【優勝選手特集】女子59kg級・梶田瑞華(中京女大)【2007年12月22日】








 昨年の覇者・西牧未央(中京女大)が67kg級に上げ、2005・06年世界選手権優勝の正田絢子(網野ク)が72kg級に階級を上げたこともあり、激しい優勝争いが予想された女子59kg級。その中で、67kg級で今年世界5位に入賞し、2階級落としてエントリーしてきた井上佳子(中京女大)、今年4月のクイーンズカップで優勝を果たした山名慧(中京女大)が本命視されていた。

 だが、フタを開けてみれば同じ中京女大の中でも意外な伏兵が試合ごとに尻上がりに調子をあげ、優勝まで一気に駆け上がった。その名は、梶田瑞華。3歳からレスリングを始め、昨年の世界ジュニア選手権では5位。今年のクイーンズカップでも3位に食い込むなど59kg級期待のホープだが、今大会に限ってはダークホース中のダークホースだった
(右写真=決勝で井上を攻める梶田)

 同門3名がひしめくこの階級で「負けたら終わりという気持ちで頑張った」という。その覚悟は、強気と粘りのレスリングとして一回戦から爆発した。今年の全国高校女子選手権優勝者・渡利璃穏(愛知・至学館高)に対し、第1ピリオド終了15秒前にバックでポイントを奪取。その後もここぞのタイミングで得意の片足タックルを決め、1−0、2−0で初戦突破。

 快進撃のキーポイントとなったのは2回戦の元世界ジュニア・チャンピオン、山名慧との同門対決だ。「今回はタックルに入ったらきちんと取れるように心がけた。試合中にタックルが取れないと、攻め続けてバテたまま負けてしまうので、時間配分も心がけました」という梶田は、その言葉通り、積極的に仕掛ける山名をいなしながら、踏ん張りどころで確実にバックでポイントを稼ぎ、3−0、1−0で勝利。

 続く準決勝も、昨年全日本選手権3位の島田佳代子(日大)を片足タックルから粘り強く押し込むなど、落ち着いた試合運びで1−0、2−0で競り勝った。

 セコンドの吉田沙保里に「最後だから思いっきり行け」と檄を飛ばされ臨んだ決勝の相手は、同門で1年後輩の井上。「後輩に負けるわけにはいかない」との思いながらも、決して気負うことなく、今大会で勝利の呼び水となった片足タックルを冷静に決め、両ピリオドともバックで奪った1ポイントをがっちり守り切った。

 終わってみれば、4試合通じて相手に1ポイントも与えない完封劇だった。正田が階級を戻してくるようなことがあれば、この階級がいっそうの激戦区になることは分かっている。それでも「優勝したからには、もう負けられない。次はクイーンズカップ、それから世界でも…優勝目指して頑張りたいです」。19歳のニューヒロインは、冷静にして強気だ。

(文=藤村幸代、撮影=矢吹建夫)



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