【特集】初勝利を挙げたものの、「悔しい!」…男子グレコローマン74kg級・菅太一【2006年9月26日】





第1ピリオドのグラウンド攻撃で俵返しを仕掛ける菅太一。

 初日で3選手が初戦敗退だった今大会の日本勢。そんな不振の突破口を開いた初勝利を、5年ぶりに日本代表に帰ってきた男子グレコローマン74kg級の菅太一(警視庁)がもたらした。しかし、本人は2回戦も含めて「全然ダメだった。悔しいです…。悔しいです」と繰り返し、終始無念さを隠し切れない。

 1回戦は、今年6月のゴールデン・グランプリ王者イルガー・アブデュロフ(アゼルバイジャン)が第1ピリオドの菅が攻撃の時に脚を痛め、途中棄権してくれるラッキーな勝利だった。菅が仕掛けたリフトを、うまい身のこなしで返されて1点を取られる不本意なスタートで、「スタミナのない選手だと思って、バテさせるつもりだった」と甘く見ていたのが原因。

 残り6秒でスタンドとなり、このピリオドは菅が落とすかに思えたが、ここで相手が脚を押さえてうずくまった。ドクターが呼ばれて診断するなどしたが、そのまま負傷棄権で菅の手が上がった。攻撃することもないままの勝利では、心底から喜べないのももっともだろう。

 2回戦では米国のベテラン、トーマス・ダンツラーと対戦し、試合開始34秒で菅がバランスを崩しバックを取られ0−1。グラウンドのディフェンスでは俵返しから反対側に返されてニアフォールを奪われ、0−3とされてしまった。

 第2ピリオドも、「相手はバテやすい選手。リフトに対して逆に(体をひねること)ばかり考えて、そのまま転がされてしまった」と、気持ちの油断からか、またもや相手に反対側へ返されてニアフォールを奪われた。そして、終了を告げるホイッスル。5年ぶりの国際大会は「攻撃できた」という感覚を持つことなく幕を閉じた。

1勝をマークしたものの、思うような攻撃ができず、不満の残る界大会となった。

 「第3ピリオドまで持ち込みたかったけど、作戦通りにはいかなかった。少し(緊張が)切れてしまって、(リフトの防御の)10秒が我慢できなかった。冷静さが足りなかった」と振り返る菅。5年ぶりの国際大会で高まる気持ちを抑えることができなかったのか、それとも相手のスタミナなどを甘く見た気持ちの油断が原因か、いずれにせよ上位進出はならず、不満の残る大会となった。

 今大会には、父で76年モントリオール五輪4位の芳松さん(日本協会事務局長代行)が支援役員として訪れ、観客席から応援していた。アテネ五輪がそうだったように、太一が北京五輪へ出場しなければ、北京を訪れることはないだろう。2年後、父に再び中国の地を踏ませることができるか。それは、今回の悔しさを忘れずに努力を続けられるかにかかっている。

(取材・文=川崎真衣、撮影=矢吹建夫)


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