【特集】世界選手権帯同で再浮上のきっかけつかんだ佐藤吏(ALSOK綜合警備保障)【2007年12月18日】








 2005年の天皇杯全日本選手権フリースタイル66kg級チャンピオンの佐藤吏(ALSOK綜合警備保障)が王座奪回に燃えている。早大では、減量期間に入っているにもかかわらず、以前よりひと回りも大きい体で終始スパーリングしている佐藤の姿がある。「仕上がりは上々」と試合準備も万全を期しているようだ(右写真=2005年全日本選手権優勝した佐藤吏)

 2年前、早大の現役学生として全日本の頂点に立った。これは五輪4度連続代表の太田章以来25年ぶりの快挙だったため、マスコミなどで大きく取り上げられ、翌年の世界選手権出場も期待された、しかし、勝負をかけた全日本選抜選手権ではまさかの初戦敗退。プレーオフでも小島豪臣(周南システム産業)に敗れた。

 スピードのあるローシングルタックルを武器に、全日本学生選手権3連覇、全日本大学選手権4連覇とこれ以上ない成績を残したものの、全日本クラスの大会では、皮肉にも2005年の全日本選手権で優勝して以来、表彰台にも乗れない状況が続いている。

 力はあるのに勝ち切れない−。そんな状態が続いた今年9月、佐藤は若手育成計画の一環&代表選手のサポート役として世界選手権(アゼルバイジャン)代表チームに同行することになった。「世界の技術の高さには驚いたけど、技術よりも体力面の強化が重要だと思いました」。世界選手権の戦いを生で観戦したことは、佐藤にとって大いにプラスになった。

■トレーニングメニューを変え、違った佐藤が見られる!

 帰国後、今までのトレーニングメニューを一から再考し、キッズ時代に取り組んでいた基礎体力をつけるメニューを取り入れた。その結果が一回りも大きくなった体だ。10月の秋田国体や11月の全国社会人オープン選手権には出場しなかったため、その効果はベールに包まれたままだが、普段の練習を見守る早大の太田拓弥コーチは「状態はすごくいい」と佐藤の活躍を約束した。

 ことし4月からは綜合警備保障に入社し、晴れて“プロ選手”になった。学生時代は団体戦も含めると年間8大会以上をこなす強行スケジュールだったが、社会人1年目の今年は6月の全日本選抜選手権で2試合闘ったのみ。

 対して、今年の日本代表の鈴木崇之(警視庁)は世界選手権初出場ながら9位へ。ライバルといえる藤本浩平や米満達弘(いずれも拓大)は国内で国体王者や学生王者となり、順調に成績を残している。ライバルたちの成長ぶりを試合会場で直接目の当たりにすることが多いが、「焦りはありません。試合勘の鈍りも心配ないです」と不安を一蹴した
(左写真:卒業後も早大で練習を続ける佐藤=左端)

 だれにも負けないトレーニングを積んできた自負があり、タックルはもちろん、そのほかの技も以前より数段レベルアップした感触があるからだ。武器のローシングルタックルが必要以上に警戒されているが、「今回もタックルは出します」と強気。伝家の宝刀“ローシングル”を中心に闘うことを示唆し、「ライバルは誰とかありません。一戦一戦やるだけ」と淡々と語った。

 2年ぶりの全日本選手権優勝、そして北京五輪へ。進化した証を見せつけることができるか。



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