伊調千春(ALSOK綜合警備保障)が2年連続優勝…世界選手権第5日【2007年9月21日】







 北京オリンピックの出場資格をかけた2007年世界選手権第5日は9月21日、アゼルバイジャンの首都バクーのヘイダル・アリエフ・スポーツアリーナで男子フリースタイル2階級と女子1階級が行われ、女子48kg級の伊調千春(ALSOK綜合警備保障)が決勝でアテネ五輪金メダリストのイリナ・メルレニ(旧姓メルニク)と同五輪決勝以来3年ぶりに対戦、2−1で破り、昨年に続いて3度目の世界一へ。日本協会の定めた五輪代表選考規約により、北京五輪の代表に事実上内定した
(右写真=アゼルバイジャンの安部忠宏・利子日本大使夫妻から祝福される伊調千春)

 伊調は1回戦から3回戦までを2−0で勝ち、4回戦でドーピング違反による出場停止処分があけウクライナから国籍を移した2005年世界ジュニア選手権44kg級優勝のマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)に2−1で逆転勝利。準決勝ではドーハ・アジア大会3位の黎笑媚(リ・シアオメイ=中国)を2−0で下して決勝進出を決めた。

 男子フリースタイル96kg級の小平清貴(警視庁)は2回戦(初戦)を勝ったあと、3回戦でアブラヒミ・サエイド(イラン)に黒星。サエイドが決勝へ進んだため、敗者復活戦へ回り、1試合は勝ったものの、2試合目でダニエル・コーミエ(米国)に敗れ、8位入賞を逃した。

 同120kg級の田中章仁(FEG)は初戦(2回戦)で敗れ、敗者復活戦へ進めなかった。男子フリースタイルはこの日で終了し、五輪出場資格は1階級も取れなかった。

 各選手の成績は下記の通り。

※これまで「イリナ・メルニク」と表記してきましたが、結婚後の姓でエントリーしているため、今後は「イリナ・メルレニ」と表記します。


 ◎男子フリースタイル

 【96kg級】小平清貴(警視庁)       13位=42選手出場

1回戦  BYE

2回戦 ○[2−0(1-0,3-0)] Ahmed Al-Darraji(イラク)

 《経過》小平は第1ピリオド、テークダウンを1度取って1−0で勝利。第2ピリオド16秒、落として横腹に頭をつけて倒して1点。ガッツレンチで1点を加えた。その後、相手にシングレットをつかむ反則があり警告で1点を獲得。3−0とした。

【2回戦第1P】日本でも手合わせしたイラク選手相手に積極的な小平(赤)。 【2回戦第2P】1点を取ったあと、ローリングで2点を加えた。

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3回戦 ●[0−2(0-1,TF0-6=1:39)] Saeid Abrahimi(イラン)

 《経過》第1ピリオド35秒、小平は横から組み付かれて1失点。そのままのスコアで終了。第2ピリオドは片足タックルで押し出されて1失点。中盤すぎにもバックを取られて0−2とされ、さらにテクダウンで1点を失い、横崩しで0−5。5秒押さえ込まれて0−6とされた。

【2回戦第2P】強豪イランのタックルが小平(赤)にからみつく。 【2回戦第2P】1点を取られ、さらにガッツレンチで2点を奪われた。

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敗者復活戦1 ○[2−0(1-0,2-0)] Mindaugas Rumbutis(リトアニア)

 《経過》第1ピリオド、腕と腕をからめて場外への出し合い合戦を小平が制して1点を先取。このポイントを守った。第2ピリオドは53秒に片足タックルで場外へ出して1−0。横から攻めてテークダウンを取って2−0とした。

【敗復1第1P】1点を先制し、グラウンドでの加点を狙う小平(青)。 【敗復1第2P】2−0とした後もポイントを狙う小平。

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敗者復活戦2 ●[0−2(0-3,TF0-6=0:28)] Daniel Cormier(米国)

 《経過》第1ピリオド、一進一退だったが、1分30秒、片足タックルから両足に持ち変えられて3失点。第2ピリオドは開始早々に押し出されて1失点。さらに片足を取られ、持ち上げられたと思ったら、豪快にそられてしまい、これが5点。テクニカルフォール負けとなってしまった。

【敗復2第1P】あと1勝で5位以内。五輪出場権をかけて臨んだ小平(赤)。 【敗復2第1P】1分30秒、片足から両足に持ち変えられてタックルを受ける。

 【120kg級】田中章仁(FEG)       35選手出場

1回戦  BYE

2回戦 ●[0−2(3-BL,0-3)] Efstathios Topalidis(ギリシャ)

 《経過》第1ピリオド15秒、田中は相手の突進を飛行機投げで返して3点を先取。しかし50秒、柔道の内またのような感じで脚をかけられて投げられ、3−3へ。ラストポイントで相手の勝ち。第2ピリオドは1分30秒、バックへ回われてローリング気味に倒され0−2。終了間際にも1点を取られて0−3とされた。

【2回戦第1P】相手の突進をかわして飛行機投げを決めた小平(青)。 【2回戦第2P】背後へ回られ一気にガッツレンチを決められた。

 ◎女子

 【48kg級】伊調千春(ALSOK綜合警備保障)       優勝=38選手出場

1回戦 ○[2−0(1-0=2:04,3-0)] Isabelle Sambou(セネガル)

 《経過》第1ピリオドはお互いに決め手がなく0−0。コイントスで負けた伊調だが、クリンチから相手がバランスを崩してくれ労せずに逆転のポイントをゲット。第2ピリオドはけんか四つで組み合ったあと腰投げのように投げて3点を取り、3−0で勝った。

【1回戦第1P】アフリカから来た初対決の相手に意外にてこずった伊調(赤)。 【1回戦第2P】腰投げ気味に投げ、一気にフォールを狙う。

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2回戦 ○[2−0(1-0,1-0)] Stephanie Murata(米国)

 《経過》第1ピリオドのラスト15秒、場外際に追い詰めた伊調が相手を押し出して貴重な1点を獲得。第2ピリオドは46秒に正面タックルで1点を取り、そのままのスコアで勝った。

【2回戦第2P】45秒にタックルで1点を取った伊調(青)。 【2回戦第2P】1点を取り、すぐにグラウンド技で加点を狙ったが…。

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3回戦 ○[2−0(1-0,TF6-0)] Z. Ishimova-Turtbayeva(カザフスタン)

 《経過》第1ピリオド、0−0で試合が進んだが、1分34秒、相手を場外際に追い込み、場外へ出して1−0。第2ピリオドは正面タックルで2−0へ。さらにタックルからすくい投げのように投げて3点を取り、5秒押さえて6−0としたところで終了のホイッスル。

【3回戦第2P】正面タックルを粘り強く仕掛けて1点を取った伊調(青)。 【3回戦第2P】タックルからすくい投げ気味に投げて3点を追加。

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4回戦 ○[2−1(0-1,@L-1,@L-1)] Mariya Stadnik(アゼルバイジャン)

 《経過》スタドニクはウクライナから国籍を変えた選手。第1ピリオド、伊調は51秒に正面タックルを決められて0−1とされ、このピリオドを落とした。第2ピリオドも25秒に胴タックル気味にテークダウンを取られ1失点。しかし52秒に相手のタックルをつぶして回り込み1−1へ。ラストポイントでこのピリオドを取った。

 決勝の第3ピリオドも伊調が先制された。31秒に正面タックルを受けて0−1。しかし1分21秒、回り込んで1点を返し、1−1のラストポイントで、伊調の手が上がった。

【4回戦第1P】開始51秒、伊調は正面タックルで1点を先制された。 【4回戦第2P】1−1のラストポイント勝ちを目指し、必死で闘う伊調。

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準決勝 ○[2−0(1-0=2:03,1-0)] Li Xiaomei(黎笑媚=中国)

 《経過》第1ピリオドは0−0。コイントスで勝った伊調が確実にテークダウンを取った。第2ピリオドは中盤、両者がもつれて場外へ。微妙な判定だったが、ビデオチェックの結果、伊調に1点が入り、この1点を守り切った。

【準決勝第1P】クリンチからの攻撃を確実に決めた伊調(青)。 【準決勝第2P】人間風車のような形で相手の突進をかわす伊調。このあと場外へ 【準決勝第2P】1−0のまま終盤を闘う伊調。

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決 勝 ○[2−1(1-0=2:14,0-1,2-0)] Irini Merleni(ウクライナ)

 《経過》第1ピリオドはお互いにポイントを取れずに0−0。コイントスで勝った伊調がバックへ回り1点を取った。第2ピリオドは30秒にメルレニが伊調の右脚へのタックルを仕掛け、もつれたもののバックを取って1−0。そのままのスコアで終了。

 決勝の第3ピリオドは0−0で試合が進んだが、1分20秒に伊調がメルレニの左脚へタックル。粘られたものの、場外へ押し倒して貴重な1点。この後、メルレニにシングレットをつかむ反則があり、警告で1点を獲得。2−0として終了のホイッスルを聞いた。

【決勝第1P】アテネ五輪決勝以来、約3年ぶりに相対した両者(青が伊調)。 【決勝第1P】クリンチから14秒、粘られたが伊調が1ポイント。 【決勝第2P】第1・2ピリオドの連取を目指す伊調だが…。

【決勝第3P】一進一退のあとの1分30秒、伊調がメルニクの左脚をとらえた。 【決勝第3P】優勝! 宿敵を倒し、2年連続世界一を勝ち取った。 【表彰式】福田富昭会長(前列右から2人目)とともに。

【表彰式】メダルを誇らしく掲げる伊調千春。後方には在留邦人の応援が。 【表彰式後】妹の馨から祝福される。22日の63kg級に弾みがついた。 【表彰式後】2年連続の金メダルをあらためて掲げる。


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