【特集】「世界選手権では五輪金メダリストとの再戦を」…グレコ55kg級・豊田雅俊



 グレコローマン55kg級は、昨年の全日本選手権を欠場したアテネ五輪代表の豊田雅俊(警視庁)が、全日本王者の平井進悟(ALSOK綜合警備保障)を本戦の決勝とプレーオフで下し、世界選手権のキップを手に入れた。

 新旧の全日本王者が世界選手権代表の座を巡って激しい出場権争いを演じた展開だった。本戦の決勝は、まず豊田が平井のグラウンドの攻撃を逃げ切って先制。続く場面では、平井をクラッチした豊田が、得意の投げを決めたかに見えたが、平井がうまく返してポイントは豊田が1点で、平井が2点。2−2の同点でタイムアップとなり、最後にポイントを取った平井が第1ピリオドを取った。

 この一連の動きの中で、豊田は左ふくらはぎを負傷。第2ピリオドは踏ん張りが利かず我慢のレスリングを強いられた。平井の攻撃にひたすら耐え、最後はグラウンド状態から逃げ切り、1−1に追いついて何とかこのピリオドを奪った。勝負の第3ラウンド。一進一退の展開は、先にグラウンドの攻撃権を得た平井がこれをを生かせず、3度目の警告を課せられて、1分30秒の段階で警告負け。最終ピリオドにまでもつれた熱戦は、意外な結末となった。

 プレーオフに入ると、ふくらはぎの応急処置をした豊田が復調。第1ピリオドで俵返し、第2ピリオドでも豪快な投げ技を見せ、1点しか入らなかったものの、この得点がきいて勝利をもぎ取った。

 世界選手権の開催地はハンガリー。アテネ五輪を1勝1敗で予選リーグ敗退した豊田は「せっかくなのでアテネ五輪で優勝した地元の選手とやりたいですね。私が予選リーグで負けた相手ですから、敵地でぜひもう一度やりたいです」と、五輪の1回戦で惜敗した金メダリスト、イストバン・マヨロシュを対戦相手に指名した。

(写真は決勝とプレーオフ、ともに青が豊田)

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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