかなかった」。あらためて知った世界の壁。残り数週間となったいま、世界選手権までにパワーがつくわけではないから、「自分の持ち味であるスピードでタックルに入ることに磨きをかけたい」と、強化のポイントを話す。

 もっとも、世界の壁を感じたのは最近のことではない。「メダルを取れたのは出来すぎでした」と話しており、冬の大会でメダルを取ったとはいえ、甘く考えていたわけではない。当時から「パワーが足りない」と感じており、その強化に力を注いできていた。

 その成果で、体には筋肉がついているのが遠目にもはっきり分かるほど。「続けていけば、必ず結果が出てくると思います」。今回の世界選手権には間に合わなくとも、2年後、3年後を見すえた体つくりにぬかりはない。

 K−1所属になったとはいえ、そこはアマチュア選手。決して大言壮語はしない。目標を問われると、「今の段階で優勝は厳しいと思います」と現実をしっかり見つめ、「1勝でも多く挙げること」と答えた。

 報道陣に囲まれる度に聞かれる「K−1か総合への挑戦は?」という質問も、はっきりとは言わないものの迷惑そう。今、見つめているのは北京オリンピックへの出場。そのステップをつくるべく、最善を尽くす世界選手権だ。


 ◎男子フリー120kg級展望

※出場選手が判明した場合は差し替えます。

 
《ウズベキスタン》03年の世界王者でありアテネ五輪金メダリストのアーチュー・タイマゾフ(写真左)は、北京五輪を目指すことを明言している。3月の地元開催のワールドカップには出てこなかったが、6月のウマハノフ国際大会に出場して優勝。世界選手権出場の可能性が高くなった。

 
《ロシア》97kg級時代に世界王者に輝き、アテネ五輪は6位だったクラマゴメド・クラマゴメドフは、1月のヤリギン国際大会、4月の欧州選手権、5月のアリ・アリエフ国際大会でそれぞれ優勝。絶好調だ。

 
《トルコ》昨年の欧州チャンピオンでありアテネ五輪3位のアイディン・ポラチは、6月の地中海大会優勝で活動を開始。

 
《ウクライナ》96kg級で闘っていたバディム・タソエフが階級アップし、2月のキエフ国際大会優勝、4月の欧州選手権2位、8月のジオウルコウスキ国際大会優勝と力をつけている。

 
《イラン》アテネ五輪2位のアリレザ・レザエイは、5月のアジア選手権では2位に終わっている。巻き返しなるか?

 
《カザフスタン》アテネ五輪4位のマジッド・ムタリモフ(写真右)は、5月のアジア選手権、7月のベログラゾフ国際大会でそれぞれ優勝と力をキープ。

 
《キューバ》03年に行なわれた無差別級世界最強トーナメントで優勝しアテネ五輪5位のアレクシス・ロドリゲスは、3月のワールドカップで優勝。力をキープしている。


 ◎田中章仁の最近の主な国際大会成績

 【2003年デーブ・シュルツ国際大会】=
5位(8選手出場)

予選1回戦 ●[0−3] Brian Keck(米国)
予選2回戦 ●[0−6] Angelo Borzio(米国)
予選3回戦 ○[フォール、0:45] Eric Kirscner(カナダ)

 【2004年アテネ五輪第2次予選第1ステージ】=
9位(22選手出場)

予選1回戦  BYE
予選2回戦 ●[Tフォール、4:43=0-10]Kuramagomed Kuramagomedov(ロシア)
予選3回戦 ○[7−4] Wayne Weathers (カナダ)

 【2004年アテネ五輪第2次予選第2ステージ】=
14位(18選手出場)

予選1回戦 ○[12−3] Jose Cuba(スペイン)
予選2回戦  BYE
予選3回戦 ●[9-10=8:50] Boyidar Boyadiev(ブルガリア)

 【2004年世界学生選手権】=
7位(8選手出場)

予選1回戦 ●[2−4] Petro Raychev(ウクライナ)
予選2回戦 ●[4−5=7:07] Jamie Rakevich(米国)
予選3回戦 ●[3−4] Markus Hamann(ドイツ)

 【2005年デーブ・シュルツ国際大会】=
2位

リーグ1回戦 ●[0−2(TF0-6,0-3)] Tolly Thompson(米国)
リーグ2回戦 ○[2−1(TF0-6,1-0,2-1)] Josh Pearce(米国)
リーグ3回戦 ○[フォール、0:48] Ari Taub(カナダ)

 【2005年ヤシャドク国際大会】=
3位(11選手出場)

1 回 戦  ○[2−0(3-3,3-3)] Mehdi Baghbanian(イラン)
準 決 勝 ●[0−2(0-2,0-1)] Saban Yilmaz(トルコ)
3位決定戦 ○[フォール、1:25] Sefa Ungor(トルコ)

 【2005年ダン・コロフ国際大会】=
5位(12選手出場)

1 回 戦   BYE
2 回 戦  ○[2−1(3-1,0-1,6-1)] Fatih Cakirogu(トルコ)
準 決 勝 ●[フォール、2P?] Biser Deianov(ブルガリア)
3位決定戦 ●[0−2(TF0-6=1:47,TF0-6=1:29)] David Musulbes(ロシア)

 【2005年アジア選手権】=
5位(12選手出場)

1回戦 ●[0−2(0-1,0-4)] Ali Reza Rezai(イラン)
3決戦 ●[0−2(0-2,0-2)] Lainh Lei(中国)

 【2005年ユニバーシアード】=
8位(16選手出場)

1回戦 ●[1−2(3-0,0-1,0-1)] Ivan Ishchenko(ウクライナ)




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