【特集】勝って当然の王者の貫録! 年間四冠王へまっしぐらの日体大【2007年9月22日】







 試合終了のブザーとともに、5番手の松本篤史が右手を高く突き上げた
(右写真)。その瞬間、日体大が早大を下し、5年ぶり24度目の全日本学生王座決定戦の王者に輝いた。

 全日本学生王座決定戦は、強豪・日体大がここ5年間、優勝から遠ざかっていた大会だ。決勝戦で早大を下して栄冠を手に入れた日体大レスラーたちの喜びもひとしおだろうと思われるが、選手たちに涙などは一切なく、当たり前に勝ったような余裕の笑顔があった。

 全日本学生選手権(インカレ)で7階級中6階級で入賞した日体大が絶対的有利といわれた今大会。「練習の量も質も日体大が一番。普通にやれば優勝できます」と抱負を述べた斎川哲克主将の言葉どおりの結果になった。優勝が決まった直後、斎川主将は「(普通に勝てるって)言ったでしょ」と誇らしげだった。

 一冠目の東日本学生リーグ戦以上に楽に優勝できたのには訳がある。若手の成長と重量級の存在感が増したことだ。春のリーグ戦では、重量級勝負になったことが何度もあったが、ルーキーの山名隆貴(奈良・添上高卒)と2年生の松本篤史の成長により、今大会は120kg級に3回、96kg級に1回と全4試合フル出場した斎川のところまで勝負が回ってくることはなかった。

 抽選で決まった初戦は、東日本リーグ戦で唯一黒星を付けられていた山梨学院大との対戦だったが、あわてずに4−3で勝利。2回戦からは優勝に向けてまっしぐらの内容で、安達監督も「本当に理想的な勝利」とご満悦だった。

■楽に勝てた要因は山名と松本の成長

 光ったのは74kg級の山名隆貴
(左写真)の成長だった。勝負どころの3試合に出場し2勝1敗。敗れた1敗は拓大の米満達弘が相手で、敗れはしたが米満を苦しめさせて拓大の勢いを断ち切った。早大との決勝戦では2勝1敗の状況で出番が回った。相手はインカレ74kg級3位の武富隆だ。

 第1ピリオドは1−0と接戦だったが、第2ピリオドは豪快な投げが決まり、そのままけさ固めへつなげてテクニカルフォール勝ち。門間、斎川の2枚看板を残して3勝目をマークしたことは、早大の戦意をそぐのに十分だっただろう。

 また84kg級にエントリーした松本篤史も、春と違って完全に主力メンバーに成長した。インカレは欠場したが、同時期に行われた世界ジュニア選手権(中国・北京)で5位という成績を残した。「まだまだ荒けずりなところがある」(安達監督)と伸びしろたっぷりな2年生。シニアに本格参戦する来年からが楽しみな選手の一人だ。

■MVPの富岡「4年生同士の切磋琢磨が激しい」

 毎年のように“強い”日体大だが、この大会で勝つのは意外にも5年ぶり。昨年は湯元健一(今年の世界選手権代表)、一昨年は小島豪臣(2006年世界選手権代表)が在学しており、毎年“核”となる選手はいたにもかかわらずだ。

 大会最優秀選手に選ばれた富岡直希に、ことしと去年までの違いを聞くと、「今年は4年生同士の競り合いが激しいです」という答。日体大には全体をまとめる主将(斎川哲克)のほか、フリースタイル主将(富岡直樹)とグレコローマン主将(松本隆太郎)と、3人の主将がいる。それぞれが将来の有望選手で、誰かが優秀な成績を収めると、お互い強烈に意識するそうだ。「負けたくない!」という高いレベルでの切磋琢磨が自然とチームの団結力となっている。

 当たりまえに二冠目を手に入れた日体大。10月の全日本大学グレコローマン選手権も、「インカレ3階級制覇5階級入賞」のチーム力からすれば優勝候補筆頭と言える。「最低目標は四冠」―。5年ぶりのフリー王座の優勝も、日体大にとっては単なる通過点にすぎない。

(文・撮影=久坂大樹)



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