【特集】ロシア代表を破るなど健闘した初出場…男子グレコローマン74kg級・鶴巻宰(自衛隊)【2007年9月18日】







 世界選手権初出場の男子グレコローマン74kg級の鶴巻宰(自衛隊)は、最後の一手を決めさせない守りが光り、初戦でチュニジア選手、2回戦でロシア選手を撃破して3回戦進出を果たした。だが、続くハンガリーに敗れ、「出るからには優勝しなきゃ…。1回戦で負けようが、2回戦で負けようが、同じこと」と、不満の残る大会となった。

 外国選手に劣らぬ長い手足と体の柔らかさを持ち合わせる鶴巻は、05年のアジア選手権やユニバーシアード、06年の「ニコラ・ペトロフ国際大会」(ブルガリア)でいずれも3位を獲るなど国際試合での実績も十分だった。今回が初出場となる世界選手権の感触は「思ったよりも勝てた」。1回戦から、初出場とは思えぬ落ち着きで着実に駒を進め、自らの持ち味であるグラウンド勝負で試合を進めていった。

 1回戦のアイェト・イクラム・ジエド(チュニジア)戦は、ピリオドスコア1―1で迎えた第3ピリオド、グラウンドで先に攻撃権を得て、その後の防御で守り切れば勝ちという状況だった。いったんは体を持ち上げられ、ヒヤルとする場面を見せたが、柔らかい体を動かし決めの一手を打たせずに2回戦へ。

 2回戦は、今年8月の「ニコラ・ペトロフ国際大会」で敗れたエフゲニー・ポポフ(ロシア)が相手。ピリオドスコア1―1で迎えた大事な局面でもポポフに持ち上げられ、体が宙に浮いた。だが、ぎりぎりでこらえ、がっちりと胸を地面につけ直して勝利を死守
(左写真)。「中途半端に守ったら返される」と今夏から外人対策に着手。1階級上の松本慎吾(一宮運輸)に積極的に挑む練習が功を奏した。

 3回戦で鶴巻の前に立ちはだかったのはユニバーシアードで戦って勝っているペテル・バクシ(ハンガリー)。「持ち上げにくると分かっていたが、やられた」。ユニバーシアードで下し、相手の戦い方がわかっていただけに「よけい悔しい」と言う。
 
 全体としてみると、ぶら下がり一本背負いやガッツレンチなどを盛り込んで勝ち上がっていったと言える、しかし本人の評価は「駄目なことだらけだった」と手厳しい。今大会の収穫を「自分がどれだけ弱いかってことがわかったぐらい」と述べたが、強豪ひしめくロシアの代表選手を倒すなど、大会前より鶴巻がひと回り大きくなったことに間違いはない。

(文=藤田絢子、撮影=矢吹建夫)



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