【特集】復帰の前途は多難? エジプトの英雄、イブラヒム・カラム【2006年8月30日】





 【ポーランド・ワルシャワ発、ウィリアム・メイ記者】世界選手を1ヶ月後に控え、グレコローマンの大きなテスト大会でもある「ピトラシンスキ国際大会」(8月25〜26日)に、一昨年のアテネ五輪の96kg級を制し、エジプトの全競技の中で56年ぶりの金メダルを獲得したカラム・ガベール(日本ではイブラヒム・カラムの名でプロ格闘技イベント「Dynamite!!」に参戦
=右写真)が出場。08年北京五輪での連覇を目指し、いよいよ本格的なカムバックが予想された。

 しかし、4試合を快勝したあとの決勝で、アジア・チャンピオンのマーグラン・アセンベコフ(カザフスタン)の首投げを受け、首を負傷。一転して中国での世界選手権への出場が微妙になった。

 カラムは勝ち進んだ試合も、技術のタイミングがうまく会わず、新ルール下での闘いが「ちょっと不安」とのこと。アセンベコフに対して、第1ピリオドにグラウンドの防御からのスタートとなり、2回俵返しで返されて、このピリオドを落とした。

 第2ピリオドには、スタンドで積極的に攻め、相手に技術回避の警告を与えて1点をもらったものの、その直後、アセンベコフがすぐに首投げ。カラムはブリッジでフォールを逃れたものの、マットにそのまま寝込んでしまい、動かなくなった。

 救急隊がすぐマットに出て医師がカラムを診断。首にギプスをつけて担架で運ばれ、救急車で病院へ。エジプトの関係者によると、首の筋肉を傷めただけだそうで、中国の世界選手権には出るとのことだが、微妙な状況となったことは間違いない。

 この事故の前に行ったカラムへのインタビューは下記の通り。

(撮影=保高幸子)


 Q: 1回戦を見た限り、以前のような技の切れが見られなかったようだが、久しぶりのレスリングの試合はいかがでしたか?

 
カラム: 私はアテネ五輪のあと、昨年の地中海大会とアフリカ選手権、今年のアフリカ選手権の3大会しか出場していません。世界中の強豪選手が集まったこの大会は、私の本格的な復帰テスト大会でした。正直なところ、子供のような状態になり、何をすればいいか分かりませんでした。しかし、私は自分自身のこともレスリングのことも知っています。中国での世界選手権へ向けて、準備はきちんとする予定です。

 
Q: アテネ五輪のあと、K−1のイベントに出て異種格闘技戦をやっていますが。

 
カラム: ええ、私はK−1を好きです。しかし、北京五輪で優勝するためにレスリングに専念します。五輪のあと、K−1の闘いを再開しようと思っています。



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