【特集】エースの最低限度の義務は果たす…男子グレコローマン84kg級・松本慎吾【2006年12月12日】






 笹本睦の金メダル獲得を勢いを受けて2日目にマットに上がったグレコローマン・チームのエース、84kg級の松本慎吾(一宮運輸)は、初戦が決勝戦と言えるような組み合わせ。ここで1−2で敗れ、金メダル獲得の望みが消えたが、敗者復活戦を経て3位決定戦へ進出。1階級下のアテネ五輪王者を破って銅メダルを獲得し、最低限度の“義務”は果たした。

 「くすんだ色(のメダル)ですみません」と報道陣に第一声の松本。金メダルを取った前回大会の決勝の相手である金正變(キム・インサブ=韓国)との1回戦は、勝負の第3ピリオド、両差しで相手をバンザイに近い体勢に追い込み、いい状況をつくりながらも
(右写真)、ここからの詰めを誤って痛恨の1失点。「自分の力をすべて出すつもりだった。心残りです」とつぶやくように話した。

 しかし、五輪王者を破ってのメダル獲得は後に続くフリースタイル・チーム、そして来年以降のグレコローマン・チームへ勢いをつけることは間違いないだろう。「笹本と自分は同期で、いい仲間、いいライバル。前回はボクが金で笹本が銅。今回は、(金メダルの望みが消えたあと)、最低でも銅メダルと思った」と、初戦黒星のあとにも落ち込むことはなかったようだ。

 必殺の俵返しは1度もさく裂しなかった。今夏の背筋の負傷の影響とも思われるが、けがには言及せず、「松本といえば、俵返しと知れ渡っている。もっと研究して、きちんとかかるようにしたい」と言う。

 目標をあくまでも世界チャンピオンにおく松本にとって、世界選手権の2ヶ月後にあるアジア大会へ向けて、気持ちを再び盛り上げるのには短すぎる期間だった。前回の大会で金メダルを取っていることや、けがによって世界選手権を不本意な結果に終わっており、アジア大会へ向けてなかなかエンジンがかからなかったようだ。

 しかし、それを彰子夫人が支え、励ましてくれたという。「今、電話したら、喜んでいました」とうれしそう。昨年までにはないエネルギーの供給源を得た今年は、3月のポーランド・オープン優勝、負傷しながらも世界選手権9位、そして今回の銅メダルと、コンスタンにいい成績を残している。大学院を卒業してレスリングに専念できる来春からの活躍が楽しみだ。

 「目標はあくまでも世界チャンピオン。そのためにも、まず1月の全日本選手権で勝ちます」。同期の仲間である飯室雅規が同じく銅メダルを取った。二本柱が3本の矢になれば、お互いがいっそうの飛躍へつながるはず。2007年の松本の活躍に期待したい。


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