【特集】日体大に第3の“松本”現る! 重量級の昇り竜・松本篤史【2007年11月24日】








 「日体大の松本」――。そう言えば、言わずと知れた“日本レスリングの顔”、男子グレコローマン84s級の松本慎吾選手(一宮運輸=日体大OB)を思い浮かべるだろう。あるいは、“笹本の後継者”と言われる松本隆太郎選手(日体大4年)だ。そこにもう一人“日体大の第3の松本”が現れた。隆太郎選手の弟の松本篤史(2年)で、11月20〜21日に行われた東日本秋季新人戦で両スタイルを制覇し、期待の星に成長した(右写真=松本篤史とセコンドについた兄・隆太郎)

 群馬・館林高出身。高校時代は「合宿中にも勉強していた」と、進学校ならではの苦労もあったが、2005年アジア・カデット選手権(茨城・大洗)のフリースタイル69kg級で優勝するなど成績を残した。レスリングに踏み込んだのは、すべて2つ上の兄・隆太郎の影響。日体大で大学の頂点と全日本2位の成績を残した兄を「すごく尊敬している」と、兄の背中を追うようにして日体大に進学した。

 1年生の時はフリースタイル74s級を専門としながら、獲ったタイトルはグレコローマンの新人戦のみ。だが、今年から階級を84s級に上げ、そのとたんに松本の快進撃は始まった。

 4月のJOC杯ジュニアオリンピックの84s級で優勝。5月の東日本学生リーグ戦では主力として活躍。日体大のV2を決めたのは96s級に出場した松本だった。6月の東日本学生春季新人戦ではフリースタイル84s級で優勝。グレコローマン84s級は準優勝に終わったが、MVP級の戦いぶりだった。夏は世界ジュニア選手権(中国・北京)に出場し、日本人最高成績の5位に入賞した。

 その後、9月の全日本大学王座決定戦(団体戦)でも無敗。10月の秋田国体では74kg級で世界選手権代表を長く続けた小幡邦彦(ALSOK綜合警備保障)に敗れたが、今回の秋季新人戦では2日間に渡って8試合を勝ち抜いた。6分間、攻め続けるスタイルで、4月から喫した黒星はわずか4つ。松本は「全日本選抜選手権には出てないので…」と謙遜したが、立派な成績。この1年間でもっとも伸びた選手の一人だろう。

 専門の84s級には一学年上に学生王者の門間順輝がおり、当初、リーグ戦では2番手として下位校で出場する“つなぎ役”だと思われていた。だが、リーグ戦の終盤戦では84s級に門間、96s級に松本とフル稼動。リーグ戦、フリー王座と無敗の松本も三冠を支えた“陰のMVP”だ。

 安達巧監督は「まだまだ荒削りだから」と発展途上を強調するが、伸びしろいっぱいで、来年は今年以上に主力としての活躍が期待される。「来年は84s級でレギュラーを獲りたい」と“門間先輩”との84s級の正規メンバー争いも楽しみだ
(左写真:新人戦のグレコローマンで闘う松本=赤が松本)

 成長したのはレスリングの技術だけだけではない。精神的にも上を目指す気持ちが出てきた。JOC杯、春季新人戦などで出ていたガッツポーズは、今大会、見られなかった。「フリーでは1点を取られてしまったし、グレコは相手を返せなかったので…」。2階級制覇とはいえ、1、2年生間の限られた選手の中でのこと。「目指しているのはここではない」。すでに出場資格を得ている12月の天皇杯全日本選手権が当面の目標で、そこで鮮烈デビューを誓った。

(文・撮影=増渕由気子)



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