【優勝選手特集】男子グレコローマン55kg級・長谷川恒平(福一漁業)【2007年12月22日】








 男子グレコローマン55kg級は“大番狂わせ”と言っていいだろう。昨年学生二冠王ながら、全日本選手権では「万年ベスト8」と自戒を込めて語っていた長谷川恒平(福一漁業)が、優勝候補大本命の豊田雅俊(警視庁)を決勝で下し、堂々初優勝を果たした(右写真=決勝で勝ち、雄たけびをあげる長谷川)

 今年3月に青山学院大学を卒業後、4月から地元焼津の企業のサポートを受けながら、「体育教師の免許取得とオリンピック出場、2つの夢をかなえるために」練習場所を日体大に移し、どん欲に“進化”の可能性を探ってきた。その成果は初戦から早くも発揮された。

 今年の全日本選抜選手権ベスト8の笹和幸(日体大)との1回戦ではローリングを切り返してのフォール勝ち。55kg級エントリー選手の中でも群を抜く切れのよさと集中力を見せつけた。続く2回戦では、豊田に次ぐ優勝候補でこれまで苦杯をなめてきた平井進悟(ALSOK綜合警備保障)と対戦。第1ピリオドを3−1で奪取すると、第2ピリオドも平井の猛攻をしのぎ切り、1−1のラストポイントで振り切った。平井への初勝利で完全に勢いに乗り、準決勝でも今年の学生二冠王の峯村亮(神奈川大)を2−0、1−1(ラストポイント)で撃破。ついに決勝へと駒を進めた。

 3年連続5度目の優勝を狙う豊田と国内では初対決となる長谷川だが、「2年前にポーランドの大会で初めて戦った時は、持ち上げられフォールされとこてんぱんにされました。相手は何連覇もしている選手。自分の全ての力を出そうと思った」。第1ピリオド早々、場外へ追い込まれながらも瞬間に体勢を入れ1ポイント先取したが、その後ローリングから場外へと押しやられ1−4。

 だが、集中力を切らすことなく第2ピリオドをラストポイント1−1で取り返した。迎えた第3ピリオド。勝負はグラウンドに持ち越され、運命のコイントスは豊田のクロスボディロックからスタートすることに。だが、長谷川に焦りや諦めはなかった。「今までローリングの決めが甘かったので、クラッチの仕方から修正した。だからコイントスでどちらが出ても、クラッチさえ組めれば行けると思った」。終了間際、逃げ切りを図る豊田に対し満を持してのローリングが見事に決まった。誰もが驚く長谷川恒平初優勝の瞬間だ。

 次の目標に向け「日本代表のチャンスは少ないので逃さないようにしたい。ここまで来たら、オリンピックで金メダルを取るしかない。一生懸命練習していきます」と誓った若き新王者。有言実行の第一歩は、来年3月のアジア選手権(韓国)から始まる。

(文=藤村幸代、撮影=矢吹建夫)



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