【特集】周囲のあたたかい励ましに巻き返しを決意…72kg級・浜口京子【2006年5月21日】






 大会の末尾を飾る決勝戦の72kg級で、浜口京子(ジャパンビバレッジ)がオヘネワ・アクフォ(カナダ)に不覚。世界選手権へ向けてまたひとつ、壁ができた。

 2002年のワールドカップでも不覚を喫した相手。04年のワールドカップで勝ってリベンジし、ことし1月の世界合宿の最中の練習試合でも勝ったものの、その時はかなりの接戦で力をつけていた選手。その意識があったのかどうかは分からないが、マット中央で構えるアクフォを攻め込めない。「動きが直線的で、フェイントを効かすことのできない闘い」(栄和人監督)。何度かのタックルでもテークダウンを奪うことができず、後手にまわってしまった。

 浜口は会見場で、まず「2日間の応援ありがとうございました」とひと言。しかし、試合に臨む前の気持ちを問われると、「たくさんの人が応援してくれて…」と言って絶句。かろうじて涙をこらえ、「多くの人の応援がとても心強かった。テレビの向こうでも、大勢の人が応援してくれていると思うと、頑張ろうと思いました」と気丈に答えた。

 第1ピリオドを取られたあと、第2ピリオドは接戦だった。「今までの私なら、もっと情けない試合になっていたと思う。内容ではステップアップした自分がいた」と、先制されても落ち込まず、冷静に試合ができたと振り返った。最後に「次に闘った時に勝てる感触はあった。試合後、チームメートが親身になって励ましてくれた。どんな時でも励ましてくれる人が周囲にいてくれ、とてもうれしいし、励みになる」と話し、世界選手権での巻き返しを誓った。

 栄監督は「力と体力は十分になる。もっと柔軟性のある闘いができるようにし、北京オリンピックで金メダルを取れるようにしたい」と今後に期待をかけ、父でもある浜口平吾団長は、いつものように「世界3連覇のあと、3位、4位と落ち込んで、そこからはい上がってきたじゃないか。ここでくたばるか、立ち上がるか。立ち上がって、また坂道を登るんだ」と、きっぱり宣言した。

 一方、殊勲を挙げたアクフォは「1月の練習試合で接戦をしたけれど、次に勝てる確証まではいかなかった。でも、次に戦ったらどんなふうに闘うか、いつも研究はしている」と振り返り、ひとつの壁を乗り越えたことが満足そう。「ハマグチは世界一の選手だと思います。これからも研究し、必死にトレーニングして、次に闘う時も勝てるように頑張りたい」と、勝ってかぶとの緒を締めた。

(取材・文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)


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