【特集】自信になる銀メダル獲得。「自分向きのルールです」…グレコ66kg級・飯室雅規




予備戦 ○[2−0(TF5-0,3-0)] SUNIL RANR(インド)
1回戦  ○[警告3P1:30(1-2,5-0,1-0)] KIM KUM CHOL(北朝鮮)
準決勝 ○[警告2P2:00(1-@Caution,6-0=2:00)] TAVAKOLI MEHDI(イラン)
決  勝 ●[0−2(TF0-5=1:13,TF0-7=0:36)] JUNG TAE KYUN(韓国)


 アジアの大会や世界選手権ではメダルがなかったグレコローマン66kg級の飯室雅規が、3試合に勝って決勝へ進み、銀メダルを獲得した。これまでキューバとギリシャで行なわれた国際大会でメダル獲得の経験はあるが、今回のようなオフィシャルな大会でのメダル獲得は初めて。決勝は2ピリオドともテクニカルフォールで負けたが、銀メダル獲得という結果に飯室は「うれしいです。自信になります」と、笑みがこぼれた。

 「ヨーイドン」の俵返しが松本には不向きだったようだが、飯室には合っていたもよう。初戦のインド戦で5点となる豪快な俵返しを決めたのをはじめ、2回戦の北朝鮮戦、3回戦のイラン戦でも爆発。1回戦〜準決勝の3試合での総得点は22点(うち相手の警告による得点は4点)。

1ピリオド2分であっても、第3ピリオドになるとバテる選手が少なくないが、飯室は「それほどでもなかった」と言う。これまでの飯室のファイトスタイルとは一味もふた味もちがう攻撃能力を見せた。

 「俵返しは得意なんです」と飯室。昨年まではスタンド戦でまさることができずに、先にパッシブを取られることが多く、せっかくの必殺技もなかなか出せなかった。コイントスという他力に頼る場合が多くなるが、開始から1分という体力がまだ十分にある時なら、その攻撃力を十分に発揮できるようだ。

 仮にコイントスで負けても、相手の攻撃を30秒間耐え抜けば、自分に俵返しのチャンスがやってくる。「決勝では切ることができませんでしたが、準決勝まではしっかりと防御することができた。防御は苦手ではない」というから、対応した練習を十分に積めば、防御の30秒間があっても、勝機は十分に見えてくる。

相手も同じ条件だが、「練習する期間が1日もありませんでしたからね」と、ぶっつけ本番でこれだけの強さを発揮できたことは満足そう。

それでも「(韓国選手以外でも)勝ったり、負けたり、という状況だと思う」と言う。ここを一歩でも抜け出るためにも「グラウンドの攻撃力が必要」だと言う。「今までのルールだと、1点を取られると2分以内で取り返すことはきつい。でも、今度は1点、2点を取られても、持ち上げれば十分に勝てる。自分にとってはいいルールですね」。

急なルール改正に戸惑ったものの、終わってみると持ち味を発揮できるルールということが分かった。よりいっそう練習に身が入りそうで、飛躍が期待できる。

(取材・文=樋口郁夫)



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