【特集】基本を大切にする鈴木イズムで33年ぶりの栄光…秋田商高【2006年8月4日】


◎全国高校選抜大会成績

 2 回 戦  ○[6−1]足利工大付高(栃木)
 3 回 戦  ○[4−3]山形商(山形)
 準々決勝 ○[4−3]修善寺工(静岡)
 準 決 勝  ○[4−3]鳥取中央育英(鳥取)
 決   勝  ○[4−3]網野(京都)
◎インタハーイ

 2 回 戦  ○[4−3]鹿島実(佐賀)
 3 回 戦  ○[4−3]玉名工(熊本)
 準々決勝 ○[4−3]育英(兵庫)
 準 決 勝 ○[5−2]岐南工(岐阜)
 決   勝 ○[4−3]網野(京都)

 オリンピックの金メダリストやメダリストを多く生んできた秋田商が、33年ぶりのインターハイ優勝を春夏制覇という形で達成した。この間、2位3度、3位4度と表彰台を経験しながらも優勝を逃していた。同高OBでもある鈴木信行監督(右写真)は「感無量、という言葉しかありません」と振り返った。

 「ずば抜けた選手はいない。74kg級の桑原は県予選で手首を骨折し、2日前にやっとスパーリングができた状態」(鈴木監督)というメンバー。初戦(2回戦)からの3試合をいずれも4−3での勝利。準決勝は50kg級から4連勝してひと息ついたものの、決勝の網野戦も4−3の1勝差での勝利だった。3月の全国高校選抜大会も5試合中4試合が4−3という内容。どこかでひとつ歯車が狂っていれば、今回の快挙はなかった。

 「接戦、接戦という闘いを制してきた選手たちは、よくやりました」と胸をなでおろす鈴木監督は、一方で「接戦を勝つことで選手は自信をつけたのかもしれません。誰かが負けても、他がカバーするという秋商伝統の粘りのレスリングができました。本当のチャンピオンになったのかな、とも思います」と、満足感も十分に感じているようだ。

 横山秀和コーチがアテネ五輪に出場した2年前に1年生だった選手が、3年生になっている。世界の闘いを経験している横山コーチの技術は、選手の強化に役立ったことは言うまでもない。しかし鈴木監督は「秋商の伝統でもある基本を大事にするということも忘れませんでした」と強調する。春の優勝のあと、重点的にやってきたことは「基本の反復と基礎体力のアップ、あきらめない気持ちの徹底です」と胸を張って言った。

 鈴木監督は日体大時代、同学年に2年生で学生王者になった奥山恵二選手(その後バルセロナ五輪代表へ)の壁があってなかなか出番が回ってこなかったが、4年生の最後の大会の全日本大学選手権に抜てきされ、優勝という結果を出した。不遇に腐ることもなく、着実に力をつけて“その時”を待った選手だった。そんな経験が、指導者になった今に生かされていることは間違いないだろう。

 来年は秋田国体を控えており、県を挙げての強化体制ができている。そのプラス面は県内の他の高校も同じだろうが、この勢いを続けて来年の栄光へも続けたいところ。「接戦を勝てる要因は?」の問いに、「さあ?」と首をひねったあと、「練習しかないと思います」と笑った鈴木監督。新チームになってからの1年間、接戦が多かったとはいえ、終わってみれば団体戦で負け知らず。この経験と自信は、来年へ向けて大きな財産になることだろう。

(取材・文=樋口郁夫)


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