【優勝選手特集】男子グレコローマン120kg級・新庄寛和(自衛隊)【2007年12月23日】








 2004年以来3年ぶりの全日本選手権制覇を成し遂げた男子グレコローマン120kg級の新庄寛和(自衛隊)は、喜びというより、むしろ安堵の表情を浮かべていた。「これで初めて世界代表として認められた気がする」。

 この9月のアゼルバイジャンでの世界選手権に初出場を果たしたが、代表選考会を兼ねた6月の全日本選抜選手権では、優勝候補と目されていた2006年全日本王者の沢田直樹(山口県協会)が計量失敗により欠場し闘うことがなかった。ライバル不在のまま世界への切符を手に入れたことは、新庄にとって心のしこりであったという。

 「まわりには、沢田さんが計量に失敗したから自分が(世界選手権に)出られたと見られていたと思う。だからこそ、優勝できてよかった」

 全国高校選抜選手権などで優勝した増田拓也(千葉・佐倉南高)との初戦では、スタンドから果敢に仕掛けバックを奪った。「今までスタンド状態の時になかなか前に出ることができなかったので、スタンドでバテさせてグラウンドに持っていけるよう徹底的に練習してきた」。勝負どころのグラウンド攻撃はまさに磐石。

 最大の正念場となった準決勝の沢田戦でも、こん身の力で崩しにかかるディフェンディング・チャンピオンに対し、スタミナとパワーの真っ向勝負でしのぎきり、第1、第3ピリオドでラストポイントをもぎ取った。

 迎えた決勝戦の相手は、強烈なプッシュと豪快なローリングで攻め上がってきた中村淳志(拓大)。全日本初制覇を期して臨む中村と、開始早々から勢いあまって激しく頭がぶつかりあった激しい一戦。お互いの技を気迫で制し、勝負のゆくえはコイントスへ。第1、第2ピリオドとも、先攻権をゲットした新庄がラストポイントにより優勝を決めた
(右写真=中村を攻める新庄)

 来年にはオリンピック枠獲得に向けてのロードが始まる。険しい道であることは十分承知だ。「重量級は厳しいと言われているけど、精いっぱい練習して、必ず、絶対にオリンピック資格を取りにいきます」。優しい安堵の表情だったのが、厳しいそれに一変した。

(文=藤村幸代、撮影=矢吹建夫)



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