【特集】6年間苦しんだからこそ、世界一は逃したくない…女子59kg級・正田絢子




 「とにかくもう一度、あの時の思いを味わいたいんです!」。女子59kg級の世界選手権代表の座を得て25日からの全日本チームの合宿(新潟県十日町市・桜花レスリング道場)に参加している正田絢子(東洋大、7月1日からジャパンビバレッジ)は心底金メダルを切望している。

 1999年にスウェーデン・ボーデンで行なわれた世界選手権で、当時まだ高校生(京都・網野高)だった正田は、その時点で世界を4度制していたニコラ・ハートマン(オーストリア)らベテランの強豪選手たちをなぎ倒し、初出場で初優勝という快挙を成し遂げた。あれから6年。紆余曲折を経て、今度はハンガリー・ブダペストで世界と戦うチャンスを得た。

 23日に予定されていた世界選手権代表選考プレーオフでは、全日本チャンピオンの中西はつみ(中京女大大学院)の負傷欠場により、戦わずして権利を得た
(写真左)。「本当は試合をしたかったけど、代表には変わりありませんからね」と胸を張った。この6年間は、右肩の手術、そして63kg級で伊調馨というライバルの存在もあり、日本代表の座を逃していた。「ここまで長かったですよ。世界一になったあの時はまだ高校生だったし、昔過ぎて…」ともらす言葉も真実味がある。

 6年間も苦しんだからこそ、つかんだチャンスは逃したくない。全日本合宿では「自分のレスリングをもう一度見直したい。前に前に出るレスリング。下がったら負ける」とテーマを掲げ、普段対戦できない選手と積極的に練習をこなしている。

 本来の階級より1つ階級を下げている。計量の難しさもあったが、試合のたびに慣れ始めた。5月20〜21日のの女子ワールドカップ(フランス・クレルモンフェラン)では海外の強豪選手相手に全勝をマーク。海外にも“正田強し”の印象を与えた。それでも「6年前に比べると、世界のレベルも上がっている」とライバルたちを冷静に分析し、気を引き締める。

 7月からは浜口京子選手らと同じ、ジャパンビバレッジの一員。京都(これまでの練習地)と東京を往復し、それぞれの場で練習をすることになった。「通信制の学生だったので、毎日学校に通ったわけではないけど、会社が自分を応援してくれるのはとてもありがたいことだと思う。勝って恩返しをしたい」と、“期待”というパワーから強烈に後押しされていることを感じている。

 怖いものなしで無邪気に世界へ向かっていった高校時代。それから様々な経験を経た今、心身ともに成長した姿をハンガリーで見せたい。


《前ページへ戻る》