伊調馨(ALSOK綜合警備保障)が5大会連続優勝…世界選手権最終日【2007年9月23日】







 北京オリンピックの出場資格をかけた2007年世界選手権最終日は9月23日、アゼルバイジャンの首都バクーのヘイダル・アリエフ・スポーツアリーナで女子3階級が行われ、63kg級の伊調馨(ALSOK綜合警備保障)が5試合に勝ち、アテネ五輪を含めて6年連続6度目の世界一に輝いた。同時に日本協会の定めた五輪代表選考規定により、北京五輪の代表に内定した。

 しかし72kg級の浜口京子(ジャパンビバレッジ)は2回戦で昨年優勝のスタンカ・ズラテバ(ブルガリア)に敗れ、敗者復活戦へ回ったが2試合目のオルガ・ザニベコバ(カザフスタン)に敗れで8位入賞を逃し、五輪出場資格を取れなかった。67kg級の井上佳子(中京女大)は3回戦でぞれぞれ敗れ、敗者復活戦を勝って3位決定戦へ進んだが、敗れて5位に終わった。

 伊調は初戦(2回戦)でアテネ五輪銀メダルのサラ・マクマン(米国)を破り、2回戦でベネズエラ選手、3回戦でも宿敵の許海燕(シュ・ハイアン=中国)を2−1で撃破。準決勝で1997年62kg級世界チャンピオンのリセ・ゴリオット(フランス)を下して決勝進出。決勝でも落ちつた試合運びで、イェレナ・シャリギナ(カザフスタン)を2−0で下した。

 浜口は初戦で勝ったあと、2回戦で昨年の決勝の相手のズラテバと激突。第1ピリオドを取られたあと、第2ピリオドを微妙な判定の末に落とした。日本陣営の抗議に対してビデオを見た国際レスリング連盟のマリオ・サレトニグ審判委員長が」「100パーセント、ミスジャッジ」と話した納得のいかない判定で敗れた。ズラテバが決勝へ進み、敗者復活戦へ回ったが、2試合目のザニベコバ戦で自滅によってフォール負けしてしまった。

 井上は初戦(2回戦)で勝ったあと、3回戦で昨年優勝の景端雪(ジン・ルイシュ=中国)に敗れた。景端雪が決勝へ進み、敗者復活戦へ回って3位決定戦へ勝ち上がったが、カティ・ドゥニング(米国)に1−2で敗れた。

 この日で女子が終了。金メダル4個だったで、国別対抗得点で5大会連続14度目の優勝を遂げた。また、55kg級優勝の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)がモスト・テクニカル・ポイント賞を受賞した。

 各選手の成績は下記の通り。(撮影=矢吹建夫)


 ◎女子

 【63kg級】伊調馨(ALSOK綜合警備保障)       36選手出場

1回戦  BYE

2回戦 ○[2−0(2-1,1-0)] Sara MacMann(米国)

 《経過》伊調は第1ピリオドの開始30秒に回り込んで1点を先制。1分すぎにも突き放して倒れたところでバックへ回って1点。1分37秒に1点を取られたものの、ガッツレンチをこらえた。第2ピリオドは中盤に相手のタックルに対してカウンターでテークダウンを奪い、この1点を守り切った。

【2回戦第1P】宿敵の1人、マクマン相手に1点を先制した伊調(青)。 【2回戦第2P】相手のタックルをかわしてバックへ回り、押しつぶして1点。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

3回戦 ○[フォール、1P1:56(F7-0)] Yoselin Rojas Urbira(ベネズエラ)

 《経過》第1ピリオドの前半は慎重だったが、伊調が中盤以降ににタックルを決めていく。3度目のタックルのあと、がっちりと押さえ込み、7−0となったあとフォールした。

【3回戦第1P】中盤、横から攻めてテークダウンを奪った伊調(青)。 【3回戦第1P】最後は上四方固めでがっちりとフォール。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

4回戦 ○[2−1(2-0,0-1,1-0)] Xu Haiyan(中国)

 《経過》第1ピリオドは一進一退だったが、1分40秒に伊調がテークダウンを奪ってニアフォールへ。2−0とした。第2ピリオドは伊調が終始攻めていたがポイントにはつながらず、0−0で延長へ。コイントスで負けた伊調が、まだこらえていると思える段階にもかかわらず1点を取られた。

 決勝の第3ピリオドは、伊調が40秒すぎに腕を取ってのタックルを決め、この1点を守り切った。

【4回戦第1P】過去負けたことのある宿敵と4度目の対決(青が伊調)。 【4回戦第1P】伊調が正面からタックルを決めて2点を先制。 【4回戦第3P】42秒にテークダウンを奪い、貴重な1点を取った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

準決勝 ○[2−0(4-2,3-0)] Lise Legrand Golliot(フランス)

 《経過》第1ピリオド前半、伊調は片脚を取られてテークダウンを奪われ2失点。しかし、バックを取り返して1−2へ。1分17秒に2点のタックルを決め、終了間際にも1点を加えて4−2とした。第2ピリオドは40秒にタックルを決め、1分40秒、1分55秒にもタックルで1点ずつ加えた。

【準決勝第2P】正面からのタックルで伊調(赤)が1点を先制。 【準決勝第2P】後半にも片足タックルでポイントを加えた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

決 勝 ○[2−0(1-0,3-0)] Yelena Shalygina(カザフスタン)

 《経過》第1ピリオド、やや慎重になった伊調だが、1分45秒、回り込んでバックを奪う。またさきは決まらなかったが、1−0。第2ピリオドはタックルをつぶして1−0とした伊調が、ガッツレンチで2点を加え3−0とした。

【決勝第1P】終盤に1点を先制し、またさきで攻めた伊調(赤) 【決勝第2P】相手のタックルをしっかり切り、反撃につなげた。 【決勝第2P】ラスト十数秒、相手の必死の攻撃をしのぐ。

【決勝第2P】勝ち名乗りを受けた時、一瞬目頭がゆるんだ。 【決勝後】昨年と同じく栄和人監督と木名瀬重夫コーチが祝福。 【決勝後】この日も応援席には在留邦人の人たちの応援が。

【表彰式】6年連続で表彰台の一番高いところに立った。 【表彰式】プレゼンテーターの日本協会・福田富昭会長とともに。 【表彰式】今年も出たカオリン・スマイル。来年の北京でも見られるか。

 【67kg級】井上佳子(中京女大)     17選手出場

1回戦  BYE

2回戦 ○[フォール、2P0:57(0-1=2:08,F3-2)] Yoon So-young(韓国)

 《経過》第1ピリオド、お互いに決め手に欠け0−0。コイントスで負けた井上がクリンチから1点を取られた。第2ピリオドは、井上ががぶり返しを受けて2点を取られたものの、体を入れ変えて押さえ込み、フォールを決めた。

【1回戦第2P】第1ピリオドは落としたが、第2ピリオドでフォール勝ち。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

3回戦 ●[0−2(0-1,2-3)] Jing Ruixue(中国)

 《経過》第1ピリオドの1分40秒に井上がテークダウンを決められ、0−1で終了。第2ピリオドは1点を先制され、1点を返して1−1としたあと、グラウンドでもつれて3−2へ。ビデオチェックでもジャッジは覆らず、2−3で敗れた。

【3回戦第2P】場外際の攻防。井上(赤)は世界王者の攻撃を必死にこらえた。 【3回戦第2P】テークダウンを奪われた井上。わずかに及ばなかった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

敗者復活戦 ○[2−0(3-0,4-0)] Krisitine Corina(ラトビア)

 《経過》第1ピリオド中盤に井上ばバックを取り、ニアフォールを奪って3−0へ。第2ピリオドは相手のタックルをつぶして1ポイントを取り、アンクルホールド3回転。4−0として勝った。


【敗復戦第1P】片足タックルを粘ってポイントにつなげた井上(青)。 【敗復戦第2P】前半にタックルを決めた井上。このあとアンクルホールドへ。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

3位決定戦 ●[1−2(0-1,@L-1,0-1)] Katie Downing(米国)

 《経過》第1ピリオド中盤、果敢にタックルで攻めた井上だが、こらえられバックに回られて1失点。0−1で敗れた。第2ピリオドも1分10秒にタックルをつぶされて0−1とされたが、粘ってラスト6秒に場外へ押し出して1−1。ラストポイントで井上が勝った。

 決勝の第3ピリオドは0−0で試合が進み、終盤、脚をかけられてバランスを崩し、痛恨の1点を失った。

【三決戦第2P】ラスト10秒を切ってから同点に追いついた井上(赤)。 【三決戦第2P】相手の必死の攻撃を耐えてピリオドスコア1−1へ。 【三決戦第3P】1分30秒すぎ、痛恨の1失点でメダルを逃す。

 【72kg級】浜口京子(ジャパンビバレッジ)     31選手出場

1回戦 ○[2−0(2-1,1-0)] Laure Ali Annabel(カメルーン)

 《経過》第1ピリオド、やや慎重で攻撃できなかった浜口だが、1分26秒にタックルから場外へ押し出して1−0。直後にも場外へ出して2−0。終了間際に1点を取られたが、2−1で終了。第2ピリオドは29秒にテークダウンを奪って1−0とし、そのスコアを守った。

【1回戦第2P】29秒にバックを取って1−0とした浜口。 【1回戦第2P】1−0のまま、残り時間を守り切って初戦白星。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

2回戦 ●[0−2(0-3,1-3)] Stanka Zlateva(ブルガリア)

 《経過》第1ピリオドは一進一退で進み、1分26秒、相手の飛行機投げで3失点。0−3で終了。第2ピリオドの1分30秒、両者がもつれたあと、浜口が無双でズラテバを横転させたが、審判団の判断はズラテバの1+2点。納得のいかない日本陣営は抗議したが、ビデオチェックもなく試合が進み、最後に浜口が1点を返したものの、むなしいポイントとなった。

【2回戦第1P】昨年の決勝の顔合わせ。浜口(赤)の気合が入った。 【2回戦第2P】浜口はバックへ回られながら外無双で返した。 【2回戦第2P】1−3とし、レッグホールドで逆転を狙ったが…。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

敗者復活戦1 ○[2−0(5-0,TF6-0=1:34)] S. Bentorki(フランス)

 《経過》第1ピリオドの開始10秒に浜口がテークダウンを奪い、アンクルホールで回して3−0。相手のタックルをつぶして1点、引き落として1点を加え5−0とした。第2ピリオドは2度相手の攻撃をかわして2−0へ。タックルをつぶしてニアフォールを奪い、足首を持ってのローリングで6−0とした。


【敗復1第1P】開始早々に1点を取り、アンクルホールドで2点の浜口(青)。 【敗復1第2P】4−0のあと、最後の仕上げは足首を取ってのローリング。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

敗者復活戦2 ●[フォール、2P0:45(2-0,F0-4)] Olga Zhanibekova(カザフスタン)

 《経過》第1ピリオド開始早々、相手が脚を刈ってきたが、その脚を取ってテークダウンを奪う。相手のタックルをつぶして1点を加え2−0へ。第2ピリオド、相手は同じように脚を刈ってきた。その脚をつかんでテークダウンを狙った浜口だが、ここで体勢を崩して背中からマットへ。こらえたものの、フォールを取られた。

【敗復2第1P】相手の右脚を取ってテークダウンを取った浜口(青) 【敗復2第2P】上位進出を目指し、好調に攻めた浜口だが…。 【敗復2第2】体勢を崩して背中からマットへ。こらえたが最後はフォール負け。


《iモード=前ページへ戻る》

《前ページに戻る》