【特集】ビル・メイのポーランド女子国際大会レポート




 世界選手権(9月28〜30日、ハンガリー)へ向けて、ヨーロッパ女子選手の最後の調整大会ともいえるワルシャワ杯女子レスリング国際大会が8月13日、ポーランドのワルシャワで行なわれ、今年の欧州選手権優勝者4選手のを筆頭に、23人の世界・欧州のメダリスト経験者ら20か国から86選手が参加しました。

 コーチや審判の話では、ヨーロッパ選手権に近いレベルの大会とのことですが、カナダ・チームも参加しましたので欧州選手権よりレベルが高いのではないかと思いました。「世界選手権に限りなく近い」という意見を言うコーチもいて、「The only teams missing are Japan and the United States」(参加していない世界の強豪は日本と米国だけ」と高く評価しました。

 それは、ちょっと言い過ぎかも知れませんが、3年前に日本が参加した時(当時は3月に開催)よりも高いレベルの闘いが行なわれたことは間違いありません。この大会とトルコで行なわれたユニバーシアドは、世界選手権へ向けての最高の実戦練習になったと思います。

 各階級ごとの闘いを振り返ってみたいと思います。(取材・文=ビル・メイ、プラハ・チェコ在住)


 【48kg級】=10選手出場

 ▼3位決定戦
Iwona Sadowska(ポーランド)○[フォール1P1:56(F5-0)]●Andrea Vadasz Ember(ハンガリー)
Anne Catherine Deluntch(フランス)○[フォール2P0:46(5-1、F4-0)]●Alanah King(カナダ)

 ▼決勝
Lilia Kaskarakova(ロシア)○[フォール2P1:26(1-0、F3-0)]●Fani Psatha(ドイツ)

 欧州チャンピオンのLarissa Oorzhak(ロシア)は出ておらず、同じロシアのKaskarakova(ロシア)が簡単に4勝を上げて、楽に優勝しました。欧州選手権3位のPsatha(ドイツ)が欧州2位のSadowska(ポーランド)を準決勝で勝って、順位を入れ替えました。

 しかし、48kg級の選手の最大の注目は、アテネ五輪優勝のIrina Melnik(ウクライナ=ユニバーシアード51kg級優勝、
写真右)がこの階級に出るか、欧州選手権で優勝した51kg級に出るかだと思います。

 【51kg級】=11選手出場

 ▼3位決定戦
Vanessa Boubryemm(フランス)○[フォール1P0:52(F4-0)]●Katarzyna Kalenik(ポーランド)
Juliette Willocq(フランス)○[フォール2P0:28(1-0、F3-0)]●Katsiaryna Kuryshta(ベラルーシ)

 ▼決勝
Erica Sharp(カナダ)○[2−0(3-0,1-0)]●Yuliya Vottova(ウクライナ)

 1999年の同級世界2位のSharp(カナダ=その時の優勝は山本聖子)は安定したレスリングを見せ、Vottova(ウクライナ)に対して危ないところはありませんでした。

 Vottovaは欧州3位のBoubyremm(フランス)を準決勝で倒しましたが、欧州王者のMelnik(ウクライナ=アテネ五輪48kg級優勝)は別として、2位のNatalia Smirnova(ロシア=この大会には不参加)以下の選手はレベルが急に落ちているのが現状だと思います。

 【55kg級】=10選手出場

 ▼3位決定戦
Gudrun Hoie(ノルウェー)○[2−0(1-0,1-0)]●Joanna Kolodziej(ポーランド)
Minerva Montero(エストニア)○[不戦勝]●Britannec Laverdurc(カナダ)

 ▼決勝
Natalia Golts(ロシア)○[2−0(2-0,3-0)]●Mariyana Bavdyk(ウクライナ)

 Golts(ロシア=写真右)は欧州選手権でこの階級2年ぶり2度目の優勝を達成しましたが、今年、体がちょっと大きく見えて、構えは少し高くなって、脚の運びが少し遅くなったのではないかと気がしました。新ルールに対しては、がぶりを多用し、リスクを少なくしてポイントを取っています。

 以前より攻めやすくなったとは思いますが、一方ではがぶりからの攻撃を気をつけないとならないと思います。リードを取ってからはしっかり守ることも特徴です。GoltsはMiss Warsaw Cupに選ばれました。

 ヨーロッパ3位のSylwia Bilenska(ポーランド)がカナダ2位のLaverdurcと準々決勝で対戦し、作戦的なミスが多く出て負けました。昨年の世界学生チャンピオンのBilenska(ポーランド)は強い時と弱い時の波が大きすぎると思います。

 【59kg級】=18選手出場

 ▼3位決定戦
Emily Richardson(カナダ)○[フォール2P1:42(1-2.F5-2)]●Olha Brazhiyk(ウクライナ)
Stephanie Stuber(ドイツ)○[2−1(1-0=2:05,0-1=2:10,1-0=2:12)]●Natalia Ivanova(ロシア)

 ▼決勝
Ida-Theres Karlsson(スウェーデン)○[フォール2P0:20(2-0,3-0)]●Marianna Sastin(ハンガリー)

 Karlsson(スウェーデン)は、欧州選手権では1−0のピリオド勝ちが多くて優勝しましたが、この大会では積極的なレスリングを見せました。欧州選手権でも初戦に戦ったイタリーアのベテラン、Diletta Giampicollo(欧州3位)に冷静に試合を進めて勝ち、決勝で欧州7位のSastin(ハンガリー)にがぶりからいわゆるパンケーキでフォールを決めました。

 欧州2位のAudrey Prieto(フランス)が予選でVictoria Zagainova (ロシア)に負け、ZagainovaはSastinに負けました。Karlsson以外は混戦模様の階級のようです。

 【63kg級】=17選手出場

 ▼3位決定戦
Zamula Olezja (LAT)○[2−0(1-0,@Last-1)]●Ludmila Golovchenko(ウクライナ)
Agoro Papavasiliov(ドイツ)○[2−1(0-1,1-0,1-0=2:15)]●Stephanie Gross(ドイツ)

 ▼決勝
Viola Yannick(カナダ)○[2−1(1-0,0-1=2:06,2-0)]●Monika Rogien(ポーランド)

 ベテランの多い階級で、2003年世界選手権3位のYannick(カナダ)が優勝しましたが、欧州チャンピオンのRogienとは接戦でした。両選手とも伊調馨選手やSara McMann(米国=アテネ五輪2位)には太刀打ちできないだろうと思います。

 この階級には、Nikola Hartmann(オーストリア、1975年生まれ・30歳)、Lene Aanes(ノルウェー)、Stephanie Gross(ドイツ、1974年生まれ)らベテランが多く参加していました。しかしHartmannはGolovchenko(ウクライナ)に左肩をけがさせられ、世界選手権には出られないかもしれません。

 【67kg級】=9選手出場

 ▼3位決定戦
Mariyana Kvyatokovska(ウクライナ)○[2−0(1-0,1-0)]●Masira Admiral(オランダ)
Alena Perepelkina(ロシア)○[フォール1P1:45(F3-0)]●Kristina Odzina(ラトビア)

 ▼決勝
Stavroula Zigouri(ドイツ)○[2−1(TF7-0=2:00,0-1=2:06,1-0)]●Megan Buydens(カナダ)

 大ベテランZigouri(ドイツ)が若手のBuydens(カナダ)の必死の片足タックルをラストの20秒間守り切り優勝しました。カナダのハットトリックの優勝(3階級での優勝)はなりませんでした。Buydensはカナダ3位の選手だそうです。カナダ1位のMartina Dugrenierは初戦でPerepelkina(ロシア)に負けています。(2位の選手はユニバーシアードへ参加)。

 カナダのVierlingコーチは、「この階級のカナダには強い選手が大勢いますから、将来が楽しみ」と言いました。しかしカナダ最強の選手でもある自分の妻、Christine Nordhagen(68kg級などで世界6度優勝)の進退については話をしてくれませんでした。

 ウクライナからは欧州チャンピオンのKaterina Burmistrovaではなく18歳のKvyatokovskaが参加していましたが、文句なしの3位に入賞しました。

 【72kg級】=11選手出場

 ▼3位決定戦
Jenny Fransson(スウェーデン)○[2−0(4-0,4-0)]●Marta Sliwinska(ポーランド)
Anita Schaetzel(ドイツ)○[2−0(3-1,3-2)]●Stanka Zlateva(ブルガリア)

 ▼決勝
Gouzel Manyurova(ロシア)○[2−0(1-0=2:30、TF6-0=1:52)]●Michailina Sveta(ロシア)

 アテネ・オリンピックの銀メダリストManyurova(ロシア=写真左)は相変らず強かったです。決勝はロシア同士の対戦となりましたが、ロシア3位のSvetaに第2ピリオド、両足タックルを取り、2−0で勝って優勝しました。Manyurovaは準決勝で、2度欧州チャンピオンになっているSchaetzel(ドイツ)にも勝っています。

 欧州選手権の時のロシア代表はSvetlana Martinenkoで、その時は2位でした。世界選手権はどちらが出てくるのでしょうか。



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