【特集】対戦成績で全敗の宿敵破って優勝…男子フリー66kg級・米満達弘(拓大)【2007年8月25日】








 今年の全日本学生選手権の両スタイル66kg級決勝戦は、どちらとも同じ顔合わせになった。藤本浩平(拓大)VS.米満達弘(拓大)。同門対決だ。グレコローマンスタイルは藤本、フリースタイルでは米満が優勝した。どちらもインカレ初タイトルだったが、米満はそれと同じくらいにうれしいことがあった。「いままで一度も勝ったことがない藤本先輩に勝てました」

■同門対決になるごとに勝てなかった先輩・藤本浩平

 拓大中量級のダブルエースといわれる藤本と米満。互いに全日本のタイトルは無冠だが、2005年度に藤本が全日本選抜選手権と全日本選手権ともに準優勝。2006年度は米満がともに準優勝の成績を挙げている。両選手ともまぎれもなく全日本トップクラスの選手だ。そのため、どの大会でも同門対決になることが多かった。

 しかし、米満はなぜか藤本に勝てなかった。普段練習を共にするだけに、藤本のクセを見抜き対策を十分に練るのだが、「作戦は常に藤本先輩の方が上手でした」と、闘う度に返り討ちをくらった。昨年のインカレも準決勝戦で対決し敗北している。

 米満の全日本クラスの大会で2大会連続準優勝という好結果は、藤本との対決なしに得たものだ。それでも今年1月の全日本選手権で、1ヶ月半前に行われたドーハ・アジア大会で銀メダルを獲得した小島豪臣(周南システム産業)に健闘し、「今年の全日本選抜(6月)は行ける」と確信。「北京五輪、ロンドン五輪で2大会連続金メダル」を目標に掲げて臨んだ。しかし、まさかの初戦敗退。今年の米満の世界挑戦の夢をいち早く打ち砕いたのは、やはり藤本浩平だった。

 「藤本先輩に勝たずして世界はない」。今年の世界選手権代表入りが消えると、米満の目標は一つになった。「インカレで藤本先輩を倒すこと」。これが今大会最大の目標だった。

■グレコローマンでは敗れた分、フリースタイルでの対戦に闘志

 昨年、尊敬する磯川孝生がインカレで両スタイル制覇の偉業を成し遂げた影響で、専門外のグレコローマンにもエントリーした。グレコを専門とする選手たちを押しのけて、決勝に上がったのは、米満と藤本だった。しかし、「コイントスも全部自分に有利に出たのに、ボコボコにされました」と、スタイルが違うにもかかわらず、米満はここでも藤本の壁にぶち当たった。残るチャンスはフリースタイルでの決勝。打倒藤本先輩という執念でグレコローマンスタイルの決勝戦後、3時間で3.3kgの減量にも耐えた。

 フリースタイル66kg級は出場選手が全階級で最も多い激戦階級だ。米満にとって最大の敵こそ藤本だが、ほかにも好敵手はいくらでもいる。細越孝紀(専大)戦では苦戦の末に勝利した。「藤本先輩と決勝で戦うために途中で負けてはいけない」という思いがプラスに働き、調子も絶好調。「今日こそ勝てる」と自信を持って決勝に臨んだ。

 決勝戦の立ち上がり。藤本がタックルを仕掛けてきたが、難なくかわしてバックを奪い1ポイントを先取。いつも藤本につぶされていたタックルも、今日は要所で決まった。1ピリオドを奪取し、インターバルで「ヨッシャ!」と気合を入れて気持ちも奮い立たせた。米満が「いままでで一番いい試合だった」と振り返るように、2ピリオド目もタックルが決まって念願の藤本超えを果たした。

 米満はいままでの藤本戦をこう振り返った。「藤本先輩には(先輩の意地という)執念を感じます。西口茂樹コーチにも『勝つ気がない』と指摘されました」。実力は同等なのに一度も勝ったことがない理由は気持ちの面が大きかったのだろう。グレコでの大敗をバネに、「今日は行ける、今日こそ勝つ」と気持ちを入れ直した米満が、今回初めて藤本の気持ちを上回ったのだろう。禁断の同門対決を制し、精神的に強くなった米満。「殻を破れました」とインカレ初優勝に笑みを見せた。


《iモード=前ページへ戻る》

《前ページに戻る》